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6章【未熟な社畜は悩みました】
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しおりを挟む草原君とは解散し、俺はカワイとゼロ太郎お手製のお弁当を平らげた後、すぐに事務所へと戻った。
明日の月君がデスクを見て落ち込まないように、俺は月君に渡される書類全てを引き取ったのだ。休憩時間を取っている場合でなかったりする。
「よ~しっ。続きをやるぞ~っ」
誰に言うでもなく気合いを入れて、俺はパソコンとにらめっこを再開した。
可能な限り月君の仕事を終わらせて、だけど全部を終わらせるとそれはそれで月君が『申し訳ない!』と言って落ち込むので、ほんのちょっぴりだけ残して……。俺は自分の作業と並行して、月君のデスクに積まれそうになった仕事を片付けた。
言うまでもなく、それらをこなすには残業するしかない。ちなみに、定時でタイムカードは切っているので超勤手当は発生しないぞ。なぜならこれは、俺が自らの意思でやったことだからだ。上司の命令ではない。自己研鑽だ。
同じ部署の誰かが有休を取るのなら、次に出勤して感じる憂いを減らしたい。つまりこうした作業は毎度のことなので、俺はなんとも思わない。労働基準なんとか~なんて、知ったものか。ふんすふんすっ。
[私としては、かなり複雑な状況ではありますがね]
「あー、うん。本当、そこに関してはごめんなさい」
しかしこうして残業すると、ゼロ太郎は不服申し立てをするのだ。ゼロ太郎の立場を考えると、当然と言えば当然だけども。
それに、俺の帰りが遅いのは毎度のこととは言え、今日はいつも以上にカワイを待たせてしまった。家族に対して申し訳ない気持ちを抱き、俺は帰る途中でコンビニへと寄り道する。カワイに【お詫びの品】を渡すためだ。
ちなみに、ゼロ太郎には電子マネーをチャージした。好きな本を買ってほしい。
と言うことで買い物を終えた俺は、二十三時過ぎになんとか帰宅を果たした。
「ただいま~っ。今日は帰りにアイスを買ってきたよ~。お風呂上がりに一緒に食べようねっ」
「おかえり、ヒト。今日もお疲れ様」
「ゼロ太郎はアイスの動画を眺めるでも良し、本を読んでまったりするも良し。のんびりとした時間を一緒に凄そうではないか~っ」
[無論、後者です。……おかえりなさいませ、主様]
ゼロ太郎は普段通りだし、カワイも普段通り。ならば俺も、普段通りだ。
「今日はね、枝豆の一口ピザを作ってみたよ」
「ほうほう、なるほど。ちっとも想像できないぞ? それはどういう料理なんだい、カワイさんや?」
「シュウマイの皮に、枝豆とか色々な具材を乗せて焼く料理。キミには作れないと思うけど、でも簡単だよ、ヒトさんや」
「刺さるよ、その言葉。しかし事実なので受け止めよう」
俺のノリに合わせつつ、ほんのりとゼロ太郎節が混ざっている。カワイはなんと言うか、いい意味でも悪い意味でも吸収力の素晴らしい子だ。そんなところも可愛くて好きだが。
はてさて、カワイが作ってくれたミニピザを食べるためにも、俺は着替えを済ませなくては。カワイにコンビニで買ったアイスを手渡しつつ、俺は着替えのためにリビングから移動した。
……ふむ。一人になった後、俺は腕を組んだ。
それから……。
「──今の会話って、完全に結婚してないかな……!」
[──いいから早く着替えてください]
俺は、噛み締めてしまったのだ。
好きな子と一緒に暮らしている、ありがたみ。その贅沢さを、噛み噛みしてしまったのだ。
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