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【残念イケメンVS残念イケメン(仮)?!】
1話【我之くんはキレイ?】
しおりを挟む学園で人気を二分する小野賀と我之の朝は、騒々しい。
「──オイッ! 我之はいるかッ!」
大きな音を立てて教室の扉が開くと同時に姿を現したのは、言うまでもない。小野賀だ。
クラスの違う我之のもとに、小野賀は毎朝やって来る。これは我之と同じクラスに在籍する生徒にとっては日常茶飯事だった。
勢い良く教室の扉を開けた小野賀を、教室にいる生徒は総出で振り返る。
……ただ、一人を除いて。
「やぁ、小野賀。今日も随分と騒々しいね?」
「ようッ、我之。今日も随分とスカしてるじゃねェか?」
ズカズカと近付いて来る小野賀を見ず、我之はクラスの女子と談笑を続行しようとする。
──が。我之の前に、小野賀が立った。
「お前、この校内新聞はなんだッ!」
『バンッ!』と大きな音を立てながら、小野賀は我之の机に一枚の新聞を叩きつける。
そこに書いてあるのは──。
「──『カッコ良すぎる女子高生、我之白華! その素顔に迫る!』……って、なんだコレはァアッ!」
数日前、我之が新聞部から取材を受けた記事だった。
小野賀と我之はよく、新聞部から取材を受ける。そして、その取材対象が自分ではなく我之だった時に小野賀は毎回、こうして突っかかってくるのだ。
……余談だが、自分が取材対象だった場合は自慢しに来る。つまりどっちにしろ、小野賀は我之のもとにやって来るのだ。
「この学校で一番カッコいいのは俺様に決まっているだろうッ! 童話の王子様も裸足で逃げ出すカッコ良さだからなァッ!」
「あのね、小野賀。いつも言っているけれど、それを決めるのはキミじゃないよ?」
「ウルサイッ! カッコいい俺様が言っているんだから、真実だろうッ!」
「王子様は王子様でも、そういうのは【独裁国家】って言うんだよ、小野賀」
初めからヒートアップしている小野賀に対し、我之はどこまでもクール且つ冷静に対応する。
ちなみに、もう一度言おう。この光景は、日常茶飯事だ。これだけ小野賀がギャンギャンと騒いでいても、クラスの誰一人として驚いていないのが証拠である。
小野賀は新聞を回収した後、人差し指をビシッと立てて、我之を指す。
「オイッ、我之ッ! お前はそろそろ女らしく【カッコいい】ではなく【キレイ】と称賛されろッ! お前がキレイなのはこの俺様が大手を振って認めてやるからッ!」
「そうかい? それはどうも。格好いいキミに言われるのなら光栄だね」
「ぐぬぬッ! 毎度毎度、涼しい顔をして……ッ!」
「そうかな? 私は表情豊かな女だと思うけどね」
新聞を強く握り締め、小野賀は我之から顔を背けた。
「俺様は教室に戻るッ! ……我之ッ! 次の新聞を楽しみにしていろッ!」
「分かった、楽しみにしているよ」
「ライバル相手に手を振るなバカ者がッ!」
「でも振り返してくれるよね、小野賀はいつもさ」
嵐のように現れ、嵐のように去っていく。それが、小野賀という男だ。
──そしてこの後、我之がどうなるのか。それも、このクラスにとっては日常的な風景だった。
小野賀が去った後。我之は綺麗な笑みを浮かべたまま、ゆっくりと両手で顔を覆い始める。
……そして。
「──いっ、いきなり『綺麗』って言うなよっ! 小野賀のばかぁあっ!」
耳まで真っ赤になりながら、我之は手のひらに向かって叫んだ。
──そう。我之白華は、小野賀壱馬に絶賛片想い中なのであった!
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