先ずは好きだと言ってくれ

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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8章【先ずは想いを聴かせてくれ】

14 *

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 下に身につけていたものを、全て剥がされて。
 誰も受け入れたことのない場所に、先輩の指が入っている。

 そんな状況に、不思議と体が震えた。


「あっ、先輩……っ、駄目、です……っ」
「どうして? こんなにココ、吸いついてくるのに」
「う、あ……っ!」


 先輩の指が、奥まで入ってくる。その感覚に、なぜだか背筋がゾワゾワと粟立つ。


「やっ、やだ……っ。そんなところっ、そんなに……ふ、かく……っ」


 押し広げるように、先輩の指が躊躇なく根元まで挿入される。そんな未知の体験に、恥ずかしさと不安で泣き出しそうだ。


「キツイね……っ? 子日君、本当に処女なんだ?」
「なにを、馬鹿なこと言って──うぁ、っ!」
「可愛い。……今、僕の指を締め付けたって分かった?」
「知らないっ、そんなの……俺は、知りません……っ」


 根元まで挿入した指を、先輩は曲げたり伸ばしたりしている。
 俺のナカを弄くる先輩は、なんだか楽しそうで。……そして、嬉しそうな様子にさえ見えるのだ。


「指、増やすよ?」
「まっ、待って、っ! ……ん、っ!」
「ふふっ。……ごめんね、待たない」


 まだ指が入っている感覚に慣れていないのに、先輩は二本目の指をゆっくりと挿入してきた。
 一本だけでも違和感があるのに、俺の理解を待たずに二本目も挿入されている現状。思わず、先輩が着ているワイシャツの袖を掴みそうになる。

 ──駄目だ。反射的に、俺は手を強く握る。

 さっきは思わずやってしまったが、俺から先輩に触るのは、避けなくてはいけない。先輩を、怖がらせてしまうかもしれないからだ。
 欠片ばかりの理性がそう囁いたのなら、俺は先輩に触れない。拳を握って、色々なものを一人で堪えるしかないのだ。


「あ、ぅ……っ」
「痛い?」
「いた、くは……な、あっ!」


 痛くはないが、慣れたわけじゃない。俺は思わず、体に力を入れてしまう。
 そんな俺に気付いたのか、先輩は俺の目元にキスをした。


「怖いことはしないから、ね?」
「先輩……っ」
「ほら、手。僕にしがみついていいから」
「……っ。……は、い……っ」


 俺の制止を無視してまで二本目の指を入れてきたくせに、今さらなにを。そう思う気持ちが、勿論ある。
 ……だが、先輩に見つめられるとそんな些事、どうでもいい気がするのだ。

 俺は恐る恐る、先輩が着ているシャツの裾を掴む。俺の指に気付いた先輩は、小さく微笑んだ。
 そしてそのまま、先輩はまるでほぐすように、二本の指をバラバラに動かし始める。


「ぁ……あっ、は……ん、っ」


 その感覚は当然、今まで一度だって経験したことがない。

 ──なのに……なぜだか妙に、腰の奥が疼く。

 小さく呻き続ける俺を見て、先輩は目を細めた。


「良かった。……子日君、感じてくれてる」
「な、にを……ッ!」
「あはっ。また僕の指を締め付けたね? 本当に、子日君は可愛い……っ」


 なにをどう見て、先輩は『俺が感じている』と思ったのだろうか。その根拠を探るように、俺は先輩を見つめた。
 すると先輩の視線は、いつの間にか俺の下半身に注がれていたらしい。

 先輩の、視線の先。
 そこには俺の、熱を持った──。


「──みっ、見ないでくださいっ!」


 あぁ、最悪だ。こんなの、言い逃れできないほど立派な証拠じゃないか。

 ──男が、勃起しているのだ。

 そんなもの、誰がどう見たって『感じている』と思うに違いなかった。




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