50 / 212
3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】
8
しおりを挟む月君から見事にドン引きされた後も、業務は続行。ダカダカとキーボードを打ち、時間が流れる。
そして、ついに……!
「きた! 待ちに待った昼休憩の時間!」
昼休憩を知らせる時計の音が響くと同時に、俺はキーボードでショートカットキー【画面ロック】を叩いた。
隣で月君が驚いていようが、関係ない。俺はカワイが握ってくれたおむすびを食べるのだ。
「センパイ、嬉しそうッスね」
「へへっ、分かる?」
「むしろこれで分からない相手がいるんなら、目玉を取り出して洗浄してあげたいレベルッスよ」
「えっ、そんなにっ?」
なんだか、ごめんなさい? と、言った方が良いのだろうか。
「オレ、今日はコンビニで朝のうちにお弁当買ってきたんスよ。良かったら昼、ご一緒しても?」
「うん、勿論っ」
ということで、俺と月君は昼食のためにデスクから移動。休憩スペースへ向かった。
その間も、会話は続行だ。
「センパイっていつも不健康そうな昼食だったんで正直心配だったんスけど、カワイ君がお弁当を持たせてくれるなら安心ですねっ」
「えっ、嘘っ? 俺、月君から心配されてたの? 別にお昼を抜いているわけじゃないのに?」
「そりゃ心配もしますよ~。いっつもゼリー飲料ばっかりですし、かと思ったら、時々『何食分なんだ?』って量のお弁当とかパンを食らい始めるし……。健康云々の前に、胃に悪そうだなーって」
「あちゃー。面目ない」
後輩に不必要な心配を抱かせてしまっていたとは。食に頓着がないとはいえ、反省しなくてはいけない。
休憩スペースに到着し、俺たちは開いている席を見つける。二人用のテーブルを見つけたので、俺たちは各々の昼食を用意した。
「さーて、カワイお手製のおむすびとご対面だ~っ」
「あれ? 意外と普通のおにぎり、ッスね」
「まん丸で可愛いよねぇ~っ。食べちゃいたいくらいだよ~っ」
「いや食べ物なんで。……でも正直、悪魔ってもっとヤバい料理をするんだと思ってました」
「ふっふ~ん! スゴイでしょ~?」
「なんでセンパイが自慢げに?」
自慢げにもなるでしょう! うちのカワイが初めて作ったご飯なんだから!
「それでは早速、いただきますっ!」
両手を合わせ、食前の挨拶をしてから、いざ実食! ……の前に、いつの間にか鞄の中に用意されていたウェットティッシュで手を拭く。万全の態勢で食さないとね、失礼に当たるからね。
よし、今度こそ実食! ……おっと、その前に写真を撮っておかないと。これは記念だからね、写真は必須だ。
よしよし、今度こそ実食だ! はてさて、ゼロ太郎に教わりながら作ったカワイのおむすびは、いったいどんな味がするのかなぁ~っ? ウキウキと気持ちを弾ませながら、パクリと一口。
しっかりと咀嚼をし、味わい、嚥下して。俺は、カッと刮目した。
「──あっ、なんだろう。天使の味がする。天使だ、メイドバイ天使だ、天使イン天使だ、天使の味だ」
「──天使を食っているみたいな言い方やめてください……」
満足なんてものじゃない。今まで食べたどのお米よりもおいしい。さすがゼロ太郎とカワイだ、天才すぎる!
俺が感動に打ち震えている中、月君はコンビニ弁当を食べながら小首を傾げた。
「ちなみにセンパイって、どのくらいの頻度でカワイ君を口説いているんですか?」
「くどっ、いているつもりは、ないけど……。うーん」
月君の中で俺がどんなイメージなのか気にはなるけど、そうだなぁ。カワイと過ごした日々を思い返し、ザックリと計算をする。
「──週に三十五回、かな」
「──それ『一日に五回』って回答じゃダメだったんスか?」
いやいや、いやいやいや! 確かにその通りなんだけどさ!
でもその言い方だと、なんとなく週換算より重たい感じがするじゃん! ……なんて俺の訴えは、見事に月君へ届かなかった。
43
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】
貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。
じれじれ風味でコミカル。
9万字前後で完結予定。
↓この作品は下記作品の改稿版です↓
【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994
主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。
その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
狼領主は俺を抱いて眠りたい
明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。
素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件
竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件
あまりにも心地いい春の日。
ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。
治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。
受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。
★不定期:1000字程度の更新。
★他サイトにも掲載しています。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる