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6章【未熟な社畜は悩みました】
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しおりを挟むカワイの太腿に刻まれた不思議な模様は、気にはなったけど驚きはしなかった。
なぜなら、こう見えて俺も悪魔の血が流れている生き物だ。形は違えどカワイと同様、俺の体にもおかしな模様が刻まれている。
形が違うなら、刻まれている部位も違う。ある意味、この不思議な模様は【悪魔の個性】と言ったところなのかもしれない。
正直、俺は自分の体に刻まれたその不思議な模様が好きではなかった。どれだけ目を背けようと『お前は俺の子供なんだぞ』と。そう、顔も知らない父親に見せつけられているように思えたからだ。
ポジティブに捉えることができたのなら、俺にとって唯一の【父親との繋がり】なのかもしれないけど……。俺には、どうしてもそう思えなかった。
……それなのに、不思議だ。
「じゃあ、サクッと触ってもらおうかなぁ~」
カワイに見せるのが、嫌じゃないなんて。見られるどころか、カワイに触られても平気なのだ。目に見えて在る【悪魔としての血】を、こんな風に思える日が来るなんて……。本当に、不思議だ。
なんて感慨を俺が抱いていると、ふと、カワイはなにやら気付いたらしい。小首を傾げて、口を開いた。
「そう言えば、ヒトのはどこに──」
が、その直前。
──俺は恥じらうことなく、着たばかりの寝間着を脱いだ。
脱ぐと同時にカワイが『どこ』と言ったのが聞こえたので、俺は隠すことなくすぐに答える。
「──俺のはね、背中にあるんだよ~」
「──っ!」
ガバッ、と。上に纏っていた布を脱ぎ捨て、そのまま俺はカワイに笑みを向けた。
「背中って、他人に触られることがないでしょう? だから実際、触られたらどんな感じなのか分からないんだよね」
カワイは俺の素性を知っていて、それでいて俺は毎日カワイの脚に描かれた模様を見ているのだ。俺のだけ隠すなんて、アンフェアだろう。もとより、隠すつもりもないしね。
と言うことで、早速カワイに背を向けよう。俺は体の向きをくるりと変え、カワイに背中を見せた。
「さぁ、いくらでもどうぞっ」
上裸を見られるのは少し恥ずかしい気もするけど、これは俺が蒔いた種のようなもの。背中くらい、いくらでも晒せるぞ。
などと、そんな気持ちでカワイからのボディタッチを待っていたものの……。
「……カワイ? 触らないの?」
おかしいな。さっきカワイは『触る』って即答したはずなのに、ちっとも触られる気配を感じないぞ。
もしかして、もう気持ちが冷めてしまったのだろうか。俺は恐る恐る、後ろでおさわり待機しているはずのカワイを振り返った。
そこで、俺はようやく気付けたのだ。
──カワイがボボッと、先ほどよりも激しく赤面しているではないか。
あまりに、あまりにレアな表情。まるでつられるかのように、俺もジワジワと赤面してしまう。
が、お互いに甘酸っぱい気持ちになったのも束の間──。
「──バカ! ヒトのエッチ! ヘンタイ!」
「──えぇッ? なっ、なんでッ?」
カワイが叫ぶと同時に、すぐさまゼロ太郎が部屋いっぱいに【110】と表示してきたので、洒落にならない!
俺は二人に対し、現状がよく分かっていないものの『ヘンタイではない』といった趣旨の弁明をすることとなった。
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