24 / 148
2章【未熟な社畜をギャップ証明しました】
12
しおりを挟むお洋服騒動は秘密裏に処理され、俺は今、カワイと一緒にお寿司をテーブルに並べていた。
「昨日言った通り、今日はカワイとお祝いをしちゃうよ~っ。さぁ、カワイ! 遠慮せず、好きなだけ食べてね!」
「分かった。ありがとう、ヒト。ゼロタローも、デマエを呼んでくれてありがとう」
[いえ。【カワイ君のため】ですからね。どういたしまして]
「うぐぐっ!」
ゼロ太郎、ちょっと根に持ってるな? 仕方ないじゃないか、死活問題なんだから。
俺とゼロ太郎のやり取りをなにも知らないカワイは、テーブルに並んだツヤツヤのお寿司たちを見て、喜んでいた。……ように、見える。
悪魔の尻尾が揺れているのは、犬と同じで【喜んでいる表れ】って解釈でいいのかな。でも、ちょっぴりデリケートな部位の気もするから訊きにくいぞ。
「ところで、部屋でただ留守番してるのも暇だったでしょ? することが掃除だけっていうのも、つまんなかったよね。ごめんね、部屋になにも面白い物がなくて」
それよりも、今後の話だ。俺はカワイにお皿を用意しながら、話題を振った。
素直なカワイのことだから、てっきり肯定されるかと思ったのだが。
「ううん、充実した一日だったよ。掃除、楽しかった」
お皿を受け取りながら、カワイは首を横に振った。
「明日は換気扇の掃除と、寝室の掃除をする予定。……だよね、ゼロタロー」
[その通りでございます。可能ならば洗濯機と洗剤の使い方もお教えし、主様に代わって家事を学んでいただければと思っています]
なんという展望だ。ありがたいけど、申し訳ないぞ。
カワイはお寿司と一緒についてきたおしぼりで手を拭いた後、お寿司を選びながらさらに付け足す。
「リビングの掃除もするつもりだし、窓とかも掃除する。この部屋のことはボクに任せて、ヒトはお仕事ムリしないでね」
「カワイ……」
あれ、おかしいな。まだお寿司を食べていないはずなのに、鼻の奥がツンとするぞ。ワサビか? ワサビだよな?
「ありがとう、カワイ。正直、本当にメチャメチャ助かるよ」
仕事を言い訳にするつもりじゃないけど、なかなか家事って手が回らないんだよなぁ。まさに、渡りに船。カワイには本気で申し訳ないけど、でも、ありがたい。
両手を合わせて、夜ご飯とカワイに感謝を。……さて、俺もカワイに続いてお寿司を食べようかな。
カワイは初手でタコのお寿司を口に運び、その弾力に驚きながらもおいしそうに咀嚼をしている。ただお寿司を食べているだけなのに、可愛いなぁ。
なんて、頭の中をふわふわタイムにしていると──。
「──ヒトと指切りした、あの部屋は? 掃除しなくても大丈夫?」
「──んぐっふ!」
危ない! お寿司が喉に詰まるところだった! 俺は慌てて、コップに注いだ水道水を飲んだ。
ゴクゴクとお寿司並びに水を飲み、俺はダラダラと冷や汗をかきながら、カワイから目を逸らす。
「あー、いやっ、あの部屋、あの部屋ね~っ? あはっ、あはは~っ。あの部屋はね、俺が自分でどうにかするからっ。だから、カワイはな~んにも、ま~ったく気にしなくていいんだよ~?」
「そうなんだ。分かった、指切り続行だね」
「うんうんっ、続行続行!」
よ、よし! なんとか誤魔化せたぞ!
ゼロ太郎が心の中で『苦しいですよ、主様』と言っているような気もするけど、気のせいだ!
33
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる