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3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
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しおりを挟む着替え終わった頃には、すっかり夕食の準備が終わっていた。
「今日の夕食は、なんだかお酒のおつまみに相応しい面々が揃ってるね」
「うん、それがテーマ」
「なるほどなるほど。……この枝豆は、スーパーの冷凍コーナーに置いてあるやつかな?」
「うん。今日は材料とか調理道具を揃えたから、料理をする時間があまりなかった。だから、冷凍食品にも頼った」
即座に、ゼロ太郎が口を挟む。
[この部屋には最低限の調理器具はありますが、あくまでも【最低限】です。それではカワイ君の料理へ向ける探求心が満たされませんので、勝手ながら]
「あっ、すみません。なんでも調達してください」
それはそうさ。なんと言っても、部屋の主が料理をしないんだからね。
不甲斐ない気持ちになっていると、今度はカワイが話題を戻した。
「人間は、お酒に枝豆がデフォルト装備って聞いた。枝豆を用意すればハズレは無いって聞いたから、用意してみた」
「そうなんだよぉ~っ。俺、枝豆は無限に食べられそう」
「うん、分かる。ボクも枝豆、好き」
ほほぅ? まるでハムスターのようじゃないか。可愛いぞ、百点だ。
お互いに枝豆をつまみ食いしていると、俺はピコンと閃いてしまった。
「そうだ。今日は晴れてるし、ベランダでご飯を食べるのはどうかな?」
だが、言ってから後悔。
「あっ、でも、ベランダってあまり綺麗な場所じゃないか。ごめん、今の話はヤッパリ──」
[──カワイ君が掃除しているので、問題はありませんよ]
「──本当にいつもありがとう、二人共」
生まれた後悔は有能な家族のおかげで爆速回収され、無問題となった。
ということで、レッツお夕飯。食器を持って、俺たちはベランダに向かった。
カララッとベランダへの戸を開けると、すぐにカワイは空を見上げて呟く。
「空、キレイ……」
食器を持って、カワイはベランダに立ち尽くす。
俺はテーブルの代わりになりそうな物をベランダに置き、カワイから食器を受け取った。
「いいよねぇ、晴れの日に見える星」
「うん、いい」
なんだかカワイが嬉しそうだ。思えば、いつもカワイは日中に買い物をするから、こうしてじっくり夜の空を見ることがなかったのかも。
「こんなに喜んでくれるなら、もっと早く誘えば良かったかな」
空を見上げるカワイをそのままに食器を取りにベランダから移動した俺は、思わず呟いた。
[主様の意見に同調するのはいさかか不服ですが、あのように喜ばれては同意せざるを得ないですね]
「前置き部分は聞こえなかったフリをするとして、そうだよねぇ。カワイ、星が好きなんだね」
俺が全ての食事と食器を運び終えると、ようやくカワイは我に返ったらしい。ハッとした様子で、俺を振り返った。
「ごめんなさい、ヒト。運ぶの、全部やらせちゃって……」
「いいんだよ、全然っ。むしろ、これくらいさせてよ」
「……あり、がとう」
カワイが、照れくさそうに小さく微笑む。
そんな笑顔を見せてくれるなら、食器運びくらい朝飯ならぬ晩飯前だよね。カワイの頭をぽふっと撫でて、つられて俺も笑ってしまった。
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