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2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】
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しおりを挟むゼロ太郎の指示を受けながら、カワイが俺を介抱してくれて数十分後。
「はぁ~っ、後は寝るだけだぁ~っ!」
シャワーやら着替えやら……気付けば俺は、就寝準備を全て終えていた。
カワイの手を握りながら寝室に移動し、ベッドの上に寝転がる。するとカワイは、すぐに俺へ毛布を掛けてくれた。優しすぎる、娶りたい。
などと欲望全開な感想を抱いた時、俺はハッと思い出した。
「あ、そうだ! 俺、今日はカワイにあげようと思って色々買ってきたんだった!」
「もしかして、お土産? でもヒト、頭にネクタイ巻いてなかった。じゃあ、違うのかな」
「なんて古典的な飲み会帰りのサラリーマンイメージなんだ……」
やはりカワイの常識は若干ズレている。今はツッコまないけどね。
「ヒトが言ってるのって、玄関に置いてあった袋のこと?」
「うん、そうだよ~」
言われてみると確かに、買ってきたものを玄関にそのまま置いて来ちゃった気がする。気付くと同時に、カワイは取りに行ってくれたらしい。ごめんよ~。
さて、俺がいったいいつ、カワイ用の諸々を買ったのかと言うと……。部長と課長が揃って『水が欲しい』と言ったので、二人を送る前にコンビニに寄ったのだ。
そしてその時、実はこっそり自分の買い物も済ませたのだった。当然、酔っぱらいコンビは俺の所業に気付いていない。
俺が玄関に置いてしまった袋を持ったカワイが、寝室に戻ってくる。それからカワイは、袋の中身を確認し始めた。
「これは……なんだろう。食べ物?」
「そう、食べ物だよ。人間界だと、空気中の魔力が少なくてカワイが体調崩しちゃうかもしれないからさ。とりあえず魔力の代わりとして、カワイ用の食べ物は買ってきたよ」
悪魔は人間と違い、魔力という特殊なエネルギーがあれば食事をしなくても生きていける。
だが逆を言えば、魔力がなければ死んでしまう。人間で言う餓死のような状態になってしまうのだ。
人間界は魔界に比べて、空気中の魔力が少ない。魔界にいる悪魔は空気中の魔力を摂取して生きているので、どうしても人間界だと生きていく上で限界があるのだ。
そこで悪魔は、便利な進化を果たした。人間と同様の食事をすることで、得たエネルギーを魔力に変換するのだ。
なので、人間界に来た悪魔は人間と同じように食事をしていれば体調に影響は起きない。……はずだが、お恥ずかしながらゼリー飲料だけでは心もとないので。
「って言っても、純正悪魔が活動する上で必要な魔力量とか、それをどのくらいの食事で摂取できるのかとか、俺とゼロ太郎はイマイチ分からなくてさ。とりあえず食材の保存期間を優先して、こんな感じのラインナップになっちゃったんだけど……」
カップ麺、魚とか果物の缶詰め、乾パン。悪魔が小食だったときのためにと、保存期間を優先した品々を購入したのだった。
[申し訳ございません、カワイ君。主様以外の方が好む料理のデータが、あまりに少なくて……]
「ゼロ太郎は俺特化型人工知能だからさ~」
[──くっ! その認識は事実だとしても屈辱的ですっ!]
「──いやその反応はおかしくない?」
なにはともあれ、カワイ用の食材は調達完了。玄関に置き忘れたことさえ目を瞑れば、完璧だ。
カワイは袋の中身を眺めながら、言葉を返した。
「ありがとう、ヒト。ゼロタローも、ありがとう」
「いいんだよ~。どういたしまして~」
[お気になさらないでください]
それから、ポツリと。
「──でもボク、今日はもうチューチューしちゃった。だから、これは明日にするね」
「──は? カワイ、今なんて?」
俺の鼓膜とハートを激震させる単語を、付け足したのだった。
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