未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】

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 心の中でファイティングポーズを取るも、なぜか話題は可笑しな方向に。


「センパイって、結婚願望はないんですか?」

「ん? がんも? 結構がんも、好きだよ?」
「誰もがんもどきの話はしていません」


 月君がもう一度、わざとらしいため息を吐く。


「結婚願望ですよ、結婚願望! そういうの、ないんですか?」

「うん、全く」
「動揺もなく、まさかの即答ッスか」


 だって、無いんだもん。もったいぶる必要ないじゃんか。

 いやでも、カワイを保護してすぐに見た夢は結婚云々だったっけ。俺としては、結婚に興味とか無いつもりなんだけどなぁ。

 俺が見た夢を知らない月君は突然、なにかを哀れむように目を細めたではないか。


「今の回答で、いったい何人の女性が悲しんだでしょうねぇ~?」
「悲しむ? なんで?」
「教えませ~ん」


 つっ、冷たいっ。月君が珍しく冷たいぞっ。

 きっと俺と月君の間には、圧倒的な見解の違いというものがあるのだろう。そう思いたい。断じて、俺が周りからの評価に疎いわけではないと信じたいからだ。

 というわけで、この話題は終わらせるに限る。俺は先ほど女性職員から受け取ったファイルから、一枚の書類を取り出す。


「それよりも、はい。これ、参考にしてみて?」
「参考って、なんのッスか?」

「さっきから月君が作成に難航してる、会議資料。この書類はグラフとかが分かり易いし、月君の文章の癖と似てるから、かなり参考になると思うよ」
「センパイ、愛してます。ずっとそのままのセンパイでいてください」


 う、うぅ~ん……。俺、確かに年下の男が守備範囲だけど、月君はちょっと大きすぎるかな。体とか、筋肉とか、筋肉とか……。


 * * *


「──ということがあったんだけど、俺って実は職場で嫌われてるのかな?」
[──今の会話でなぜそちら側に振り切るのでしょうか]


 昼休憩時間。ゼリー飲料を吸いながら、俺はメンタルサポーターことゼロ太郎に、事の顛末を話していた。

 呆れたような声が返されたが、それでも俺はめげない。チューッとゼリーを吸いながら、どんよりと肩を落とす。


「寿退社を望まれている、とか……?」


 今の時代は男とか女とか、そういうものに対して差別ナシに分け隔てなく接する時代。【寿退社イコール女性】という認識は、最早化石と同じくらい古い認識なのでは?

 と、結婚やらなんやらについて考えていると。俺は、ひとつの天啓を得た。


「ハッ! 今気付いたけど、俺がここまで独身を貫いてきたのはカワイと描く未来のためだったのか!」
[貫こうとして独身でいたわけではなかったと思うのですが]

「確かに俺は浮いた話ひとつもない非モテ社畜だよ! チクショウ!」
[いえ、そこまでは言っておりませんけれども……]


 しかし、月君との会話による【ええ時計してはりますなあ】的な解釈が間違いなのだとしたら、俺に結婚願望がないことと女性が悲しむのと、いったいどんな因果関係が……? 皮肉じゃないのか、なんなんだ?


「いや、そんなことを気にしている場合じゃない! カワイに『帰りが遅くなる』って連絡しなくちゃ! ゼロ太郎、マンションに電話かけて!」
[それは構いませんが、本音はなんですか?]

「──深く傷付いたのでカワイの声が聴きたいです!」
[──清々しいほど素直ですね]


 こんな時こそカワイだ。俺の癒しよ、マイエンジェル!
 俺はゼロ太郎にお願いして、すぐさまカワイが居る自室へと音声通信を繋いだのだった。




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