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4.5章【未熟な悪魔のパーフェクトな知識です?】
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しおりを挟むいやまぁ、いいんだけどね。カワイが人間界に馴染もうと、俺以上に人間っぽい感じになろうとさ。別にさ、いいんだよ。
カワイが保有する雑学や豆知識を嘆いて、カワイの手料理に舌鼓を打って、その数日後。ようやく『まぁいいか』と吹っ切れてきた頃のこと。
「ヒト、お茶飲む?」
「飲む飲む~っ!」
誰よりも休日を休日らしく──つまり、ゴロゴロしてダラダラしていた、昼下がり。ソファの上で溶けていた俺に、カワイが声を掛けてくれた。
ゼロ太郎は[少しは動きなさい]とか[だらしないです]とか[カワイ君の教育に悪いです]とか[これが私の主様なのかと思うと恥ずかしいです]とか言っているけど、俺は俺のスタイルを貫く。視界が少し滲んでいる気もするけど、とにかく俺は休日を謳歌中なのだ。
そんな俺に優しくお茶を用意してくれたカワイは、やはり天使なのかもしれない。もうさ、なんかさ? カワイが人間界に馴染んでいるとか、そういうのは些事な気がしてきちゃうよね。
とかなんとか思いながら、俺はカワイが用意してくれたお茶を飲んだ。……飲んだ、のだが。
「なんだか普通のお茶と少し違うね。これはなぁに?」
「──菊花茶。緑茶とブレンドしたから、飲みやすいと思う」
「──よく分からないけど、人間界に馴染んだねぇ」
こう、カワイの言動の端々で【人間界への馴染みっぷり】を感じると、言葉を失くすね。
つい先日までは驚愕とか焦りとかを感じていたりもしたけど、ここまでくると『もっと人間界を知ってもらうのもいいかも』とか思うようになってくるよ。
悪魔が人間界に来るためには、猛勉強をして資格を取得しなくてはならない。そうしてまで手に入れた念願の資格で、カワイはこうして人間界にいるんだ。
そう思うと、カワイがこうして人間界マニアになっていくのは喜ばしい話なのかもしれないな。俺はようやく、思考をここまで持って行けるようになった。
別に、カワイが淹れてくれたお茶がおいしいから絆されたとか、そんなんじゃないんだからねっ。
[誰も得をしないツンデレ思考回路はやめてください]
「勝手に心を読まれて、このディスとは」
まぁ、なんでもいっか。とにかく俺は、吹っ切れたのだ。
隣に座ったカワイも、俺と同じく菊花茶というお茶を飲んでいる。カップを両手で包み、ズズッとお茶を啜っているのだ。……ふふっ、さすが俺のカワイだな。お茶を飲む姿すら、可愛らしい。
そう。カワイは、可愛い。もうなんて言うか、それで全部解決だ。
俺が一人で勝手に問題を解決していると、今度はカワイの中でなにかの問題が起こったらしい。
「そのうち、工芸茶も試してみたいな」
なんとも聞き馴染みのない単語を呟き、菊花茶を見つめ始めた。
「コーゲーチャ、とは?」
[茶葉と花茶を組み合わせたお茶のことです。カワイ君が興味を持たれている理由は、工芸茶に湯を注いだ後の状態ですね]
「なにそれ、どういうこと?」
俺が訊ねるとすぐさま、目の前に映像が映し出される。話の流れからすると、映し出されているこの映像が工芸茶なのかな。
お湯を注ぐと、茶葉がフワッと広がる。その様子はまるで、花が咲いたかのようだ。そんな映像を見て、カワイはより一層【工芸茶】というものに対する欲求が強まったらしい。
「デカンタ、買おうかな」
「はて? デカンタ、とは?」
[とてもザックリ説明しますと、この映像の中で使われているガラス容器のことです]
「なるほどー」
本当に全然分からないけど、カワイはとてつもなく人間界に馴染んでいるらしい。
カワイが楽しそうにしているのなら、それでいいかもしれない。俺は菊花茶を啜りながら、そう思った。
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