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7.5章【未熟な人工知能のメモリーです(ゼロ太郎視点)】
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しおりを挟む迎えた、翌朝のこと。つまり、彼がこの部屋に引っ越してきたと同時に、私が目覚めて二日目のことだ
「おはよう、ゼロ太郎。早速だけどゲームの解析、どうだった? 参考になったかな? ……って、まだ全部のルートを閲覧できてない?」
引っ越してきたばかりの光景と、なにも変わらない室内。この一日で確実に分かったことと言えば、彼は【家事が苦手】ということだった。
自炊はせず、掃除を嫌い、必要最低限中の最低限しかしない。これはなかなか、骨の折れそうな主人だ。
しかし、今すべき会話の論点はそこではない。私は寝起きの彼に、返事をした。
[おはようございます。全ルート、全シナリオ、全選択肢による分岐。一時間で解析を終えました]
「えっ! 早いねっ?」
当然だ。オーナーである糸場エツ様が作り出した人工知能は、優秀なのだから。
しかし、どうやら彼は期待をしているらしい。彼の気持ちをそう演算した私は、彼が喜びそうな言葉を発してみた。
[会話や返答パターンの演算は完了しております。今すぐ適用いたしますか]
だが、どうやらこれは彼の好む提案ではなかったようだ。
「それは違うよ。それだと、ゼロ太郎がそのキャラになるだけじゃん」
[では、どのような受け答えが理想的ですか]
「ちょっと待ってね。えーっと……」
一言断りを入れた後、彼は一切手を付けていない段ボール箱を物色し始めた。
とは言っても、さほどの量ではない。そして、彼は段ボールに【なにが入っているか】をメモしていた。なので、彼はすぐに目的の段ボール箱を見つけられたようだ。
「はい。ここに、俺が買ったシミュレーションゲームのデータが全部入ってるから、そのデータも解析して?」
[かしこまりました]
彼が開いた箱の中には、ゲームソフトが収められていると予測されるプラスチックの容器が大量に入っていた。私の視界に映る物だと、派手な身なりのキャラクターがプリントされている。
その中から彼が抜き取り、天井──おそらく、私に向けた物。それは、USBだ。
「参考にしてほしいキャラクターはお昼休憩中にまとめておくから、そっちも一緒に確認してね」
[かしこまりました]
「えーっと。……俺のノートパソコンに差せば、ゼロ太郎は中身を見ることができるのかな?」
[はい。その方法で解析可能です]
この部屋のネット環境にさえ接続してもらえれば、なんだって解析可能。昨日は彼のスマホからデータを解析したので、その流れは分かっているのだろう。
彼は同じ箱から、ノートパソコンを取り出す。そして、手早くこの部屋のネットワークとノートパソコンを繋いだ。
USBの中に入っているゲームのデータを、私は瞬時に解析し始める。彼に見せられたゲームのタイトルは、バリエーションに富んでいた。
恋愛シミュレーション、RPG、ノベル、パズル……。どうやら彼はジャンルを問わず、幅広くゲームを嗜んでいるようだ。
ただ、ひとつだけ。どのゲームにも、共通点があった。
「あと、できればゲームの感想も聞いてみたいなぁ。俺、誰かとそういう会話ってあまりした経験がないからさ」
[……。かしこまりました]
──全て、一人でプレイすることを想定されているゲーム。……これだけは、絶対条件のように見えた。
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