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2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】
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しおりを挟むカワイを保護して、一週間後。
俺は今までと変わらず、仕事一辺倒。残念ながら土日も軽く休日出勤をこなし、あまりカワイとの時間を取れていない状況だったりした。
対してカワイは、俺の部屋で掃除や洗濯などの家事を率先して実行。ゼロ太郎のサポートもあり、カワイが手を施した部分はまるで引っ越し初日のようにピカピカになった。
そんな一週間を過ごし、俺は……。
「──うわぁあッ! 仕事行きたくないよヤダよぉッ! ずっとカワイとベタベタしながらダラダラするぅッ!」
──俺の体は、完全にカワイがいないと生きていけないほど駄目になっていた。
だってカワイ、優しいんだよ! 俺が『手を繋いで』って言ったら手を繋いでくれるし、意味も目的もないけど『万歳して』って言ったら本当に万歳してくれるんだもん! 可愛くて素直で可愛くて優しくて可愛い!
ゼロ太郎が選んだお洋服も似合ってるし、半ズボンも最高! こんな癒しの塊みたいな子と一緒に過ごしていたら、誰だってこんな駄目な生き物になっちゃうって! だってなってるじゃん、俺が! 実際になってるんだよ、俺はッ!
俺はリビングの床にへたり込み、カワイの体をガシッと抱き締めていた。
「もうお家から出たくないよぉッ! カワイと離れるのヤダよ耐えられないよぉ~ッ!」
「ボクも離れたくないよ。同じだね」
「うわぁあんッ! カワイが可愛い~ッ!」
ほら! 見たっ? 聞いたでしょっ? カワイ優しいんだよ!
ベソベソと泣き出す俺は、カワイに額をすりすりと押し付ける。
「今日は飲み会なんだよ嫌だよ帰りが遅くなるよぉッ! カワイは夜の八時には寝ちゃういい子だから俺が帰ってきても可愛い寝顔しか見られないよヤダよぉッ! でも寝顔は見たい~ッ!」
「ボク、寝なくても生きていけるから就寝時間なんて決まってないよ」
「そう言えばそうだった! いつも俺の帰りを待っていてくれてありがとう~っ!」
カワイに引っ付きながら、駄々をこねるアラサー青年。客観視すると、危険すぎる。
俺はホロホロと涙を流しつつ立ち上がり、冷蔵庫に向かう。いつものゼリー飲料を取るためだ。
「意味が分からないよ、飲み会ってなに? コミュニケーションを否定するわけじゃないけど、食事って大人数でワイワイしながら取る必要なくない? えっ、俺だけ? 俺の考えが間違ってるの?」
俺にはこの、速攻でエネルギーチャージができるゼリーさえあれば充分なのに! すぐに俺は、ゼリーを吸う。
半分くらいの量を吸った後、俺はハッと気付いた。
「いや待てよ? カワイをお膝に乗せて吸うゼリーは確かに最高だね! カワイと二人きりの食事は最高だ! さぁ、カワイ! 俺のお膝においで~っ!」
[──チッ!]
「──人工知能ってそんなに大きな舌打ちできるんだねっ?」
怖い、怖いよ! 今まで静観していたゼロ太郎の感情が、舌打ちひとつに詰め込まれていた気がする!
渋々だが、俺はカワイを膝に乗せるのは諦めた。するとカワイは自分もお腹が空いたのか、冷蔵庫の前に立つ俺に近付いてきたではないか。
「カワイも飲む? 俺が取るよ」
「うん、飲む。……ヒト、このドロドロが好きなの?」
「好きって言うか、手軽でいいなぁって」
カワイにゼリー飲料を渡しつつ、俺は飲み終わった容器をゴミ箱に捨てる。
「だって、すごくない? 咀嚼しなくても、食器を使わなくても、吸うだけで食事になるんだよ?」
[実際は、なりませんけどね]
ゼロ太郎のツッコミ込みで、カワイは「ふぅん」と相槌を打つ。
「ボクは悪魔だから、人間の食事はよく分からない。だけどヒトがこれを飲むだけでも体が平気なら、それでいい」
「えっ? カワイ、それって……」
ゼリー飲料を両手で受け取ったカワイに、俺は一歩近寄る。
それから、ガシッとカワイの肩を掴んだ。
「俺の体を心配してくれてるってことだよね! なんて優しい子なんだカワイは~っ!」
出会って数日の俺を心配してくれるなんて、この子は間違いなくいい子だぞ! 俺は歓喜によって、またしてもボロボロッと涙を溢れさせた。
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