未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
88 / 212
4章【未熟な悪魔の小さな初恋でした(カワイ視点)】

13

しおりを挟む



 寝るまで『変質者じゃないやい』とメソメソしていたヒトは、次のお休みの日に。


「──今日はいつものお礼と名誉挽回並びに汚名返上を兼ねて、俺がカワイに手料理を振る舞おうと思う!」


 そう言って、両手にジャガイモを持ってポーズを決めていた。

 言動が意味することは全く分からないけど、カッコイイしカワイイ。ヒトの魅力に対する賞賛とこの場の雰囲気から、ボクはパチパチと拍手を送った。

 ヒトが料理をするなんて、珍しい。少なくとも、ボクは初めて見る。だからてっきり、ヒトは料理ができないと思ってた。

 でも、この自信。ヒトは料理が得意なんだ。確か、こういう人間のことを【能ある鷹は爪を隠す】って言うんだっけ。

 ヒトにご飯を作れないのは少し寂しいけど、ヒトがこう言うならゼロタローは協力的になってサポートを──。


[──逃げてくださいカワイ君。今すぐ、早く]
「──ゼロ太郎さんや? それはどういう意味だい?」


 あれ、おかしいな。ボクに料理を教えてくれるゼロタローとはテンションが違う。具体的に言うと、非協力的だ。

 ヒトの料理に対する技術は、とりあえず置いておこう。ボクは先に、ヒトの発言から確認することにした。


「名誉挽回と汚名返上って、なにに対して?」
「俺が変質者なんじゃないか疑惑に対してだよ!」


 返事は、即答。なるほど、その話が理由なんだね。……ヒト、ずっと気にしてたんだ。


「俺が変質者じゃなく、純粋にカワイを堪能しているという身の潔白を証明するために、カワイのハートと胃袋をキャッチする料理を作ります!」

[説明の段階で既に変質者レベルが上がったのですが]
「あーあー! 聞こえない、聞こえなーいっ!」


 ハートに関してはもうキャッチされてるけど、胃袋は確かにまだ分からない。ヒトとゼロタローのやり取りを聴きつつ、ボクは頷く。


「分かった。今日のお昼ご飯はヒトの手料理だね」
「俺にとっては朝兼昼ご飯とも言う!」


 ちなみに、今は午前の十一時。ヒトが寝室から出てきて五分後、とも言う。お昼ご飯を作り始めるのに少し早い気もするけど、朝ご飯が兼用ならなんでもいいよね。

 ……実はボクが用意した朝ご飯も、あるんだけど。でも、やる気が出ているのに水を差すのは野暮。ご飯があることは黙っておこう。


「それじゃあ早速、レッツクッキング! カワイは気にせず、のんびりしていてね!」

「分かった。乾いた洗濯物を片付けながら応援してるね」
「さては全然のんびりしてくれない感じだなぁ~?」


 というわけで、ヒトはキッチンに向かった。ゼロタローはブツブツと[主人の命令に背けない己の設定が恨めしい]って呟いていたけど、どうしたんだろう? ヒトと料理、したくないのかな。……照れ隠し?

 それにしても、ヒトの手料理が食べられるんだ。ヒトが作ってくれるならなんでも嬉しいけど、あの自信はもしかすると……。


「すごくすごいご飯ができちゃうかも」


 期待は、大きい。だけどボクはいい子じゃないから、心の中で『ボクより上手だったらイヤだな』って考えちゃう。

 もしかしてこれが、ボクとゼロタローで仕事をしているって知った時のヒトの気持ちなのかも。アイデンティティの崩壊って、こういうことなのかな。

 ボクは期待と不安が入り混じった気持ちで、ヒトの料理が完成するのを待った。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...