未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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4章【未熟な悪魔の小さな初恋でした(カワイ視点)】

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 ゼロタローの発言で、ヒトが作ってくれた料理は没収。ボクはちょっぴり、シュンとしちゃう。

 言われるがまま、ヒトはボクの前に置いてくれたお皿を下げようとする。そこで、ボクはあることに気付いた。


「ヒトの指、傷だらけ。大丈夫?」


 得意じゃなければ慣れてもいない料理で、ヒトはケガをしちゃったんだ。証拠として、ヒトの指には沢山のバンソーコーが貼ってある。

 ヒトはお皿から手を離して、傷だらけの手を反対の手で触った。


「うん、大丈夫だよ。心配させちゃってごめんね?」
「とても心配。強い悪魔は内臓が潰れても数分で治るけど、人間はかすり傷を治すのにも時間がかかるよね?」

「サラッとすごい話を聞いちゃった気がするけど、でも俺、人より頑丈で丈夫だからさ。このくらいの傷、明日には治っちゃうんだよ」
「そう、なんだ?」


 ヒトは優れた個体の人間、なのかな。それとも、人間にとっても【外傷】は悪魔と同じようにすぐ治るものなのかも。どちらにしても、ボクの知らなかった話だ。


「それは知らなかった。人間の再生力も侮れないね」
「あー……。……う、ん。まぁね」


 あれ? 感心したつもりだったけど、嫌味に聞こえたのかな。ヒトの返事が、少し暗い。

 ボクは急いで、弁明しようとした。だけどその前に、ゼロタローが[カワイ君]って、ポンとボクを呼んだ。


[主様の傷に関して負い目を感じる必要はありませんよ。全て、主様の自業自得に他なりませんから。……ですので、そちらのゴミを捨てるのなら、お早めに]
「ゼロ太郎酷い! これは俺たちの合作だよ? ゴミじゃないでしょ!」

[その料理に関与したという事実が私にとって汚名なのです、不名誉なのです。主様の汚名を私に返上しないでください]
「くっ! ウマイことを言われつつ詰られる日がくるなんてっ!」


 二人共、楽しそう。ヤッパリ仲良しなんだ。

 ……おっと。ヒトとゼロタローの仲良しさにホッコリしてる場合じゃないよね。ボクはすぐに、バンソーコーが貼られたヒトの指を触った。


「カワイ? どうかした? ……もしかして、甘えん坊さんかな?」
「甘えるのは、後でさせて。今は、それよりも……」


 すり、と。バンソーコーの下にある傷を刺激しないように気を付けながら、ヒトの指を撫でる。


「ヒトの傷がすぐに治るとしても、でも、痛いのには変わりないでしょう?」
「えっ?」
「傷があるのに、変わりないよ」
「……っ」


 図星を指されたから、なのかな。ヒトは黙って、ボクを見た。

 料理もそうだけど、指を見たらもっと明白。ヒトはヤッパリ、料理が得意じゃないんだ。
 それなのに、作ってくれた。『名誉挽回』って言っていたけど、それでもヒトは【ボクのために】料理を作ってくれたから。


「一生懸命作ってくれて、ありがとう。このご飯は、今までで一番大事に食べるね」
[食べてはいけません、カワイ君]


 いい雰囲気を作った流れでいけるかと思ったけど、ヤッパリ駄目だった。しゅんっ。


「……ありがとう、カワイ。その優しさが、とっても嬉しいよ」


 でも、ヒトは笑ってくれた。だから、それでいいかも。料理を下げられて落ち込んじゃったけど、ヒトの笑顔が見られたから。だからボクは、口角を上げて頷いた。

 ボクの表情筋は少し硬いから、上手に笑えていたかは分からないけど。




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