未熟な悪魔を保護しました

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

文字の大きさ
上 下
10 / 212
1章【未熟な社畜と未熟な悪魔は出会いました】

9

しおりを挟む



 悪魔君の宝石みたいな瞳が、キョトンと丸くなった。

 それから悪魔君は、小首を傾げる。……うん。この子、動作がいちいち可愛いぞ。ヤッパリ【カワイ】で間違いなしだ。


「カワイ? ボクの名前は、カワイ?」
「うん、どうかな。いい名前でしょう?」
[悪魔様、正直に仰って良いのですよ。【名前】は、生きていく上でとても大切な要素で──]

「──気に入った。ボクの名前はカワイ」
[──嘘でしょう?]


 二対一で、俺の勝ち。……と言うわけで、悪魔君の名前は【カワイ】に決定した。めでたいなぁ。

 すると、悪魔君もといカワイが、宙を見上げて小首を傾げた。


「そう言えば、どうしてキミの名前はゼロタローなの?」
[申し訳ありません。主様以外の問いにはお答えできません]


 すぐに、カワイが俺を見る。困っている、気がした。あまり表情が変わっていないから、本当に『そんな気がする』くらいの認識だけど。

 俺は後頭部を掻いた後、ゼロ太郎へ向けるように視線を上げた。


「あー、いいよいいよ。この子とも、俺にするのと同じ感じで普通に会話して」
[それは『彼のことも主人として認識しろ』というご命令でしょうか?]

「いや主人は俺だけど、うーん。……友人、かな? それとも、家族? いや、同居人……。とにかく、ゼロ太郎にとっての主は俺だけど、彼は俺と対等って感じ」
[承知いたしました]


 この絶妙なニュアンスも理解できるのだから、やはりゼロ太郎は優秀だ。

 カワイを【日常会話をしても良し】と設定し直したのか、すぐにゼロ太郎はカワイの質問に答えた。


[私の品番が【0Tar00】だからです]
「それで、ゼロタローなんだ。ふーん」


 納得するカワイを見て、俺はムンと胸を張る。


「ゼロ太郎、いい名前でしょう?」
[そのまますぎではありませんか。ネーミングセンス皆無ですよ]

「こんな感じで、ゼロ太郎はちょっと照れ屋な奴なんだ」
[どの辺りがそう聞こえましたか?]


 とりあえず名乗り合ったところで、俺はカワイに向けて手を伸ばした。


「改めまして、俺は陽斗。人間界に来てまだ分からないことばかりだと思うけど、俺とゼロ太郎がサポートするから安心してね。それと、これからよろしくね、カワイ」


 伸ばされた手を見て、カワイは瞬きをするだけ。すぐに[握手をする場面です]とゼロ太郎から説明を受けたカワイは、コクリと縦に頷いた。

 俺が伸ばした手を、カワイは両手でギュッと握る。それから、カワイは顔を上げて俺を見て──。


「──よろしく、ヒト」
「──まさかの呼び捨て、だとッ?」


 驚きの呼称で、俺と挨拶を交わした。

 えっ、マジ? 『ご主人様』でも『兄さん』でもないのは想定通りとは言え、敬称もなにもなく、呼び捨て?

 これは、出会った今だからこそ呼び方の指定をすべきか? 個人的には『陽斗お兄ちゃん』と呼ばれたい!

 ……だが、しかし。


「──悪くない! むしろ、アリ!」


 美少年君に呼び捨てされるというのも、悪くない! むしろ、ありがとうございます!

 カワイの手を握っていない方の腕でガッツポーズをすると、案の定ゼロ太郎が[通報すべきでしょうか]とぼやいたが。俺もカワイも、そこはスルーすることにした。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
【イケメン庶民✕引っ込み思案の美貌御曹司】 貞操観念最低のノンケが、気弱でオタクのスパダリに落とされる社会人BLです。 じれじれ風味でコミカル。 9万字前後で完結予定。 ↓この作品は下記作品の改稿版です↓ 【その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました】 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/33887994 主な改稿点は、コミカル度をあげたことと生田の視点に固定したこと、そしてキャラの受攻です。 その他に新キャラを二人出したこと、エピソードや展開をいじりました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹
BL
王都から遠く離れた辺境の地に、狼様と呼ばれる城主がいた。狼のように鋭い目つきの怖い顔で、他人が近寄ろう者なら威嚇する怖い人なのだそうだ。実際、街に買い物に来る城に仕える騎士や使用人達が「とても厳しく怖い方だ」とよく話している。そんな城主といろんな場所で出会い、ついには、なぜか城へ連れていかれる主人公のリオ。リオは一人で旅をしているのだが、それには複雑な理由があるようで…。 素敵な表紙は前作に引き続き、えか様に描いて頂いております。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

拾った駄犬が最高にスパダリ狼だった件

竜也りく
BL
旧題:拾った駄犬が最高にスパダリだった件 あまりにも心地いい春の日。 ちょっと足をのばして湖まで採取に出かけた薬師のラスクは、そこで深手を負った真っ黒ワンコを見つけてしまう。 治療しようと近づいたらめちゃくちゃ威嚇されたのに、ピンチの時にはしっかり助けてくれた真っ黒ワンコは、なぜか家までついてきて…。 受けの前ではついついワンコになってしまう狼獣人と、お人好しな薬師のお話です。 ★不定期:1000字程度の更新。 ★他サイトにも掲載しています。

皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ
BL
テオクウィントス帝国では、 アルファ・べータ・オメガ全階層の女性のみが感染する奇病が蔓延。 特効薬も見つからないまま、 国中の女性が死滅する異常事態に陥った。 未婚の皇帝アルベルトも、皇太子となる世継ぎがいない。 にも関わらず、 子供が産めないオメガの少年に恋をした。

エリートアルファの旦那様は孤独なオメガを手放さない

小鳥遊ゆう
BL
両親を亡くした楓を施設から救ってくれたのは大企業の御曹司・桔梗だった。 出会った時からいつまでも優しい桔梗の事を好きになってしまった楓だが報われない恋だと諦めている。 「せめて僕がαだったら……Ωだったら……。もう少しあなたに近づけたでしょうか」 「使用人としてでいいからここに居たい……」 楓の十八の誕生日の夜、前から体調の悪かった楓の部屋を桔梗が訪れるとそこには発情(ヒート)を起こした楓の姿が。 「やはり君は、私の運命だ」そう呟く桔梗。 スパダリ御曹司αの桔梗×βからΩに変わってしまった天涯孤独の楓が紡ぐ身分差恋愛です。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...