先ずは好きだと言ってくれ

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
121 / 251
続 1章【先ずはセックスさせてくれないかな(牛丸視点)】

12 *

しおりを挟む



 ──いい匂いが、する。

 子日君に顔を寄せると、そんな感想が浮かんできた。


「子日君……っ」


 子日君の腰からベルトを引き抜き、そのまま子日君から衣服を剥ぎ取っていく。それでも子日君は抵抗を示さず、むしろ僕が脱がしやすいようにと身をよじってくれてもいた。


「さすがに、ちょっと……緊張、します」
「ちゃんと優しくするから大丈夫だよ」
「それが嘘だったら針を千本、先輩の心臓に突き刺します」
「極刑がすぎないかな!」


 などという茶番も、子日君なりの照れ隠しだろう。……えっ、そうだよね?
 すぐに子日君を裸にし、僕は大好きな恋人の裸体をまじまじと観賞する。


「一周回って、芸術にすら思えてくる……っ。どうしよう、泣きそうだよ、子日君……っ」
「もしかしてこの飴、頭を悪くしたり……もしくは、気でも狂わせるなにかヤバい物質とか入っていたんじゃないでしょうね?」
「本当に、気が狂いそう。だから僕は【好意】が怖い……っ」
「興奮による涙目の状態で笑えないアホなこと言わないでください」


 今日も、子日君が可愛くて仕方がない。僕は意味もなく、心の中で神に感謝をした。なんて言うんだっけ、確か、子日君が言っていた……アーメンハレルヤピーナッツバター、だったかな。

 しばらく感動に打ち震えていると、子日君が指先で床をトントンと叩き始めた。


「先輩、もうそういうふざけたやり取りはいいですから」
「あっ、ご、ごめんっ!」
「だから、そういうのもいいから。……は、やく。……早く、先輩も、脱いでください……っ」


 そこで、ようやく気付く。子日君を脱がしたのはいいものの、僕はなにひとつ装いを変えていない、ということに。

 さすがの子日君でも、この状況は恥ずかしいらしい。珍しく、顔が赤くなっている。……そっか。子日君も、裸を見られるのは恥ずかしいんだね。

 ……そんな顔をされると、さすがに。


「──もう少し、君を辱めていたくなるよ」


 なんて、悪い僕が出てきてしまいそうだ。

 子日君がギョッとした様子で驚いているが、それも『可愛いなぁ』と思いながら、僕は自分の指を唾液で湿らせる。


「今日は、このまま。今までお預けを食らっていたんだから、ちょっとくらい僕の好きにさせてもらってもいいよね」
「おあ、ずけって……っ。ちがっ、俺は別にそういう意味で先輩に素っ気なくしていたわけじゃなくて──ひっ!」
「暴れないでね、子日君。傷とか、付けたくないから」
「あ、ぁ……ッ」


 ビクリと、子日君の体が震えた。それと同時に、心配になるほどの硬直を見せる。


「怖い?」
「怖くは、ないです……っ」
「じゃあ、なにか嫌な点とかは?」
「……経験回数が一回なので、緊張します……っ」


 素直だ。可愛い。
 子日君は自分の口を手の甲で押さえて、まるで耐えるようにしている。おそらく、僕に変な心配をかけまいとしているのだろう。

 そんな優しいところが、確かに僕は好きだ。……好きだ、けど。


「一回でも、僕は覚えているよ。文一郎の【弱いところ】を、ね?」
「は、あ……ん、っ!」


 こういうときくらい、全てを晒してほしいとも思う。これは単純に、僕の我が儘でしかないけれど。

 子日君の後孔に差し入れた指で、ある一点をかすめる。そうすると子日君の声が手の甲を押しのけて、堪らないと言いたげな様子で溢れた。


「本当に、可愛い。……好きだよ、僕の文一郎」


 そう言うと、そっと睨み返される。
 小さな反抗すらも可愛く見えてしまうのだから、やはり子日君は可愛くて仕方のない子なのだ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

愛などもう求めない

白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

幼馴染は俺がくっついてるから誰とも付き合えないらしい

中屋沙鳥
BL
井之原朱鷺は幼馴染の北村航平のことを好きだという伊東汐里から「いつも井之原がくっついてたら北村だって誰とも付き合えないじゃん。親友なら考えてあげなよ」と言われて考え込んでしまう。俺は航平の邪魔をしているのか?実は片思いをしているけど航平のためを考えた方が良いのかもしれない。それをきっかけに2人の関係が変化していく…/高校生が順調(?)に愛を深めます

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...