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【巨乳な彼女がキライですッ!】
7話【今日は……風が騒がしいな】
しおりを挟む僕が待つ鐘塔入り口に向かって、駆け寄ってくる影が二人。
奥にいる一人は、担任の先生だ。怒るとメチャクチャ怖いし、なんなら普段から顔も怖い。だけど愛妻家らしい。チクショウ、リア充爆発しろ。
手前にいる一人は……ヤッパリ、友貝藍さんだ。大きな胸がブルンブルンと揺れて、それはもう見ているだけで『走り辛そうだなぁ』とか思ってしまう。思わず、ガン見だ。
「──今田君っ!」
彼女を扉の中に入れて、鍵をかける。少ししてからドンドンと扉を叩く音が聞こえてきたけれど、今はそんなことにかまけている場合じゃない!
「上がってくださいッ!」
「で、でも──」
「正直僕は、恵まれた人間の気持ちなんて分かりませんッ! ただ自己紹介しただけでチヤホヤされたりする奴の気持ちなんか、分かるはずがないッ!」
彼女の片目が、大きく開かれる。つまり『ビックリしてる』だ。
だけど今は『どうしてここにいるのか』とか『ここは僕が食い止める』とか言う時間は無い。
──だって僕は、彼女に怒っているんだから。
──それと、同時に……。
僕はスマホを取り出し、彼女に見せつけるようかかげた。
「【魔女っ子ラブリーメロメロちゃん】とか【現代でモテモテだった僕が異世界転生したら更にモテた】の主人公は、それはムカつくくらい恵まれてたし、モテてたッ!」
「魔女──……い、今田君? いったい、なにを──」
「だけどッ!」
スマホの画面に表示しているのは、アニメの閲覧履歴だ。【魔女っ子ラブリーメロメロちゃん】と【現代でモテモテだった僕が異世界転生したら更にモテた】のサムネ画像ともいう。
この作品はふたつとも、なぜかひたすらモテまくる主人公が紆余曲折の末ハッピーエンドを迎えるという……あっさり説明すると、そんな内容。実にチープ。普段なら絶対見ない。
だけど僕は、見た。
──だからこそ僕は、彼女に対しての怒りと。……彼女に対して、罪悪感と共に謝罪したい。そう、思ったんだ。
「みんな、ちゃんと努力してたッ! みんな、同じ人間だったんだよッ!」
人気者だからって、誰しもが簡単にハッピーエンドを掴めない。紆余曲折が、ちゃんとあった。
──外見だけでチヤホヤされたって、それが友貝さんのハッピーエンドというわけじゃないと。……僕はこのアニメを見て、気付けたんだ。
「あぁッ、もうッ! なにが言いたいのか全然まとまらないけど、とにかく今は走れッ! メロスみたいにとにかくガムシャラに走れぇえッ!」
「……っ」
「全裸にだけはなるんじゃないぞッ、このッ、おっぱい痴女ォオオッ!」
妙に感極まったみたいな顔をして、友貝さんが走り出す。鐘塔の頂上──叫ぶと願いが叶うその場所を目掛けて、真っ直ぐに。
扉の向こうから、先生の怒号が聞こえた。
「その声は……今田だなッ! お前ッ、こんな時間にこんな場所でなにやってるんだッ!」
「ボタン、弾け飛びそうだな」
「本当になにをやってるんだッ!」
上下に揺れる脂肪の塊が、内側からワイシャツのボタンを弾き飛ばしそうだけれど。それでも彼女は、駆け上がる。そんな姿を見上げて、僕は思わず呟いた。
──それと同時に、先生によって扉が開けられてしまう。
「今田お前──お前……なんで、鼻血なんか出してるんだ?」
先生の言葉に、返事ができない。
……彼女が本気で全裸になったらどうしよう。今の僕には、それしか考えられなかったから。
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