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【住み込みアシスタントはデッサンモデル】 *
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しおりを挟む先輩の、長い指が。
大きな手のひらが、僕に触れる。
先輩からしたら、今の僕はただのデッサン人形のようなものかもしれない。
……けど。
――僕は、そうとは受け取れない。
(先輩の手、大きい……っ)
変な意味なんてないのに、触れられた箇所が過敏に反応してしまう。
「先輩……そのっ、えっと」
「紐が必要か」
僕の戸惑いはお構いなしに……先輩は、先輩の頭の中にある構図をどんどん僕に当てはめていく。
「ま、待ってください! あの、僕――」
「シャツでいいか」
「話を聞い――ちょっ、先輩っ!」
先輩が僕の腕を掴んだまま覆いかぶさっていて、ただでさえ胸が苦しいくらい、ドキドキしているのに。
――先輩は突然、僕の腕から手を離して。
――服を、脱ぎだした。
もっと痩せこけているかと思っていたけれど、僕の平坦な体とは全く違う。
そこそこに引き締まっていて、男らしい上半身。
一瞬だけ見とれてしまったが、僕は慌てて目を逸らす。
「な、何で、脱いで……っ!」
僕の問い掛けに、先輩はあっけらかんと答えた。
「お前の腕を縛る為だが」
「縛る……?」
先輩は自分の脱いだシャツを、僕の両手首に近付ける。
(まさか……!)
先輩は脱いだシャツで、僕の頭上に両手首を固定させた。
「膝を合わせて……そうだな、足はこう」
先輩の手が、今度は僕の足を掴む。
上半身は寝そべらせたまま、膝を立てている状況。
しかも、両手首は頭上で固定されている。
(恥ずかしい……っ)
まるで、先輩に拘束されているみたいだ。
……いや、先輩からしたらデッサンの為の行為だけど、実際は先輩に拘束されているんだから、間違いじゃない。
思わず僕は、赤面する。
「表情は……いいな、それがいい」
納得したのか、先輩がまた僕をスマホで撮った。
こんな恥ずかしいポーズを、好きな人に撮られるなんて……想像すら、していなかったのに。
――何故か、妙に体が熱くなってくる。
「もう少し、着崩した方がいいか」
僕の慌ただしい気持ちとは、対照的に。
冷静に独り言を呟いている、上半身裸の先輩を……僕は、直視できない。
――そのせいで、僕は油断してしまっていた。
「……っ! や、やだ、先輩っ!」
――突然。
――先輩の指が僕のズボンに、触れてきたのだ。
「少し下げるぞ」
ベルトを外され、チャックを下げられる。
……そんなことをされて、冷静になれるわけがない。
(手が、近い……っ)
触れられるはずがないのは、分かってる。
それでも、僕の股間の近くに先輩の手があるというこの現状が、落ち着かない。
「上も少し捲っていいか?」
訊いてくるくせに、先輩は僕の答えを待たず勝手にシャツを捲る。
「……っ」
先輩の、冷たい指が。
僕の肌に、直接……触れた。
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