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2章【そんなに拒む理由を消さないで】

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 ──どうしていつも、ツカサを拒み切れないのか。

 カナタは頭の片隅でぼんやりと、そんなことを考える。


「ねぇ、カナちゃん。……今、なにを考えているの?」


 カナタに覆いかぶさったツカサは、垂れてきた自分の髪を後ろへ撫でつけながら、そう訊ねた。

 カナタは赤くなった顔を隠すこともできずに、ツカサを見上げる。


「まさか、俺以外の人のことを考えているのかな?」


 ツカサの瞳が、真っ直ぐとカナタを映す。

 慌てて、カナタは首を横に振る。
 ツカサの瞳が、とても暗いものに見えたからだ。


「そうなんだ。……なら、良かったぁ」
「あ、っ!」


 ツカサはカナタの首筋に鼻先を当てて、そのまま舌を這わせる。
 生温かい感触に、カナタは短い悲鳴を上げた。


「カナちゃん、可愛い。……ねぇ。ココに痕、つけてもいい?」
「それは、困ります……っ」
「どうして? カナちゃんは俺のカナちゃんなのに」


 拗ねたような口調に、カナタは一瞬だけ絆されそうになる。

 しかし、ツカサが唇を寄せているのは首筋。しかも、襟で隠れるか隠れないか微妙なラインだ。

 カナタの首にキスマークなんて付いていたら、少なくともマスターには【相手がツカサ】ということがすぐにバレてしまう。
 なぜなら、カナタはマスターとツカサ以外、密接に交流している相手がいないのだから。

 そのことを分かっていないのか、はたまた分かっているうえでの発言なのか。


「お願い、カナちゃん。キスマーク、付けさせて?」


 ツカサは、一歩たりとも引こうとしない。
 カナタはそれでも、首を横に振ろうとする。

 そうすると……。


「──ぁあっ!」


 ツカサが強引に、カナタの後孔を逸物で穿つ。

 今、カナタはツカサに抱かれている。
 主導権を完全に握られ、逃げることは到底不可能な状況だ。


「ねぇ、カナちゃん。……お願い」


 そう言い、ツカサはカナタの首筋に歯を立てる。


「できれば、強引に噛みたくはないんだよ」


 つまりそれは、拒否をするのならば噛むという意味。

 やはりどうしたって、カナタはツカサを拒めないのだ。


「もう、少し……下に、してください……っ」


 せめてもの願いを口にすると、ツカサの唇がゆっくりと動く。


「ココ?」
「ん、っ。……も、少し、下……っ」
「えぇ~っ? それじゃあ見えないよ?」
「見えるのが──やっ、噛まないで、くださ……んっ!」


 ツカサはカナタの首筋に、そっと歯を立てた。


「見えるところがいい。隠せないところがいい。……ねぇ、いいでしょ?」


 舌が、まるで狙いを定めるようにカナタの首筋を這う。

 こうなっては、どうしたってツカサを言い負かすことはできない。
 カナタは覚悟を決めて、ツカサの背中に手を伸ばした。


「……一ヶ所だけ、ですよ……っ?」
「ヤッタ、ありがとっ」
「ん、っ!」


 すぐに、小さな痛みが首筋に奔る。
 カナタは眉を寄せて、突然与えられた痛みに耐えた。

 ツカサは唇を離し、そのままカナタの頭を撫でる。


「優しいカナちゃん、凄く可愛い。可愛くて、可愛くて……あぁ、どうしよう。また怖がられるのは嫌だなぁ……」


 恍惚とした表情でカナタを見下ろしながら、ツカサは微笑む。


「だけど、ひとつもふたつも同じだよね。カナちゃんは優しいから、きっと俺を嫌いにならないよ。だって、俺のカナちゃんは世界で一番いい子だから」


 それは、どういう意味なのか。
 カナタが問いかけようとした、その時……。


「やっ、ツカサさん……っ! だめっ、一ヶ所だけって──や、っ!」


 ツカサはもう一度、カナタの首筋に痛みを与えた。
 



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