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4章【未熟な悪魔の小さな初恋でした(カワイ視点)】
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しおりを挟むスーパーでの買い物は早めに終わらせたけど、お散歩してたら辺りが薄暗くなってきちゃった。
季節は、たぶん初夏ってやつ。サクラはもう散っちゃって、公園とかが少し寂しい。
でも緑はキレイだし、夜が長くなってきた気がする。それはボクにとって嬉しいことだ。
人間は、暗くなると眠くなる。つまり、明るい時間が長ければ眠くなるのも遅くなるはず。つまりつまり、ヒトの起きている時間が増えるってこと。
もちろん、ヒトが寝ていてもいい。ヒトのそばにいて、ヒトを見つめられるならなんだって嬉しい。
でも、話ができるのはもっと嬉しいから。そんなことを考えて、ボクは尻尾を揺らしながら公園を通った。
さすがに、子供はいない。歩いているのも、ボクだけかな。
なんて思っていたら、前から人間の男が歩いてきた。ボクと同じく散歩かな。今日は過ごしやすいから、歩いていても暑くないもんね。気持ちは分かる。
勝手に仲間意識を持って、そのままお互いになにを語るでもなく横を通り過ぎるだけ。お互いがお互い、ただの通行者だ。
──そのはずだったのに。
「こんばんは」
人間は足を止めて、ボクに声をかけてきた。ちょっとビックリ。
だけど、挨拶は人間界で大切なこと。ボクは前から来た人間と同じく足を止めて「うん」と返事をした。
……あれ。なんで、ただ挨拶をするだけなのに足を止めたんだろう。ボクが少ししてから違和感に気付くと同時に、人間は口を開いた。
「ねぇ、坊や」
もしかして──ううん、絶対に。
「オジサン、ちょっと道に迷っちゃってさ。良かったら、案内してくれないかな」
──これが、ヒトの言っていた【変質者】だ。
『なんでも、挨拶をしてから道を訊いてくるんだってさ』
五十代頃……とかは、よく分からない。人間の見た目年齢は、まだ勉強中だから。
でも、ヒトと比べて背は低い。ヒトに比べて太ってるし、変質者で間違いないと思う。
「ごめん。急いでるから──」
「大丈夫だいじょーぶ。ほんと、すぐそこのはずだからさ」
「分かってるなら、自分で頑張ったらいいと思う。それじゃあ──」
「まぁ待って待って。オジサンだけだと道に迷っちゃうからさ? 一緒に来てくれよ」
「人生は困難に打ち勝ってこそだよ。頑張って。じゃあ、ボクはこれで──」
「──いいから! ホラッ、早く案内してくれよ!」
ヒトが言っていた通りだ。本当に、腕──と言うか、手首を掴まれた。
「なぁ、いいだろ? こんなところで騒ぎなんか起こしたくないよな? 坊やは悪魔だし、面倒事を起こすと立場が不利だと思うぞ?」
「そんなのどうでもいい。それに、ここで騒ぎを起こして立場が不利になるのはそっちだと思う。変質者の情報が回ってるって聞いたから、その情報として開示されている特徴が完全に一致してキミが──」
「──ゴチャゴチャうるせぇなッ! いいから早くこっちに来いって言ってるだろッ!」
ボクの手首を掴む手の力が増している。さすがに、少し痛いかも。
相手にするのは面倒くさいし、いっそ。……いっそ、ボクの魔術で塵になる程度の撃退でもしようかな。
──なんて、ボクが思った矢先だった。
「──俺の大事な子に、なにか用?」
ボクの手首から変質者の手が離れると同時に、相手の腕が素早く捻り上げられたのは。
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