BL短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【先輩は綺麗でいながら】 *

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 図書館へ向かう途中。
 上機嫌そうに歩いている浅水先輩の後ろ姿を、俺は恨めしそうに睨み付けた。


「嫌いです、先輩なんか大嫌いです……っ」
「ハイハイ。オレは大好きだよ」


 アスリートの精力というものは、いったいどうなっているのか。水泳部の練習以外に、あれだけ俺を犯したくせに……足取りが、軽い。
 機嫌は良さそうだし、それはなにより。……だけど。


「こっちはあちこちが痛いので、もう少しゆっくり歩いてほしいです……っ」


 大好きな図書館に行くのを断念して、ひたすら横になっていたい気分だ。そのくらい、俺の方は疲れている。
 睨まれても、浅水先輩にとってはどこ吹く風。軽やかな足取りで、図書館を目指す。


「お前だって、何回もイッただろ?」
「怒りますよ……っ!」
「不思議と、オレにはもう怒っているように見えるのだけど……」


 浅水先輩は歩を緩め、俺の隣に立つ。


「悪かったよ。あまりにも可愛かったから、歯止めが効かなかった」
「っ!」


 手を握ろうとしてきた浅水先輩をかわして、俺は俯く。


「だからって……そんな顔で、笑わなくたって……っ」


 いつもは、口元を緩めるくらいの小さな笑みしか浮かべないくせに。

 ──今の笑みは、違う。

 目尻を下げて、愛おしそうに俺を見下ろしている浅水先輩が。……どうしても、直視できない。


「本当に、浅水先輩はずるいです……っ」


 プールで泳ぐ先輩は、どんな物語の主人公よりも……綺麗だと思う。
 でも、それ以上に……。

 ──先輩が俺だけに向ける笑顔は、どんな物語の主人公よりも。

 ──素敵で、カッコいいのだ。





【先輩は綺麗でいながら】 了




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