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3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
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しおりを挟むカワイからのメッセージなんて、珍しい。魅力がよく分からない謎スタンプを送ってくれた日以来じゃないか。
いったい、どんな内容だろう? 俺は食事の手を止めて、スマホを見る。
画面に表示された文章は、カワイからの可愛らしいメッセージで──。
『帰りに好きなお酒を買ってきてください』
……なんだこれ? よく分からないぞ。
それと、文面がカワイっぽくない。たぶんだけど、ゼロ太郎に教わりながら打ったんだろうな。
とりあえず『分かりました』と返事をして、っと。
「どういうことだい、ゼロ太郎先生」
[さて、なんのことでしょうか]
しらばっくれる、だと? なんて人間味のある人工知能だ。嫌いじゃない。
しかし、お酒か。カワイの見た目だと、確かにお酒は買えないよね。
……ん? カワイの、見た目……?
「すごく今さら、なんだけどさ。……カワイって、いくつなんだろう」
ピタリと、俺の手は止まってしまった。
今まで気にしたことがなかったけど、思えばカワイの年齢って知らないな。そもそも、悪魔の寿命とか見た目の成長速度って一般的な人間の尺度に当てはめていいものなのか?
ワナワナと震え始めた俺を見て、スマホからゼロ太郎が返事をする。
[本人に確認いたしますか?]
「いっ、いや! いい、やめて!」
純粋な提案だと思うけど、俺は勢いよくゼロ太郎の言葉を拒否した。
これで見た目通りの年齢だとしたら、俺の中にある色々なものが崩壊する! 結果、カワイに嫌われるような展開にだって発展するかもしれない!
仮に、カワイが見た目年齢以上で──むしろ、俺より年上だったら? 駄目だ、それはまた別の意味で俺が耐えられない!
「カワイは可愛い男の子。これでいいじゃないか。ははっ、はははっ。年齢で相手を決めるなんて、それこそ何ハラか分からない話だぞ。うんうん、うんうんうん」
[自分で言い出したくせに、なんなのですか]
とにかく、カワイの実年齢は気にしない! カワイはカワイだ! パクパクとお弁当を食べ進めながら、俺はウンウンと頷く。
「と言うか、ゼロ太郎。カワイにスマホの使い方教えるなら、もっとカワイらしい言葉を送らせてよ。これじゃあ百パーセントのゼロ太郎構文じゃん」
[はい? 教えろと言ったり、教えるなと言ったり……主様は随分と私の扱いが雑ですね]
うっ、確かにそうかも。ちょっと、今の言い方は良くなかったかな。
するとゼロ太郎が、威圧的なオーラを纏い始めた。
[ご?]
「えっ?」
[ごー……ご、め?]
「あっ。ご、ごめんなさい……」
[よろしいです]
くっ、主人としての立場がっ。堪らず、俺は縮こまった。
[まぁ、主様いじりはこのくらいに留めて]
「今ハッキリと聞き捨てならない言葉が聞こえたのだが?」
[とにかく、帰りはカワイ君の指示に従ってください]
「スルーの方向できたか」
しかし、ゼロ太郎の意見には同意だ。真意はなんであれ、カワイからおつかいを頼まれるなんて貴重すぎる。
「部屋でお酒を飲むなんて、いつ振りだろう。会社の集まりで余ったお酒を持ち帰った時以来かな?」
[これを機に常備しても良いかもしれませんね。勿論、常識の範囲内での量を前提としての提案ですが]
「それもそうだね。カワイならきっと、いいおつまみを作ってくれるようになるだろうし」
[無論です。なぜなら、私がいるのですから]
そう考えると、午後からの仕事も頑張れるな。それに、明日の作業も頑張れそうだ。
カワイが持たせてくれたお弁当箱を空にした後、俺はしっかりと食後の挨拶をしてから、午後の作業に戻るのであった。
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