BL短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【家族以上】 *

6 *

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 シチは驚いたのか、マヌケな声を出した。


「好きな子に触ってるんだ。当然だろ」
「すき、な……こ……っ」


 自分のことを言われているんだと気付き、シチが俯く。

 ――イマイチ、シチの恥ずかしがるポイントが分からない。

 ――が、これはこれで可愛いから、いいか。

 暫く視線を泳がせていたシチだったが、なにかを決心したらしい。

 先程まで俺の頭にしがみついていた右手を、のそのそと動かし始めたのだ。


「シチ?」


 その手は俺の勃ち上がった逸物を、浴衣の上から撫でている。


「おっきい……」
「それはどうも」
「おっきい、うれしい?」
「褒め言葉だろ」


 シチはイマイチよく分かっていなさそうだが、俺が喜んでいるのが嬉しいらしく。

 俺を見つめて、口元を緩めた。


「おじさんの、おっきい」


 俺が喜ぶと思って、シチがもう一度、呟く。

 シチの手は、浴衣の上から俺の逸物を撫でたままだ。

 ――駄目だ、可愛すぎる。


「シチ」


 名前を呼び、俺を見上げているシチにキスをした。

 シチはいつもと変わらない、どこかボーッとした目で、俺を見上げている。


「挿れたいんだが、いいか?」


 数回、まばたきをした後。

 俺の言っていることを理解したシチが……こくりと、頷いた。


「ん」


 ――これには、照れないのか。

 やはりシチの照れるポイントが分からない。

 シチは俺の逸物から手を離し、俺を見つめる。


「きょうは、どんなたいい?」
「【体位】なんて言葉、どこで覚えたんだ?」
「おとうさんの、えっちなほん」


 ――聞きたくなかった。

 おそらく、官能小説のことを言っているのだろう。

 勉強家なシチのことだ。意味をしっかり調べて、わざわざ覚えたに違いない。

 それよりも……シチは自分自身が、官能小説を読んだことを告白することも、恥ずかしくないらしい。

 シチは、み空色の瞳を真っ直ぐ俺に向けている。

 これからセックスをする相手を見ているとは思えない、澄んだ瞳だ。


「その本は、どんな体位だった?」


 俺の質問に、シチは困ったような顔をした。


「うしろ……よん、なんとか」


 どうやら、漢字が読めなかったらしい。

 後ろと四……なんのことかと思考を巡らせていると、シチが俺の膝から降りた。

 ――すると突然、その場で四つん這いになりだす。


「シチ?」
「こう」


 手の平と膝を畳につけたまま、シチが俺を振り返る。

 それは、バックの体勢だ。

 ――【後輩位】と【四つん這い】か?

 シチの体勢を見て、先程の言葉に合点がいく。


「結構乗り気だな」
「……ん」


 官能小説に書いてあった体勢をすぐに実践するということは、俺とのセックスにシチが乗り気だということだろう。

 俺の指摘に、シチは小さく頷く。


「おじさん、きて……っ?」


 ――『乗り気』と言うよりも……『待ちきれない』といった様子だ。

 シチは俺を振り返ったまま、ジッと見つめている。


「浴衣、自分で捲れるか?」


 挑発的な俺の言葉にも、シチは素直に頷く。


「ん」


 翠緑の浴衣を自分で捲り、シチは恥ずかしがった様子も見せず。

 俺に、尻を向けた。




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