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11章【そんなに寄り添わないで】

8 *

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 口の中にあるツカサのモノが、質量を増していく。
 それが嬉しくて、カナタはさらに口と舌の動きを加速させた。


「気持ちいいよ、カナちゃん……っ」


 そう言いながら頭を撫でるツカサが、愛おしくて堪らない。カナタは息苦しさにうっすらと涙目になりながらも、口淫をやめなかった。

 ……話は少し変わるが、ツカサはどちらかと言われなくても恋人を可愛がりたいタイプだ。こうしてカナタに甘やかされることも満更ではないが、本来はカナタのことを甘やかして理性をぐちゃぐちゃに溶かしたいと考えている男だった。

 ツカサはカナタの頭を撫でていない方の手で、ふと、なにかできることはないかと考え始める。

 ……数秒の思考後。


「──んぁっ!」


 カナタが、ビクリと体を震わせた。
 空いていた、ツカサの手。その手が、カナタの上半身をまさぐり始めたのだから。

 カナタがくぐもった声を出すと同時に、ツカサは頭上で緩く口角を上げた。


「服の上から、カナちゃんの乳首触ってあげる。……って言うか、触りたい。だけど、カナちゃんはそのまま続けて? 俺、カナちゃんの口でイきたい」
「ふぁっ、あ……っ!」
「ちょっと触っただけで、乳首……ツンと立っちゃったね」


 布越しに、ツカサは空いていた手でカナタの乳首を引っ掻き始める。
 直接触られるのとはまた違った感覚に、カナタはビクビクと体を震わせた。


「カナちゃん、歯は立てちゃダメだよ。それと、できれば喉の奥も使ってほしい」
「んっ、ぅ……っ」
「そう、いい子だね。ご褒美に頭と乳首、いっぱいヨシヨシしてあげる」
「んんぅ、っ!」


 これではいったい、どちらが奉仕をしているのか。クラクラと揺れる頭では、カナタには考えられない。

 しかし、ここで快楽に負けてはいられなかった。有利なのはカナタであり、カナタの方が圧倒的に優勢でなくてはならないのだから。


「積極的だね、カナちゃん。ジュプジュプッて、いやらしい音が響いてるよ……っ」


 先ほど以上に動きを激しくしながら、カナタはツカサの逸物へ奉仕を始める。そうするとカナタの胸を弄ぶツカサの指も、さらに動きを強めた。


「はぁ、可愛い……っ。こんなに可愛い子をお嫁さんにもらえるなんて、幸せすぎて気が狂いそうだよ……っ」


 カナタの耳朶を指で挟み、それから穴をなぞる。


「もう、出そう。……こぼさないように、気を付けてね……っ?」


 キュッ、と。カナタの胸を強くつねる。
 カナタが反射的に喉を締めてしまうのと、ツカサが体を震わせたのは……ほぼ、同時だった。


「……ッ」


 熱い精が、カナタの口腔に注がれる。その勢いと量に、カナタは思わずむせそうになった。
 ビクビクと体を震わせながらも、カナタはツカサの熱を受け止める。

 ……それから、数秒後。


「カナちゃん……っ。顔を上げて、俺に向かって口をあーんってして?」


 射精を終えたツカサが、カナタの耳を撫でながらそう声をかける。
 言われた通り、カナタはツカサの下半身から顔を上げ、口を開けた。


「あはっ、エッチだなぁ。全部飲んでくれたの?」
「だって、もったいないから……っ」
「嬉しいよ、ありがとう。……そうだ、自販機で飲み物でも買って──」


 ツン、と。カナタは、ツカサの服の裾を掴む。

 ツカサはカナタを振り返り、小首を傾げる。……しかし、カナタは言葉を続けない。
 その態度を見て、ツカサはようやく気付いた。


「──もしかして、俺のを舐めてるだけでイッちゃったの?」


 ツカサからの指摘に、カナタは赤くなった顔を俯かせる。
 するとなぜか、ツカサはパッと笑みを浮かべたではないか。


「──こんなこともあろうかと、カナちゃんの下着とズボンの替えは用意してあるよっ。トイレで着替えちゃおうかっ」


 顔を上げて、カナタはツカサを見る。


「えっ? オレの、ですかっ?」
「うんっ。念のための【念のため】ってやつだねっ」


 実家の着替えに甘え切っていたカナタが着替えを持っていないと、ツカサは理解していたのだろう。

 ……それにしたって、準備が良すぎる気もするが。




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