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3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
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しおりを挟むこうして、カワイが料理の勉強を始めて一週間が経った。
ありがたいことに、カワイの家事スキルはメキメキとレベルアップ。なんなら料理をする際はポニーテールにプラスでエプロンを装着してくれるようになったので、お嫁さんレベルもアップしていた。
いつもはゼリー飲料ばかりでエネルギーチャージしていた俺だったが、最近では三食全てカワイとゼロ太郎の合作手料理という、大層贅沢な日々を過ごしている。
ありがたい日々を過ごし、心身ともに健康すぎる気がするくらいだ。元から絶好調だったつもりだが、だとしても好調がすぎる。二人共、本当にありがとう。
さて。そんなカワイだが、家事スキルとはまた別のところも着実にレベルアップしている気がする。
その成果は、例えば、そう……。
「──うぅ、無理だ……。今日は、今日こそは会社を休む……」
俺がこうして、毛布に包まりながらベッドの上でミノムシ化している場合とかにお目見えするのだ。
「ヒト、朝だよ。起きなくていいの?」
「朝、朝か……。……ハッ、そうか! カワイ、俺はとんでもないことに気付いちゃったよ」
「なに?」
床にペタリと座り、カワイは枕に頭を載せる俺と目線を合わせる。
至近距離だと美少年はより美少年なんだなと思いつつ、俺は今しがた得た気付きをカワイに語った。
「俺が『今日は月曜日』って認めてないなら、今日は月曜日じゃない。今日は日曜日、日曜日なんだ。休日、休み、出勤しない、起きなくていい……ふっ、ふふふっ」
毛布に包まりながら、ブツブツと呟く。こんな姿を見たら、ゼロ太郎ならば駄目出しと叱責が飛んでくる。……それか、華麗にスルーされるか。
俺の呟きを受け止めながら、カワイはうんうんと頷いてくれている。相変わらずの無表情だが、こういうのは動作だけで分かるものさ。カワイがメチャメチャ優しい男の子だってことがね。
カワイは一言「そっか」とだけ相槌を打った後、視線をそろっと下に向けつつ、呟いた。
……そう。これこそが、カワイが着々とレベルを上げていく家事以外のスキル。
「──ボクは『今日は月曜日だ』って思うけど、ヒトは違うんだ。……お揃いじゃ、ないんだね」
「──カワイがそう言うなら、今日は月曜日に決まってるよ」
──【俺の扱い】という、特殊スキルだ。
見事に起床を果たした俺は、またしてもカワイの術中にはまっていたと気付く。気付いた時には遅いのだが、しかし悪い気というものがしないから全然問題はない。
……ちなみに、さらに翌日。
「いや、さすがにおかしいって。昨日も働いたのに今日も仕事? 絶対おかしいって。休みでしょ、絶対。今日はさすがに休みでしょ」
今日も今日とて毛布に包まりながらミノムシ化しつつ、俺はブツブツと駄々をこねる。
そんな俺を相手に昨日と同じように目線を合わせてくれていたカワイが、今日はほんのりと瞳を細めた。
「──二日連続でヒトのスーツ姿が見られるの、ボクは嬉しいよ」
「──二日と言わず五日連続で見せてあげるよ」
おかわりいただけるだろうか?
……間違えた。おわかりいただけるだろうか? カワイが、どんどん俺の扱いをうまくなっているという点が。
……なぜかって? 元々、カワイの順応力がバリ高ってこともあると思うけど、決定的な理由は、そうだなぁ……。
もっと大きな要因は、この部屋に搭載されている人工知能が入れ知恵をしているから、かな。ベッドから起き上がった俺は、頭の片隅でそんなことを考えた。
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