未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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3.5章【未熟な社畜と未熟な悪魔のお花見です】

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 そんな会話をして、一ヶ月後。大型連休を迎える直前頃のことだ。


「──ねえ、お花見しよ」
[──そのネタはカワイ君には伝わりませんので、バスケのドリブルに似た踊りはやめてください]


 俺は、ゼロ太郎とカワイをお花見に誘った。
 鋭いツッコミが入り、俺は露骨に拗ねて見せる。


「なんだよう、冷たいなぁ。ゼロ太郎には伝わると思ってこそのネタ振りだったのにさぁ~?」
[いえ、伝わってはいます。伝わってはいるのですが、取り残されたカワイ君が可哀想です]


 当のカワイは、小首を傾げていた。……うん、可愛い! 今日も平和だ!

 すっかり家事を覚えてきたカワイは、朝食を食卓テーブルに並べながら俺を見た。そう、寝癖がピョンと立ったままの俺を。


「オハナミって、なに?」
「桜を見ながらお弁当を食べたり、他愛のない話をしたりすることだよ」
「……サクラ?」


 俺に近付き、カワイは背伸びをして手を伸ばす。寝癖を直そうとしてくれているらしい。とりあえず、しゃがもう。

 俺の説明を聴いて、カワイはまたしても小首を傾げる。


「サクラって、ピンクの花だよね? もう咲いたの?」
「このマンション、裏に大きな桜の木があるでしょ? お弁当持って、レジャーシート敷いてさ? 明日、お花見しようよ」

「知らなかった。サクラ、近くにあったんだ」
「そんなところも可愛い~っ」


 カワイが、困ったように眉尻をほんのりと下げた。どうやら、俺の寝癖は撫でるだけでは直せなかったらしい。申し訳ない。

 気を取り直したのか、カワイの気持ちは正式に俺からのお誘いへと向かう。カワイはコクコクと数回頷き、俺を見上げた。


「したい、オハナミ。ヒトとゼロタローと、オハナミしたい」
「よし、決まりだね! ゼロ太郎、明日の天気は?」
[明日の天気は快晴です。絶好のお花見日和ですね]

「ヤッタ! ……ってことで、カワイ。急かもしれないけど、明日はどうかな?」
「うん、いいよ。嬉しい、楽しみ」


 ということで、決定! 俺たち三人は明日、各々にとって初めてのお花見を──。


「でも、いいの? ヒト、休みの日は部屋でゴロゴロしたいんじゃ……?」


 するつもりが、うぅっ! 普段の怠惰な俺のせいで、カワイに変な気を遣わせてしまったではないか!

 確かに俺は、休みの日の起床時間は正午頃。起きてからはなにをするでもなく、ゴロゴロダラダラ……。普段の俺を知っているカワイの発言は、ごもっともだ。

 だが、そんな俺にだって大切なものはある。


「いいんだよ。たまには家族サービスさせて?」


 カワイも、ゼロ太郎も。俺にとっては、大切な家族なのだから。
 俺の発言を受けて、カワイは目を丸くした。


「カゾク、サービス? ……って、なに?」
[簡単に言いますと、普段は仕事で忙しい人が休日に家族と共に寛いで過ごすことです。家族に尽くすこと、とも言います]

「まぁ【尽くす】なんて立派なことはできないけどさ。カワイが喜ぶことをしたいんだよ」
「それが、家族サービス……」


 そこまで言われて、ようやく。


「うん、分かった。じゃあボクは、張り切ってお弁当を用意するね」
「本当っ? 楽しみだなぁ、ありがとうっ!」


 カワイは憂いなく、お花見の誘いを受けてくれた。
 そうと決まれば、残すは準備のみ。俺は腕を組み、なにができるかを考え始める。


「俺は、そうだなぁ……。今日の帰りにレジャーシートを買って、できることがあるならカワイのお弁当作りを手伝うよ」

「──うん。気持ちだけで大丈夫」
「──戦力外通告早すぎない?」


 さすが、長時間ゼロ太郎と一緒にいるカワイだ。俺への信頼が、色々な意味で厚い。ちょっぴり、悲しくなってしまうほどに……。




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