ネクタイで絞めて

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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第10話【告白】

後編

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 頷く真駒を見た椎葉はわざとらしく、深い溜め息を吐いてみせた。


「はぁ~……伝わってないとは思っていたけど、まさかここまで……」
「な……何が、でしょうか……っ?」
「初めて君と取引した時……その後も、ずっと言ってるよね?」


 真駒の頭には、疑問符が浮かんでいる。椎葉が何に対して呆れているのか、本気で分かっていないからだ。
 椎葉は真駒の頬に手を添え、相変わらず呆れたような表情を浮かべながら、諭すように呟いた。


「僕は、君が好きだよって。いい加減、分かって欲しいんだけど」


 椎葉の告白に、真駒は目を丸くしたまま……頷く。


「泣きが――」
「『泣き顔が好きなんですよね』とか言ったら、ここで犯すから」
「っ!」


 真駒は慌てて口を閉ざし、ジッと椎葉の顔を見上げた。
 目は口程に物を言うとはまさにこのことで、真駒は視線で『違うんですか?』と椎葉に訴えている。

 椎葉の眉間に皺が寄せられ、不快そうな表情で見つめ返された。


「君こそ……僕の首がいいって言っておきながら、物足りなかったんでしょ?」
「え――」
「昨日……首を掻いてたのは、そういうことなんじゃないの?」


 そこでやっと、真駒は昨晩振るわれた暴行の理由に気付く。

 ――あれは、嫉妬だったのだ。

 そんな些細なことが、嬉しくて堪らない。ソワソワと身をよじる真駒を、椎葉が怪訝そうに見下ろしている。
 真駒は顔を上げて、眉を寄せたまま自身を見下ろしている椎葉を見つめた。


「き、昨日のは……イライラ、して……」
「僕と本坂さんが、付き合ってるって聞いたから?」
「はい…………あっ! い、いいえ……っ!」


 慌てて否定する真駒を、椎葉が満足そうに見つめる。真駒は気恥ずかしさから、椎葉の後ろにある個室の鍵に手を伸ばした。


「し、仕事、戻りましょう……っ」
「待って」


 鍵に向かって伸ばした手が、椎葉に掴まれる。
 椎葉は真駒の手を掴んだまま、優しい笑みを浮かべた。


「返事……まだ、聴いてないんだけど?」


 優しくて穏やかな笑みだけれど、真駒のことを逃がすつもりはないらしい。有無を言わせぬ迫力が、その笑みには含まれていた。

 真駒は顔を真っ赤にして、何とか個室から出ようと身をよじるも、椎葉は手を離さない。
 往生際の悪い真駒は、何も言わずに椎葉を見上げた。


(課長の顔……確かに、イケメン……かも)


 今更そんなことに気付いた真駒は、口を開く。


「す……っ」
「『す』?」


 その後、真駒が呟いた言葉を聴いて……椎葉は、肩を揺らして笑った。

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