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第2話【性癖】
前編
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真っ黒で、目にかかる程伸びた前髪に、襟足を覆い隠す後ろ髪。
肌の色は白く、不健康そうで貧弱な体。目の下にはクマがあり、輝きの無い瞳が不気味な印象を与える。
そんな真駒が、自身の性癖に初めて気付いたのは……小学生の頃だった。
初めて違和感を抱いたのは、ある刑事ドラマのワンシーンを見た時。そのシーンは、刑事ドラマだったら珍しくもない、絞殺のシーンだ。
真駒はそのシーンを見た時、体が熱くなったのを……今でもハッキリと憶えている。
――何故なら……精通もしていなかった真駒が、初めて勃起したのは……そのシーンを見た時だったからだ。……忘れられる筈が、なかった。
その日は、自分の身に何が起こったのか分からなかった真駒だが……数日して、やっと自分が【絞殺シーンに性的興奮を覚えたのだ】と気付き、驚愕する。
しかし、真駒には分からないことがもう一つあった。
――自分は【どちら側】なのか……という点だ。
真駒は、絞殺シーン……演技ではあるけれど、人が人の首を絞めている映像を見て、興奮した。けれど、首を絞める行為に対して興奮したのか、首を絞められることに対して興奮したのか……その判断が付かなかったのだ。
幼い真駒は、その疑問を払拭する為に、自身の首を絞めてみたことがあった。
結果は、痛くて苦しくて頭が熱くなっただけ。何の解決にもならなかった。
子供ではあったけれど【人の首を絞めるのはいけないこと】だという認識を持っていた真駒は、自身の性癖を忘れようと努力をしてみる。
――けれど、どうしても忘れられなかった。
そんなある日の……リビングで、無防備に昼寝をしていた父親を見つけた真駒は……恐ろしいことを考えてしまう。
――父親の首を絞めて、興奮するかしないか……その方法で、自身の性癖を暴こうとしたのだ。
首を絞める側でも絞められる側でも……結局自分は変だと分かっていた真駒は、頭の片隅で考えていた。せめて、絞める側ではありませんように……と。
――けれど、現実は非情だった。
父親の首元に、手を伸ばした瞬間……真駒は、確信してしまったのだ。
――自分は、首を絞める行為に対して興奮するのだと。
その日から、真駒の受難が始まった。
肌の色は白く、不健康そうで貧弱な体。目の下にはクマがあり、輝きの無い瞳が不気味な印象を与える。
そんな真駒が、自身の性癖に初めて気付いたのは……小学生の頃だった。
初めて違和感を抱いたのは、ある刑事ドラマのワンシーンを見た時。そのシーンは、刑事ドラマだったら珍しくもない、絞殺のシーンだ。
真駒はそのシーンを見た時、体が熱くなったのを……今でもハッキリと憶えている。
――何故なら……精通もしていなかった真駒が、初めて勃起したのは……そのシーンを見た時だったからだ。……忘れられる筈が、なかった。
その日は、自分の身に何が起こったのか分からなかった真駒だが……数日して、やっと自分が【絞殺シーンに性的興奮を覚えたのだ】と気付き、驚愕する。
しかし、真駒には分からないことがもう一つあった。
――自分は【どちら側】なのか……という点だ。
真駒は、絞殺シーン……演技ではあるけれど、人が人の首を絞めている映像を見て、興奮した。けれど、首を絞める行為に対して興奮したのか、首を絞められることに対して興奮したのか……その判断が付かなかったのだ。
幼い真駒は、その疑問を払拭する為に、自身の首を絞めてみたことがあった。
結果は、痛くて苦しくて頭が熱くなっただけ。何の解決にもならなかった。
子供ではあったけれど【人の首を絞めるのはいけないこと】だという認識を持っていた真駒は、自身の性癖を忘れようと努力をしてみる。
――けれど、どうしても忘れられなかった。
そんなある日の……リビングで、無防備に昼寝をしていた父親を見つけた真駒は……恐ろしいことを考えてしまう。
――父親の首を絞めて、興奮するかしないか……その方法で、自身の性癖を暴こうとしたのだ。
首を絞める側でも絞められる側でも……結局自分は変だと分かっていた真駒は、頭の片隅で考えていた。せめて、絞める側ではありませんように……と。
――けれど、現実は非情だった。
父親の首元に、手を伸ばした瞬間……真駒は、確信してしまったのだ。
――自分は、首を絞める行為に対して興奮するのだと。
その日から、真駒の受難が始まった。
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