未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
64 / 212
3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】

22

しおりを挟む



 星空の下、俺たちは夜ご飯に舌鼓を打つ。勿論、俺のスマホを立てかけてゼロ太郎にも同じ景色を見せながら。


「それにしても、カワイもすっかりスマホをマスターしたねぇ」
「うん、ゼロタローのおかげ。ヒトにメッセージは送れるようになった」


 話題は、カワイからのメッセージだ。お酒を飲みながら枝豆をつまんでいると、必然的に思い出したから。

 カワイが飲んでいるのは、オレンジジュースだろうか。しかも、炭酸。カワイは炭酸のシュワシュワに驚きつつ「甘くておいしい」と言っている。……定期配送、しようかな。


「でもまだ、スマホで通話はしたことない」


 ぽそっと呟いたカワイは、カワイ用のスマホを取り出した。


「……ん? カワイ? スマホと俺を交互に見て、どうかした?」

「──ヒト。今からヒトに、電話をかけてもいい?」
「──いいけど、この状況だと電話する必要あるかな」


 カワイは「確かに、肉声の方が嬉しい」と言い、スマホをしまい込んだ。……くっ、サラッと可愛いことを言ってくれるではないか。嬉しくてお酒が進んじゃなぁ、もうもうっ!


「あのね、ヒト。ひとつ、訊いてもいい? スマホとか電話じゃなくて、別のこと」


 おっと。カワイを肴にお酒を飲んでいたら、これまた可愛らしい話題ではないか。


「うん、いいよ。なんでもどうぞ」


 拒否する理由なんて、無し。俺はお酒を飲みながら、カワイに向けて頷く。
 するとカワイは、指先だけ色の違う手をモゾモゾと動かし始めた。


「ヒトは、その。……番候補って、いる?」
「つがいこうほ……」


 恋人って意味、だよね。悪魔の言い方だと【番】になるのか。覚えておこう。

 ……さて、どこまで正直に答えていいものか。あまり馬鹿正直に答えて、カワイに身の危険を感じさせるのは嫌だなぁ……。

 ……よし。ここは、ちょっとだけ誤魔化そう。


「俺の恋愛観はゲームの──」


 言ってから、俺は気付いた。

 ──カワイが、やけに真っ直ぐな目を俺に向けている、と。

 ……嗚呼、そっか。そう、だよね。誤魔化すのは、良くないか。

 気恥ずかしそうに動く手だけじゃ気付けなかったけど、カワイはこの話題に真剣なんだね。
 理由は、分からない。カワイは俺に恋人がいるかどうかを知って、どうしたいのだろう。

 分からない、けど。


「──俺ね、女の子は恋愛対象じゃないんだ」


 カワイが真剣だから、俺も相応の態度を返そう。誤魔化すのはやめて、俺は素直な気持ちを答えた。……まったく、カワイには敵わないなぁ。


「色々あって、女の子──って言うか、子供は作りたくなくてさ。それで『女の子とは結婚するべきじゃないな』って思うようになって、それからまた色々あって、なんだかんだと恋愛対象は男の子になったんだ」
「うん」

「色々とね、拗らせちゃったんだよ。『可能であれば弟属性持ちがいいなぁ』とか、妙なこだわりまで持っちゃってさ。あと、美少年。……勿論、これはただの理想だけどね」
「そうなんだ」


 ちょっと、驚いちゃった。俺としては真面目な返事だけど、カワイからすると控えめに言っても引かれると思ったのに。

 カワイは、いつもと同じように俺の話を聴いてくれている。引いている様子なんてないし、むしろ、とても真剣にさえ見えた。

 そんなカワイを見ていると、なんだか嬉しくなったから──。


「──分かり易く答えると、俺はカワイみたいな子が好きなんだよ」


 俺は思わず、カワイの頬に手を伸ばして。
 そんなことを、言ってしまった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

それはダメだよ秋斗くん![完]

中頭かなり
BL
年下×年上。表紙はhttps://www.pixiv.net/artworks/116042007様からお借りしました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...