未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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9章【未熟な社畜と未熟な悪魔は不慣れでした】

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 いや魔界のヘンテコ迷信に感心している場合か! 思わず、ページを跨いでのノリツッコミだ。


[──メタすぎる発言な上に、面白くないです]
「──シンプルに傷付く!」


 だがしかし、今はゼロ太郎のツッコミに傷付いている場合ではない。早くカワイを止めないと、この話題は永久にうやむやとなるだろう。それは困る、大いに困る!


「待って、カワイ! 今の話、もうちょっと詳しく──」


 焦った、その矢先だ。


「──ふやっ!」
「──わわっ! ごっ、ごめんっ!」


 慌てすぎてしまったがゆえの、失敗。伸ばした手で、カワイにとって敏感な尻尾の先を掴んでしまったのだ。

 カワイが猛烈に可愛い声を上げた! 可愛い! という感動は、当然として。そのまた矢先のことだ。


「──あいたっ」


 ──カワイが凄まじい勢いでテーブルの脚に足をぶつけたのが、ほぼ同時だったのだから。

 俺はカワイの尻尾から手を離し、わなわなと体を震わせる。


「カワイがテーブルに足をぶつけた、だってッ?」
[えぇ、そうですね。主様の不注意が原因で、カワイ君は足をぶつけてしまいましたね]

「カワイが、俺の、俺のカワイが」
「ヒト? ボクは大丈夫だよ。……ヒト?」


 わなわな、ぷるぷる。俺は体を震わせたまま、食卓テーブルをガシッと両手で掴んだ。


「──極刑だね、このテーブル。今すぐ捨てよう」
「──ヒト、目が怖い」


 俺のカワイに仇為すものは、なんであっても消さなくては。そんな覚悟や決意を抱いての発言だったが、当然ながらカワイとゼロ太郎に阻止されてしまった。

 ついでに言うのなら、どうやら俺はカワイの邪魔になってしまったらしい。なので仕方なく、カワイの作業が終わるまで待機だ。

 とは言っても、特にすることはない。俺はソファに座り、なんとなくネットの海を漂う。
 カワイに家事の邪魔をしていると注意されてしまったし、癒しが欲しいな。なにか、なにか癒される画像は……。

 そこで俺は、懲りずに【あの】画像を見てしまった。


「──あっ、可愛い。猫の写真だぁ~っ」


 感じたことを、思うがままに。目に入った画像に対する感想を、素直に零してしまった。

 しばらくの間、猫の写真を眺める。だから俺は、愛しの彼が【どこにいるのか】を失念してしまった。


「ヒト、なにしてるの」
「あれっ、カワイだ。もう洗い物終わって──」


 スマホを見ていたら、背後からカワイの声。珍しく、とても冷たい声だ。
 この先は言うまでもないと思うけど、俺はカワイにスマホを没収されてしまった。


「あ、あのぉ、カワイさん? 俺のスマホを、いったいどうするおつもりで?」


 なにも言わないカワイに、嫌な予感がする。俺は慌ててソファから立ち上がり、カワイを追いかけた。

 早歩きのカワイは、トイレに入ろうとしている。つまり……。


「──待って待って! 島流しの刑はやめてぇッ!」


 俺の声は届いているのか、カワイは黙ったまま踵を返した。そのままキッチンに向かい、なぜか鍋に水を溜めて、お湯を沸かし始めて──。


「──茹でるのも駄目ぇッ!」


 ……ちなみに、数分後。


[主様、そろそろ学習いたしましょう? カワイ君の前で、猫は禁止なのです]
「はい、ごめんなさい……」


 俺は床に正座し、己の行動を猛省するのだった。




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