未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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6.5章【未熟な悪魔は支えるだけです(カワイ視点)】

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 もっと駄々をこねるかと思ってたけど、意外。仕事モードのヒトは、静かだった。

 ボクが声を掛けたら、返事はくれる。例えば『掃除機かけてもいい?』とか。それには、返事をくれた。

 でも、ボクが声を掛けない限りは黙ったまま。ヒトは黙々と仕事をしている。

 今さらながらにようやく、ゼロタローが言っていた意味を理解。確かに少し、ギャップがあるかも。仕事を続けるヒトの様子を時々確認しつつ、ボクは考える。

 オンとオフの、ギャップ。確かにこれは、会社でも頼られそう。完全にイメージと空想だけの妄想だけど、ゼロタローの言い分に納得。

 そこで、ボクはふと気付く。いつの間にか、お昼が近付いていたみたい。ボクは掃除をキリのいいところで終わらせてから、キッチンに向かった。


「ヒトの作業を妨げないような料理を作りたい」
[カワイ君ならそう言ってくださると思っておりました]


 始まる、ボクとゼロタローの作戦会議。ボクもゼロタローもヒトが大好きだから、考えは一致している。つまり、話は早い。

 冷蔵庫の中を確認して、打ち合わせ。作るものが決まった後は、ゼロタローに教わりながら調理開始。……ちなみにボクは結構、この時間が好き。

 ということで、昼を目掛けて淡々と調理。その間も、ヒトは仕事に集中していたらしい。
 でも、その方が好都合。気分は、ちょっとしたサプライズ。

 昼から少し時間が過ぎた頃、ボクとゼロタローは昼食を完成させた。だからすぐに、ボクは部屋で作業をするヒトに近付いた。


「ヒト、ご飯にしよう」
[一度休憩といたしましょう、主様。その方が、結果的には作業効率が下がりませんから]


 ノックをしてから顔を覗かせると、ヒトはボクを振り返る。それから数回瞬きをして、時計を確認した。


「えっ、もうお昼? ……あちゃ~、気付かなかった。ありがとう、二人共」


 ヒトは体を伸ばしながら、お礼を言う。伸ばした拍子に体がパキパキッて音を鳴らしているけど、それは大丈夫なのかな。


「さっきから『いい匂いがするなぁ』とは思ってたけど、二人が料理してくれてたからだったんだね。折角家にいるのに手伝いもせずにごめんね。……でも、今日のご飯はなにかなぁってワクワクしていますっ!」

「手伝いは、別にいい。それよりも、素直に喜んでくれて嬉しい」
[主様の場合【手伝い】ではなく【妨害】になり得ますからね]

「ゼロ太郎さんや、優しさはもう少し分かり易く頼むよ」


 ゼロタローは素直じゃない。ヒトが律儀にツッコミを入れる程度には。
 ヒトはボクたちに笑顔を向けてくれたけど、すぐに眉が困ったように下がった。


「あー、でも……もうちょっと後でもいいかな? 今、作業のキリが悪くてさ」

「うん、大丈夫。そんなこともあろうかと……」
「あれ? カワイ?」


 一度、部屋から退散。それからすぐに、ボクはキッチンから料理を運んで戻ってくる。
 ジャンッ。運んできた料理を、ヒトの前に用意した。


「今日のご飯は、一口カツサンド。ボクがヒトの口に入れるから、ヒトは仕事に集中できるでしょ?」


 本音を言えばしっかり休んでほしいけど、出来立ての料理を食べてほしいのも本音。だから、仕事のキリが良くなるまではこの方法で食べてもらおう。

 そういうつもりで提案した食事方法だったけど、ヒトはとても難しい顔をした。


「……カワイ」


 真顔で、ボクを見ている。かと思いきや、カツサンドを乗せた食器をヒトがヒョイッと回収。
 作業机の上に食器を置いた後、フリーになったボクの手をヒトが握った。そして……。


「──俺たち、今すぐ結婚しよっか」
「──うん、する」

[──作業が止まっていますよ、お二人様]


 ヒトを喜ばせるはずが、ボクの方がより一層喜んでしまったみたい。ヒトの言葉に、ボクは尻尾を振ってしまった。




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