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4章【未熟な悪魔の小さな初恋でした(カワイ視点)】
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しおりを挟むヒトが仕事をしている間、ボクもボクの仕事をする。
朝から使った食器と調理器具を洗って、後片付け。その後はキッチンと食卓テーブルを布巾で拭いて……。これで、朝ご飯の片付けは終わり。
それから、洗濯。先ずはヒトの服を寝室から回収しなくちゃ。
「ヒトの、パジャマ。……くんくんっ」
[カワイ君、せめてもう少しコッソリ嗅ごうとする意思をですね]
当たり前だけど、ヒトが着ていた服からは今日もヒトの匂いがする。ボク、家事の中だと洗濯が一番好きかも。
「ヒトの匂い……。すんすんっ」
[あぁ、もう。尻尾がとても嬉しそうに左右へと振れて……]
ハッ。いけない、いけない。このままだと、ヒトが寝ていたベッドにダイブしてゴロゴロして、ヒトが使ってる枕に顔を埋めて、そのまま寝たくなっちゃう。ボクはヒトが脱いだ服を抱き締めたまま、洗濯機に向かった。
洗濯をしている間に、ベランダで干して乾いた服を取り込んで、畳む。洗濯を終えた服からはヒトの匂いがあまりしなくて、柔軟剤の香りの方が圧倒的に優勢。
「ヒトの匂い、あまり残ってない……」
[今度は見るからに尻尾が元気なく下がっていますね]
後でもう一回、寝室でヒトの匂いを嗅がなくちゃ。ご褒美を想像しながら、ボクは畳んだ衣類を片付ける。
それから、小休憩。洗濯機が仕事を終えるまで、ボクはテレビを見る。
……というのが、少し前まで。今のボクは、隙間時間を持て余したりしない。
「洗濯が終わるまで、今日もご指導よろしくお願いします」
[かしこまりました。それでは、主様のノートパソコンを開いてください]
ボクはゼロタローの勧めで、パソコンを使った仕事を始めた。在宅ワーク、って言うんだって。
新しいことを覚えるのは、いつも楽しい。ボクの経験と知識が増えるのは嬉しいし、それが巡り巡ってヒトの役に立つならもっと嬉しいから。
あれ? でも、オハナミの時にボクとゼロタローがパソコンで仕事をしているって言ったら、ヒトは落ち込んでいたような気が……?
[カワイ君、そこに気付いてはいけません]
「わっ、ビックリした」
ゼロタロー、本当に心が読めるんだ。すごく、すごい。
とにかく、ボクがこうして仕事をすればヒトの金銭的負担を減らせるはず。ボクとゼロタローの嗜好品は、こうして自分たちで買えるようにならなくちゃ。
ゼロタローにそう言われたから始めたパソコン業務だけど、ボクはこの作業があまり苦じゃない。
「ヒトはどうして仕事がイヤなんだろう。こんなの、覚えちゃえばなにも大変じゃないのに」
[人間界で働く者は、デリケートなのですよ]
よく分からないけど、ヒトが本当に仕事をイヤがるならボクがヒトを養ってあげなくちゃ。
そのためにも、自分のスキルアップを目指そう。決意を新たに、ボクはパソコンでメールボックスを開いた。
[順調に仕事が集まっていますね]
「ボクとゼロタローに【不可能】なんて言葉はないよ」
[頼もしい言葉ですね。そこまで信頼していただけるのは、人工知能冥利に尽きます]
結束力を高めたところで、ボクは今日もゼロタローにパソコン業務を教わる。
こうして日中は仕事をして、洗濯機がピーッと音を立てたら洗濯物をベランダに干して……。そんな感じで、ボクの午前は終わる。
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