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4章【未熟な悪魔の小さな初恋でした(カワイ視点)】

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「おかえり、ヒト」
[おかえりなさいませ、主様]
「うん、ただいまぁ~っ」


 靴を脱いだヒトが、いつも使う仕事用のカバンとは別の物を持っている。
 白い箱だ、なんだろう。ボクがそう思ったのに気付いたのか、ヒトはその箱の正体を──。


「カワイ、今朝は洗濯本当にごめんね! お詫びのケーキ買ってきたよ~!」
「わぷっ」


 ──打ち明けると同時に、ボクの体をムギュッと強く抱き締めた。


「ヒト、苦しい」
「俺もだよカワイ! カワイを抱き締めていると胸が高鳴って苦しい!」

「えっ。そ、そうなんだ。……ふーん」
[カワイ君、ツッコミを入れてください]


 そんなこと言われても、嬉しいから丁度いい言葉が出てこない。

 ヒトの言葉が愛玩動物に対する気持ちと同じでも、嬉しいものは嬉しい。その証拠に今、ボクの尻尾は揺れていると思う。


「あの、ヒト。ギュッてしてくれるのは嬉しいけど、晩ご飯の準備が……」
「確かに、ケーキを買ってきても食べないならお詫びにならないもんね! すぐに着替えてくるよ!」


 あっ、離れちゃった。……『晩ご飯』って、言わなければ良かったかな。


「実はお腹ペコペコなんだよねっ。思い出させてくれてありがとう、カワイ」


 ……言うのが正解だったみたい。言って良かった。

 ヒトはケーキの箱を食卓テーブルに置いてから、着替えに向かう。ボクは途中で止めちゃっていた晩ご飯の準備を再開。

 ヒトはすぐに着替えを終えて、リビングに姿を現してくれた。


「カワイという癒しが居るだけで、ここが自分の部屋じゃないみたいだ。はぁ~っ、カワイ最高~っ。好きだよ、カワイ~っ」


 今日のヒトは、とっても上機嫌みたい。手洗いうがいを済ませた後で、ヒトはボクの後ろをピッタリくっついて歩いてる。カワイイ。


「ヒト、食器運んで。あと、冷蔵庫の中にあるビールも」
「合点承知の助! 任せて!」


 誰だろう、ショウチノスケって。それとも、人間界独自の返事かな。まだまだ知識不足みたい。

 料理と食器を運んで、晩ご飯の準備は万端。ボクとヒトは向かい合って、食卓テーブルを囲んだ。


「今日もカワイお手製の料理が食べられるなんて、幸せだなぁっ。いつもありがとう、カワイ。大好きだよっ」


 ……きゅんっ。ヒトの笑顔、カワイイのにカッコイイ。

 ボクは立ち上がって、ヒトが出してくれたビールの缶を手にした。それから、ヒトのコップにビールを注いだ。


「嬉しい。ボクも好きだよ」
「うあッ! ハートに大打撃ッ!」
[カワイ君がいることによってダメージが増えているのでは?]
「癒しだよ!」


 ボクだけじゃなくて、ゼロタローもどことなく嬉しそう。口調は冷たいけど、ゼロタローもヒトが大好きなんだ。


「今日の料理は肉じゃがだね! それと、インゲンの胡麻和え……かな? どっちもおいしそう!」
[そちらの肉じゃがは、豚肉を使用しております]

「おぉっ、おいしそう! 普通の肉じゃががなんの肉を使ってるとか、よく分かってないけど!」
[そうですね。あまり気にせず、召し上がってください]


 大好きなヒトと大好きなゼロタローが、楽しそうにしている。

 ヤッパリ、人間界に来て良かった。ユラユラと尻尾を揺らしながら、ボクも晩ご飯を食べ始めた。




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