未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】

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 だが、現実だと言うのならばセクハラまがいのハグは自重しよう。

 ということで、俺は膝枕だけを続行する。頭上からゼロ太郎に[それもセクハラです]と言われた気がするけど、ほろ酔いの俺にはよく分からないや。

 俺はカワイの腿に頭を載せたまま、カワイとの会話を楽しむ。


「あのね、カワイ。この世界には【キャッチボール】っていうコミュニケーション術があるんだよ」
「キャッチボール?」
「ゼロ太郎、参考動画を再生して」
[はあっ、かしこまりました]


 ため息の後、ゼロ太郎は空中に一本の動画を表示した。

 子供と大人がボールを投げ合い、キャッチをする。絵に描いたようなキャッチボールだ。


「キャッチボールはさ、言葉なんてなくても思いが通じる素敵な文化なんだよ。マジで大発見、大発明、尊敬、すごい」

[カワイ君。今のくだりは話し半分で聞き流してください。語弊まみれですので]
「分かった」


 ゼロ太郎から塩い反応を唆されている気もするけど、カワイはうんうんと頷いてくれている。
 それがなんだか嬉しくて、俺はつらつらと言葉を並べてしまう。


「だけどね、大人は自分の気持ちを知ってもらうためには、言葉を遣わなくちゃいけないんだよ。退化だよね、退化。どういうことなんだよぅ、信じられないよぅ……」


 ベソベソ、めそめそ。俺はカワイに膝枕をしてもらいながら、さめざめと泣く。
 そんな俺の頭を、カワイが優しく撫でてくれた。


「よしよし。つまり、ヒトはなにが言いたいの?」
「飲み会で上司と部下の仲を取り持つの疲れた。癒してほしい……」


 誰に強要されたわけじゃないけどさ、率先して自らその役目を担ったけどさ? それでも、気疲れとかするんだよ。俺だって感情を保有する生物なんだからさ。

 カワイは、俺のライフがゼロ間近だと分かってくれたのだろうか。頭を撫でる手がピタリと止まり、それから……。


「──ぎゅっ」
「──えっ、好き……」


 俺の頭を、まるで卵を孵す鳥のように両腕で包み込んでくれた。

 あっ、孵っちゃうよ。孵っちゃうって言うか、返っちゃう。赤ちゃんになっちゃう、母胎回帰しちゃうよぉ~っ。

 すかさず、俺はカワイの体に腕を回す。ゼロ太郎が[そこまでは許可していません、主様。離れてください]と注意をしてくるけど、今の俺は赤ちゃんだからなにも分からない。

 カワイの温もりに抱かれて、数秒。俺は恐る恐る、口を開いた。


「カ、カワイ……! 俺っ、俺……っ!」
「うん。なに、ヒト」


 俺は、俺は……!


「──ごめんなさい。興奮によって、アルコールが猛スピードで体を駆け巡ってきた……。率直に言うと、吐きそうです。トイレに行きたいので、肩を貸してください……」
「──人間って、脆弱だね」


 己の情けなさが申し訳なさすぎて、ただただ純粋に、ごめんなさいだよ。

 カワイの肩を借りつつ、俺はトイレに直行。ゼロ太郎がまたしても頭上から[言い逃れできないほどの無様さですね、主様]と俺を詰ってきた気がしたけど、それどころではないのでスルーしよう。……真に受けたら、泣いてしまいそうだ。




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