未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
46 / 212
3章【未熟な悪魔をレベルアップさせました】

4

しおりを挟む



 とりあえず目についたエプロンを注文すると、時間がかなり経っていたようだ。俺は慌てて、身支度を始める。

 諸々を終えてからスーツに着替え、出勤準備が完了。俺はタッパーを鞄に詰め、さて出勤だと意気込む。

 だがふと、疑問が湧いた。俺は、後ろをついて歩くカワイをクルッと振り返る。


「ところで、今さらだけどこのお米はどこから?」


 って、わざわざ訊くまでもないか。いつも通り、ゼロ太郎が報連相抜きにネットを使って注文を──。


[──カワイ君が近所のスーパーまで買いに行ったのですが、なにか問題でも?]
「──えぇぇッ! カワイ、ついに外出まで習得したのッ?」


 まさかの調達方法! 俺はガガンと衝撃を受けてしまった。

 しかし、答えたゼロ太郎からすると驚く俺の方が衝撃的らしい。顔があればきっと、眉間に皺を刻みながら瞳を細めていることだろう。


[なにを仰っているのですか。外に出ずして、どうゴミをゴミ捨て場まで持って行くのです]
「いやそれはそうなんだけど! えっ、えぇッ?」


 初耳だよ! いや普通に考えたらそうなんだけど、でもでも、えぇっ?

 マンションの敷地内にあるゴミ捨て場に行くのは百歩譲って気に留めないとしても、スーパーは話が違うでしょ! だって、スーパーだよ? 絶対に誰かと関わらなくちゃいけないプレイスじゃん!

 俺の困惑と心配と動揺が伝わったのか、打って変わってゼロ太郎は胸を張っているかのように自信に満ち溢れた声を返す。


[ご安心ください、主様。私のナビとサポートを持ってすれば、近所のスーパーへ向かうことなど造作もないことです]
「うん。ゼロタローの指示は的確で間違いがない。安心と信頼のゼロタローだよ」

「なんだろう、この疎外感……」


 ゼロ太郎とカワイが絆を深めてくれているのは嬉しいけど、ちょっぴり寂しい。確かに俺が会社に行っている間、ゼロ太郎とカワイは二人きりだけども……。


「でも、そっかぁ。カワイ、お外に出て買い物できるようになったんだ」
「うん。ヒトの役に立ちたいから、一生懸命覚えたよ」


 後ろにいるカワイが、身長差として必然とは言え、俺を上目遣いで見つめる。


「だから、褒めてほしい。ご褒美ちょうだい」


 ……。
 …………!


「──疎外感とか思ってごめんねっ! ありがとうっ、ありがとうカワイ~っ!」
「──ヒト、さすがにちょっと苦しい」


 なんていい子なんだ! 俺の嫁最強すぎ!

 ……おっと、忘れてはいけない。俺はカワイをムギュッと抱き締めたまま、顔を上げた。


「ゼロ太郎にも後で電子マネーをチャージしてあげよう! 好きな電子書籍を購入するが良い!」
[幸甚の至りに存じます]


 それにしても、二人は一緒に外出をできるくらいの関係性を築いていたのか。家族が仲良しになってくれるのは嬉しいものだな、ふっふっふ。

 ……そう言えば、カワイと一緒に過ごすようになって二週間後くらいの頃だっけ。俺たちが【あんなやり取り】をしたのは。

 そんなわけで唐突に始まる、あの日の回想。もわん、もわん、もわぁ~んっ。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...