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5章【未熟な社畜は自覚しました】
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しおりを挟むと言うわけで、帰宅後。俺は月君とゼロ太郎から告げられた衝撃的な真実を、すぐさまカワイにも共有した。
すると、カワイの反応は俺の想定に反していて……。
「──ヤッパリ、顔色だったんだね。ヒトは『太った』って言ったけど、なんだかそれだとピンとこなくて……」
カワイが言っていた『ヒトの変わったところ、イコール、顔』と言うのは、月君と同じように【顔色】という意味だったらしい。
カワイは俺の変化に対して【体重の増加】という答えでは納得できず、なんならモヤモヤすら抱いていたようだ。
月君とゼロ太郎によって【顔色】という答えを提示されてモヤモヤが解消された今、カワイはどことなく晴れ晴れとした顔を浮かべていた。
「でも、良かった。太りすぎてヒトが死んじゃったらどうしようかと思って、すごく不安だったから」
「カワイ……!」
なんていい子なんだろう。感動だ、感謝だよ。だから、小脇に抱えたお酢のボトルはどこかに隠してほしいかな。
俺はカワイからお酢のボトルをそっと奪い取り、フルフルと首を横に振る。カワイは頷いて、俺からボトルを受け取った。
それからカワイは、なぜかしょもんと落ち込み始める。嬉しそうに揺れていた尻尾が、床につくほど垂れ下がった。
「ごめんね、ヒト。もっと早くそれが分かっていたら、今日の晩ご飯はもうちょっとカロリーを足せたんだけど……」
食卓テーブルを見てみると、びっくり仰天。なんだか、青々とした料理が並んでいるではないか。
まさかの、野菜まみれ。それと、コンニャク。……そう言えば『やみつきになるコンニャク料理をマスターする』とか言っていたような。
「ううん、いいんだよ。俺を想って用意してくれたっていう事実が、俺にとっては本当に感謝感激だから」
落ち込むカワイの肩に、ポンと手を置く。それから俺は、カワイに感謝を伝えた。
だって、そうじゃないか。俺のためを想って作ってくれた料理に、不満なんてあるはずがない。俺はカワイに、そう伝えたかった。
どうやらそれが、カワイに伝わったらしい。カワイは顔を上げて、お酢が入ったボトルをギュッと抱いて──。
「──そう? じゃあせめて、このお酢だけは片付けておくね」
「──ちょっと待って? もしかしてカワイ、本気で俺にお酢一本飲ませようとしてたのっ?」
カワイ、恐ろしい子……! 今日中に『太り過ぎではない』って気付けて良かったよ。
まぁでも、いい機会ではあったかな。自分の体を見つめ直せたし、なんだかんだでカワイと楽しい時間を過ごせたし、それに……。
「でも、ジムにはまた行きたい。ダイエットが理由じゃなくても、ヒトと一緒に行きたい」
「うん、俺もだよ。カワイとなら、ジム以外のどこまでだって一緒に行きたいなっ」
カワイへの気持ちに、気付けた。だからこの騒動は、全く無駄じゃなかったと思う。
……さて。そんなこんなで、翌日のこと。俺の体に対する誤解も解けて、我が家の食卓は平穏を取り戻した。
「今日の夕飯は、トンカツとポテトサラダ。それに、豆腐とネギのお味噌汁だよ」
「ヤッター! 俺の大好物だよっ! 食べる食べるぅ~っ!」
昨晩のように野菜縛りの料理が用意されることはなく、俺たちは茶色のご飯も食べられ──。
「──あと、たくあんと水菜のサラダ。お酢を使ってるよ」
「──お酢……」
……まぁ。お酢が完全になくなったわけでは、なかったけど。
5章【未熟な社畜は自覚しました】 了
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