上 下
103 / 148
4.5章【未熟な悪魔のパーフェクトな知識です?】

3

しおりを挟む



 いやまぁ、いいんだけどね。カワイが人間界に馴染もうと、俺以上に人間っぽい感じになろうとさ。別にさ、いいんだよ。

 カワイが保有する雑学や豆知識を嘆いて、カワイの手料理に舌鼓を打って、その数日後。ようやく『まぁいいか』と吹っ切れてきた頃のこと。


「ヒト、お茶飲む?」
「飲む飲む~っ!」


 誰よりも休日を休日らしく──つまり、ゴロゴロしてダラダラしていた、昼下がり。ソファの上で溶けていた俺に、カワイが声を掛けてくれた。

 ゼロ太郎は[少しは動きなさい]とか[だらしないです]とか[カワイ君の教育に悪いです]とか[これが私の主様なのかと思うと恥ずかしいです]とか言っているけど、俺は俺のスタイルを貫く。視界が少し滲んでいる気もするけど、とにかく俺は休日を謳歌中なのだ。

 そんな俺に優しくお茶を用意してくれたカワイは、やはり天使なのかもしれない。もうさ、なんかさ? カワイが人間界に馴染んでいるとか、そういうのは些事な気がしてきちゃうよね。

 とかなんとか思いながら、俺はカワイが用意してくれたお茶を飲んだ。……飲んだ、のだが。


「なんだか普通のお茶と少し違うね。これはなぁに?」

「──菊花茶。緑茶とブレンドしたから、飲みやすいと思う」
「──よく分からないけど、人間界に馴染んだねぇ」


 こう、カワイの言動の端々で【人間界への馴染みっぷり】を感じると、言葉を失くすね。

 つい先日までは驚愕とか焦りとかを感じていたりもしたけど、ここまでくると『もっと人間界を知ってもらうのもいいかも』とか思うようになってくるよ。

 悪魔が人間界に来るためには、猛勉強をして資格を取得しなくてはならない。そうしてまで手に入れた念願の資格で、カワイはこうして人間界にいるんだ。

 そう思うと、カワイがこうして人間界マニアになっていくのは喜ばしい話なのかもしれないな。俺はようやく、思考をここまで持って行けるようになった。

 別に、カワイが淹れてくれたお茶がおいしいから絆されたとか、そんなんじゃないんだからねっ。


[誰も得をしないツンデレ思考回路はやめてください]
「勝手に心を読まれて、このディスとは」


 まぁ、なんでもいっか。とにかく俺は、吹っ切れたのだ。

 隣に座ったカワイも、俺と同じく菊花茶というお茶を飲んでいる。カップを両手で包み、ズズッとお茶を啜っているのだ。……ふふっ、さすが俺のカワイだな。お茶を飲む姿すら、可愛らしい。

 そう。カワイは、可愛い。もうなんて言うか、それで全部解決だ。
 俺が一人で勝手に問題を解決していると、今度はカワイの中でなにかの問題が起こったらしい。


「そのうち、工芸茶も試してみたいな」


 なんとも聞き馴染みのない単語を呟き、菊花茶を見つめ始めた。


「コーゲーチャ、とは?」
[茶葉と花茶を組み合わせたお茶のことです。カワイ君が興味を持たれている理由は、工芸茶に湯を注いだ後の状態ですね]
「なにそれ、どういうこと?」


 俺が訊ねるとすぐさま、目の前に映像が映し出される。話の流れからすると、映し出されているこの映像が工芸茶なのかな。

 お湯を注ぐと、茶葉がフワッと広がる。その様子はまるで、花が咲いたかのようだ。そんな映像を見て、カワイはより一層【工芸茶】というものに対する欲求が強まったらしい。


「デカンタ、買おうかな」
「はて? デカンタ、とは?」
[とてもザックリ説明しますと、この映像の中で使われているガラス容器のことです]
「なるほどー」


 本当に全然分からないけど、カワイはとてつもなく人間界に馴染んでいるらしい。
 カワイが楽しそうにしているのなら、それでいいかもしれない。俺は菊花茶を啜りながら、そう思った。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

釣った魚、逃した魚

円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。 王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。 王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。 護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。 騎士×神子  攻目線 一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。 どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。 ムーンライト様でもアップしています。

処理中です...