短編集[作:ヘタノヨ コヅキ]

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照

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【巨乳な彼女がキライですッ!】

オマケSS【打ち疲れたこの鼓動は無力で儚いもの】 上

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 友貝さんはあれから毎日、昼休みになると……。


「──ねぇ、今田君」


 屋上前階段へ、現れるようになった。


「──刺激的なオカズ、欲しい?」


 そんな魅惑的なセリフを吐きながら、友貝さんは隣に座る僕を見ている。


「しっ、刺激的な……オカ、ズ……ッ?」


 友達いない歴イコール年齢イコール童貞な僕は、巨乳で美少女な友貝さんからの提案に、目玉を剥きかけた。

 彼女はクスリと笑った後、大きな瞳で僕を見つめる。
 そして……。


「うん。……お弁当の」

「──主語の重要性ッ!」
「──えっ?」


 今日も今日とて、僕相手にド天然発言を炸裂していた。

 彼女──友貝さんはこの学校で、どうしてもやりたいことがあったらしい。
 それは、鐘塔の頂上に辿り着くこと。そしてそこで、願いを叫ぶということだ。

 どうやら昔からうちの高校には、鐘塔の頂上で叫んだ願いはなんでも叶うという伝説? が、あったらしくて。……まぁ『本当の友達がほしい』と叫んだ彼女の夢が、叶ったのかは分からないけど。


「激辛コロッケを作ってみたの。食べて、くれる……かな? ……あっ。辛いのとか、平気?」
「いや、まぁ……特別得意ってワケじゃないですけど、どうしても食べられないってほど苦手でもないと言いますか……」
「辛いの好きなんだねっ? 良かったぁ……っ」
「うぅん相変わらず会話が成立しないなぁ!」


 とまぁ、こんな感じで。
 友貝さんは毎日、僕とお昼ご飯を一緒にしている。
 そこから推察するに……たぶん、この学校では友達ができていないんだろう。

 誰が撒いた噂か知らないけど、願いを叫んだら叶う~なんて。ヤッパリあの噂は迷信だったに違いない。
 だと言うのに、当の本人は笑顔なんだから困ったものだ。……いや、そもそも僕がいちいち気にしてあげてるのも変な話──。


「──じゃあ、今田君。……はい、あーんっ」
「──ぎぇッ!」


 願いが叶っていないことを気にしていないどころか、彼女は貞操観念というものすら持ち合わせていないらしい!

 いや、いやいやいや! さっきまでその箸でご飯食べてましたよね? つまりこれって間接キスですけど? そっちはどうか知らないけど、僕はキスすらしたことない完全なる童貞なんですが! 間接キス? それってつまりファーストキスってことですよね、アンダースタンッ?

 と心の中で叫んでも、彼女には当然聞こえていないし、伝わらない。


「今田君?」


 片目だけを覗かせながら、彼女は小首を傾げている。チクショウ、美少女め!


「えっと。……はい、今田君。あーん」
「~ッ!」


 僕に声が届いていないとでも勘違いしたのか、彼女はもう一回同じことを言う。
 だからこそ、僕は──。


「──いい加減ッ! 正体を現したらどうですかッ!」


 ──我慢の限界だった。

 友貝さんはコロッケを箸でつまんだまま、キョトンとしている。


「えっ? し、正体って……私の?」
「えぇ、そうです! いい加減正体を隠すのは止めてください!」
「な、なんのこと? 話が見えないよ?」


 だって、こんなのどう考えてもおかしいじゃないか。

 僕は、友達がいない。今後もできるとは思えないし、わざわざ必死になって作ろうとも思っていないような、つまんない男だ。

 対する彼女は、誰もが胸キュン必至な超絶美少女。オマケに巨乳。
 そんな女の子が、僕みたいな万年童貞確約男に進んで関わってくるなんて。そんなの、裏の顔があるに違いない。

 ……そう。彼女は、きっと……! 




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