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3.5章【未熟な社畜と未熟な悪魔のお花見です】
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しおりを挟むそんなわけで、裏庭に到着だ。俺はレジャーシートを敷き、カワイはその上にお弁当箱を広げ始める。
レジャーシートの四隅に鞄やら荷物やらを置いて、っと。……よし!
「準備万端だね! お花見のスタートだっ!」
「おぉー」
片手を天に突き上げると、カワイも同じく手を上げた。素直で可愛い。癒しだ。
俺たちはレジャーシートに座り、早速お弁当タイムに洒落込む。……おっと。その前に、用意していたスマホスタンドにスマホ──もとい、ゼロ太郎を立てかけなくては。
角度は当然、桜が見えるように。ゼロ太郎は黙々と電子書籍を読んでいると思うけど、それでもお花見の醍醐味は桜だからね。これで、三人一緒のお花見だ。
「さてと! 準備も終わったし、いざお弁当タイム~っ!」
「うん。ヒトの朝昼ご飯だね」
「寝坊して本当にすみません」
平謝りし、俺はカワイと共にお弁当箱の蓋を開ける。
おぉっ、おぉ~っ! いつもの料理も充分すごくすごいけど、ヤッパリお花見用のお弁当となると内容がさらにすごくすごいぞ!
「唐揚げ、玉子焼き、きんぴらごぼう! お漬物もあるし、まさにお弁当! そして、普段よりも豪華な謎の面々!」
「こっちはピーマンと豚肉の春巻き。こっちは、ブリのてりやき。それと、おにぎりは三角と俵型の二種類だよ。……ちなみに、ブリのてりやきは多めに作ったから、夜ご飯は混ぜご飯にアレンジする予定」
「──なんということでしょうッ! 結婚してくださいッ!」
「──うん、いいよ」
幸せすぎる。本当にいいのだろうか。俺、寝坊したのに。サクッとカワイとの結婚宣言を受領され、もしやこれは夢なのではとすら思ってしまう。
「カワイ、俺の頬をつねってくれないかな」
「デートDV?」
「ちょっ、えッ? 違うよッ? どこで覚えたのそんな言葉ッ!」
心臓がギュワッとなって、冷や汗がブワッと出てくるこの感覚。……うん、夢じゃない! 現実だ!
ならば俺は、カワイとゼロ太郎が丹精込めて作ってくれたお弁当を食べさせていただこう! 意気込んだ俺が両手を合わせると、カワイも続いて両手を合わせた。
「それじゃあ早速だけど、いただきますっ!」
「いただきます」
食前の挨拶をした後、即座にカワイが箸を手渡してくれる。なんて細やかな気配りなのだろう、涙が出そうだ。
まさか、社会人になってお花見をする日が来るとは。しかも、大切な家族と一緒に、だ。こんなに贅沢な休日、本当に俺なんぞが送ってもいいのだろうか。
「ヒト、なにから食べる? オススメは、全部だよ」
……うん。いい、よな。
だって、俺と一緒にこの休日を過ごしてくれている子──カワイが、こんなに楽しそうなんだから。
「じゃあ、先ずは玉子焼きから食べようかな」
「分かった。お皿にオカズ、一個ずつ載せるね」
「どうして『なにから食べる?』って訊いてくれたのか分からない対応だけど、嬉しいからなんでもいっかぁ~っ!」
ヒョイヒョイとお皿にオカズを盛り付けるカワイは、普段と同じ無表情だ。
だけど、尻尾がゆらゆらと左右に揺れている。気が急いているのか、オカズを盛り付ける手の動きも速い。
「はい、ヒト。一生懸命作ったから、沢山食べてほしい」
「言うまでもなく沢山食べるよ! だからカワイも、俺が食べきっちゃう前にいっぱい食べるんだよっ」
「うん、分かった。いっぱい食べる」
……お花見、提案して良かったな。手料理がひとつずつ盛られたお皿を受け取りながら、俺は心からそう思った。
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