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4章【未熟な悪魔の小さな初恋でした(カワイ視点)】
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しおりを挟む寝るまで『変質者じゃないやい』とメソメソしていたヒトは、次のお休みの日に。
「──今日はいつものお礼と名誉挽回並びに汚名返上を兼ねて、俺がカワイに手料理を振る舞おうと思う!」
そう言って、両手にジャガイモを持ってポーズを決めていた。
言動が意味することは全く分からないけど、カッコイイしカワイイ。ヒトの魅力に対する賞賛とこの場の雰囲気から、ボクはパチパチと拍手を送った。
ヒトが料理をするなんて、珍しい。少なくとも、ボクは初めて見る。だからてっきり、ヒトは料理ができないと思ってた。
でも、この自信。ヒトは料理が得意なんだ。確か、こういう人間のことを【能ある鷹は爪を隠す】って言うんだっけ。
ヒトにご飯を作れないのは少し寂しいけど、ヒトがこう言うならゼロタローは協力的になってサポートを──。
[──逃げてくださいカワイ君。今すぐ、早く]
「──ゼロ太郎さんや? それはどういう意味だい?」
あれ、おかしいな。ボクに料理を教えてくれるゼロタローとはテンションが違う。具体的に言うと、非協力的だ。
ヒトの料理に対する技術は、とりあえず置いておこう。ボクは先に、ヒトの発言から確認することにした。
「名誉挽回と汚名返上って、なにに対して?」
「俺が変質者なんじゃないか疑惑に対してだよ!」
返事は、即答。なるほど、その話が理由なんだね。……ヒト、ずっと気にしてたんだ。
「俺が変質者じゃなく、純粋にカワイを堪能しているという身の潔白を証明するために、カワイのハートと胃袋をキャッチする料理を作ります!」
[説明の段階で既に変質者レベルが上がったのですが]
「あーあー! 聞こえない、聞こえなーいっ!」
ハートに関してはもうキャッチされてるけど、胃袋は確かにまだ分からない。ヒトとゼロタローのやり取りを聴きつつ、ボクは頷く。
「分かった。今日のお昼ご飯はヒトの手料理だね」
「俺にとっては朝兼昼ご飯とも言う!」
ちなみに、今は午前の十一時。ヒトが寝室から出てきて五分後、とも言う。お昼ご飯を作り始めるのに少し早い気もするけど、朝ご飯が兼用ならなんでもいいよね。
……実はボクが用意した朝ご飯も、あるんだけど。でも、やる気が出ているのに水を差すのは野暮。ご飯があることは黙っておこう。
「それじゃあ早速、レッツクッキング! カワイは気にせず、のんびりしていてね!」
「分かった。乾いた洗濯物を片付けながら応援してるね」
「さては全然のんびりしてくれない感じだなぁ~?」
というわけで、ヒトはキッチンに向かった。ゼロタローはブツブツと[主人の命令に背けない己の設定が恨めしい]って呟いていたけど、どうしたんだろう? ヒトと料理、したくないのかな。……照れ隠し?
それにしても、ヒトの手料理が食べられるんだ。ヒトが作ってくれるならなんでも嬉しいけど、あの自信はもしかすると……。
「すごくすごいご飯ができちゃうかも」
期待は、大きい。だけどボクはいい子じゃないから、心の中で『ボクより上手だったらイヤだな』って考えちゃう。
もしかしてこれが、ボクとゼロタローで仕事をしているって知った時のヒトの気持ちなのかも。アイデンティティの崩壊って、こういうことなのかな。
ボクは期待と不安が入り混じった気持ちで、ヒトの料理が完成するのを待った。
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