未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
170 / 212
6章【未熟な社畜は悩みました】

32

しおりを挟む



 後輩二人の飲み会に混ぜてもらい、俺は居酒屋で日付が変わる直前頃までお酒を嗜んでしまった。

 幸いにも、明日は休日。『念のため休日出勤しようかな』程度の気持ちだったので、二日酔いの場合は素直に寝て過ごそう。

 つまり、この思考がなにを意味するかと言うと……。


「──たっだいまぁ~っ! カワイ~っ、ゼロ太郎~っ! 家主様のご帰宅だぞぉ~うっ!」


 ──どんな飲み会であろうと必要以上にやる気を出してしまう俺は、ものの見事にへべれけだ。

 無論、後輩二人の前でこんな姿は見せないぞ。これはあれだ、家族だけの特権だ。……そう! つまりこれは『家族サービス』というやつだ!


[なんて迷惑なサービスでしょうか]
「んあぁ~っ! ゼロ太郎が冷たい冷たいつ~め~た~い~っ!」


 と言うことで、バタリ。俺はリビングに辿り着くよりも先に、通路へと倒れ込んだ。

 すると丁度そのタイミングで、カワイがリビングから姿を見せてくれた。俺は倒れ込んだまま顔だけを上げて、カワイを見る。


「あぁ~っ、カワイだぁ~っ。今日も可愛いねぇ~っ? だって、カワイは可愛いからカワイだもんねぇ~っ。……ねぇ~っ?」
「おかえり、ヒト。ここで寝ちゃダメだよ。先ずは着替えよう。……ね?」

「んんん~っ! カワイがしっかりしてるぅ~っ!」
「褒められた、嬉しい」


 カワイは尻尾を振りながらも、懸命に俺を引きずり始めた。


「ヒト、今日は一段とすごくすごい。大丈夫?」
「大丈夫だよ~っ。んっへへへっ、カワイに心配してもらえて嬉しいなぁ~」

[酔っ払いの『大丈夫』を信用してはいけませんよ]
「分かった」
「あっれぇ~?」


 ゼロ太郎の一声により、俺はサラリと『大丈夫ではない』認定を受けてしまったらしい。トホホ。

 カワイは俺をリビングまで引きずった後、コップに水を注いで持って来てくれた。


「水だよ、飲んで」
「飲む飲むぅ~っ! まだまだ飲めるよぉ~っ!」
「うん。水を飲もうね」


 カワイが用意してくれたものならお酒でもお水でも、なんだって飲み干してやる! そんな精神で、俺はコップに注がれた飲み物をグイッと飲み干した。


「ぷはぁ~っ! おいしいっ! もう一杯!」
「うん、水だね」


 おかわりまでいただいてしまったぞ。カワイは甲斐甲斐しくて世話焼きで、本当にいい子だなぁ~。


「今日はねぇ、ちょっとお節介しすぎちゃったかなぁ~って思ったんだよねぇ~? でも、帰りに二人共『ありがとう』って言ってくれたんだぁ~っ。二人共だいぶお酒が進んでいたし、あれってきっと本心だよね~?」

「アルコールを摂取しすぎると、理性が働かなくなる。だから、酔っぱらっている時の人間は本性が現れる。……って話だよね?」
「うん、そういうことだねぇ~? でもいきなり、そんなこと気にしてどうしたの~?」


 って、俺がそういう話題を振ったんだろうがーいっ! 心の中で、ノリツッコミ。
 しかしカワイは、俺の質問を真に受けたようで。


「つまり、今のヒトはホントのヒト。今のヒトは、隠し事ができないはず……」


 ブツブツとなにかを呟き、それから俺の顔を覗き込んだ。

 宝石みたいにキラキラしていて、綺麗で、透き通った瞳。それはまるで、俺の奥底に在る全てを見透かすかのような輝きにも思えて──。


「──ヒト、教えて。どうして最近、ボクに触ってくれないの?」


 射貫かれたような、そんな衝撃。まるで、酔いがヒュンッと一撃で覚めるような。そんな瞳と……そんな発言だった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

処理中です...