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3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
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しおりを挟むそして、翌日。
「カワイ~、ゼロ太郎~。ただーいまっ」
「おかえり、ヒト」
[おかえりなさいませ]
今日の俺も、ゴキゲンだ。なぜなら、今日もカワイがお弁当を用意してくれたのだから。
しかも驚き。昨日までは塩がまぶしてあっただけのおむすびが、レベルアップ。なんと、海苔が巻かれたのだ。すごい、天才だよ。ありがとうございました。
浮かれ気分の俺を出迎えたカワイと共にリビングへ向かうと、カワイがある一点を指したではないか。
「ヒト、コレなに? 玄関の前に置いてあった」
カワイが指を指しているのは、床に置かれた段ボール箱だ。側面に描かれたロゴを見るに十中八九、俺が置き配設定をして注文をした荷物だろう。
「これはね、俺が注文していた物が入っているんだよ」
「注文? なにを?」
「よぉ~しっ。それなら、一緒に開封式を執り行おう~っ」
「うん、執り行う」
ガムテープを剥がし、いそいそと開封を急ぐ。俺の隣で床に座りながら、カワイも箱の中身が開帳されるのを待っている。
中身を見た瞬間、俺は歓喜した。
「ジャジャーン! 水玉と、縦ボーダーと、黒の無地と……。とにかく、色々なデザインのエプロン!」
取り出された箱の中身──エプロンを見て、カワイは小首を傾げる。
「エプロン? ……って、前にヒトと一緒に見た布地?」
「覚えていてくれたんだね! そうだよ~っ」
見覚えのあるデザインが、きっとチラホラあることだろう。カワイは「おぉーっ」とクールながらも感嘆の声を上げて、俺が箱から取り出すエプロンの数々を眺めていた。
「家事をするなら、エプロンは必須だからね~っ! ということで、これはカワイにプレゼント! はい、どうぞっ!」
「ありがとう。……で、いいのかな」
エプロンを手渡されたカワイは戸惑いつつも、しっかりと受け取ってくれる。ふふふ、なんていい子なのだろう。
俺は笑顔のまま、隣に座るカワイを見る。そして、笑顔を絶やすことなく……。
「──さぁ! 今すぐお着替えしてみようか!」
「──えっ」
カワイの薄い肩を、ガシッと両手で掴んだ。
今後、カワイは料理を頑張ると言っていた。ならば保護者として、エプロンを用意するのは当然のこと。
──そして保護者として、エプロンを装着したカワイを目に焼き付けるのも当然のことなのだ!
「さぁ、さぁどうぞッ! それで、ちょ~っとお写真撮らせてねぇ~? 大丈夫だよぉ~? ネットに流したりしないからねぇ~? むしろ、俺は絶対に独り占めしたい!」
「ヒ、ヒト? なんだか、ちょっと怖い……」
「遠慮なくさぁどうぞ! カワイのお着替えは俺の癒し! さぁっ、カワイ! 今すぐお着替えという名のエプロン試着会を始めよう! 今すぐにっ! ハイ、どうぞっ!」
刹那、壁一面に三桁の数字が表示された。
[──通報します]
「──ごめんなさいッ!」
赤文字で110という数字を表示されたが最後、俺は土下座をかますことしかできないではないか。
いやしかし、危ない危ない! 調子に乗って、危うく犯罪者になるところだった! ゼロ太郎に感謝だな、うんうん!
……んんっ? いや別に、エプロン姿へのお着替えに違法性はないのでは? 気付いた時には完全に、エプロン試着会の流れは吹っ飛んでいた。
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