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4.5章【未熟な悪魔のパーフェクトな知識です?】
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しおりを挟む俺こと追着陽斗には最近、悩みがある。
それは同居人──そう。カワイに関する悩みだ。
遡ること、三日前。この日から、俺の悩みの種はスクスクと猛スピードで育ち始めたのだ。
時刻は、俺が会社から帰宅したその晩。……回想、スタート!
俺はいつものようにカワイお手製の晩ご飯を食べようと、それはそれは意気揚々でルンルンでハッピーだった。
「今日のご飯は唐揚げでしょ! それと、お味噌汁! 香ばしさを纏ったいい匂いがする~っ! 食欲全開だねっ、ありがとう~っ!」
「うん。それと、ナスの鍋しぎ」
「ナベシギ……。……なにそれ?」
「ナスを炒めて、味噌で味を付けた料理のことをそう言うらしい」
「……へぇ~?」
さて、お分かりいただけただろうか? ……『さすがにこれじゃあ、まだ分からない』って? ならば、二日前の回想を始めよう。
鍋しぎという料理を堪能した、その次の日。その日もその日とて、俺は帰宅後にカワイが作ってくれた料理を眺めて瞳をキラキラさせていた。
「なにこれ、魚だ! 魚の照り焼きだ! あとは、野菜の胡麻和え? それと、南瓜の煮物だ! おいしそ~っ!」
「カボチャのいとこ煮だよ」
「いとこ、に……?」
「小豆と野菜を煮た料理を、そう呼ぶらしいよ。煮るのに時間がかかるものから『おいおい』入れていくから『甥、甥』ってことで、いとこ」
「わー、博識だなー」
お分かりいただけるだろうか? ……『ヤッパリまだ分からない』って? そうかそうか。ならば、昨晩の回想を始めよう。
いとこ煮に身も心もホッコリした、その翌日──つまり、昨日の話だ。
昨日も昨日で、俺はテーブルに用意された晩ご飯を見て幼い子供のようにはしゃぎまくっていた。
「今日はお鍋なんだね! お肉と青菜と、そして鍋には外せない白菜だ! ひゅうっ、今日のご飯もおいしそうだなぁ~っ!」
「うん。常夜鍋」
「とこよなべ」
「毎晩食べても飽きないから、常夜鍋」
「ナルホドー」
お分かり……あっ、まだ? ちょっとまだ分からないかな?
それじゃあ、とっておきだ。今晩の話をしようじゃないか。
今晩──つまり、今も俺は無邪気な少年だ。カワイの手料理に胃袋を完全掌握されている俺は、食卓テーブルの椅子に座って心をタップダンスばりに躍らせていた。
「玉子焼きと、野菜の和え物と……おぉっ、ぶり大根! 好きなんだよね、ぶり大根! ありがとう、カワイ!」
「うん。ブリは出世魚だから、おめでたい魚なんだって」
「しゅっせうお」
おかわり──失礼。お分かりいただけただろうか?
そう、そうなんだよ……! カワイが、俺のカワイが……!
俺はテーブルを『バンッ!』と叩き、苦悶の表情を浮かべて叫んだ。それはもう、心から叫んでしまった。
「──カワイの人間界でのトンデモ豆知識やら雑学やら知識やらがとんでもないのだがッ!」
お分かってくれ。カワイがどんどん、悪魔らしからぬ雑学を学びまくっているということ
を。
カワイが猛スピードで人間顔向けの知識を保有していっているという、この状況の嘆かわしさを、だ。
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