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【幼馴染みは恋愛がヘタ!】
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しおりを挟む玲から告げられた提案に、姫毬は目を丸くする。
まさか、玲からそんなことを提案されるとは。姫毬が驚くのには、きちんとした根拠があった。
「──言っても、いいの? れーくん、わたしと付き合ってることはみんなに内緒にしたいんじゃないの?」
なぜ、鈍い姫毬が【告白】というものに【大きな勇気が必要】と知っているのか。ソースは、玲だ。
玲からの告白を受けて、姫毬は初めて【告白の尊さ】を知った。きっと、相手が玲ではなかったのなら……姫毬は一生、気付けなかっただろう。
しかし、玲は姫毬との関係を公言したがらない。
「そりゃ、ウザい質問責めに遭うのは御免蒙るからな。クラスメイトとかに絶対なんか言われるし、面倒くせぇじゃん、そういうの」
そもそも今に始まった話ではなく、姫毬は男子に人気だ。人懐っこくて、警戒心がなくて、付き合い易くて……なにより、可愛い。
ただでさえ【幼馴染み】と言うだけで男友達から姫毬のことを訊かれるというのに、その上【恋人同士】などと言ってみろ。即日、お祭り騒ぎだ。
面倒くさいことは、断固拒否。ゆえに、玲は姫毬と交際を始めても周りには打ち明けなかった。
そうした玲の『詮索されるのが面倒くさい』という気持ちを、姫毬は知っている。だからこそ『打ち明けろ』と言ってきた玲に、姫毬は驚いたのだ。
姫毬が驚く理由を、当然ながら玲は知っている。気まずさから、玲はふいっと姫毬から顔を背けた。
「けど、俺のワガママはどうでもいいんだよ。姫毬がおかしな男にちょっかいかけられる方が、俺は断然ヤだし」
「れーくん……」
面倒事は大嫌いだが、自分本位な我が儘で姫毬を嫌な目に遭わせる方がもっと不快。玲の主張は、そういうことだ。
同級生の男は、玲と姫毬の仲の良さを間近で見ている。おかげさまで無謀にも告白をする輩はいなかったのだが、まさか上級生からアタックをされるとは。自分の彼女ながら、恐ろしいスペックだと驚愕してしまう。
隣で、姫毬が静かにしている。いつもは元気で騒がしい姫毬の態度に落ち着かず、玲はペラペラと言葉を続けた。
「っつぅか、マジでムカつくなそのキャプテン。告るなら自分で姫毬を呼べっつの。【キャプテン】って肩書きは飾りかよ、根性ナシが。今度バスケ部の助っ人に呼ばれたら徹底的に叩きのめしてやる」
男女差別の意味合いはないが、それでもキャプテンが取った行動はあまりにも男らしくない。どれだけピュアでウブな理由があろうと、大事な姫毬が騙された事実は残っている。
ムスッとした顔の玲を見て、姫毬は目を丸くした。……だが、すぐに。
「……ぷっ。あははっ! れーくん、すっごい自信過剰さんだね? 相手はバスケ部のキャプテンさんだよ? 帰宅部のれーくんが勝てるわけないよぉ~っ」
「オマエは俺とソイツ、どっちの味方なんだよ。断然、俺だろうが。だったら、つべこべ言わすに俺を応援しろっつの。そしたら、俺の勝ちは確定だろ」
「あいたっ」
ピシッと、デコピンを一発。姫毬は額を両手で押さえながら、デコピンをお見舞いしてきた玲に向かって顔を上げて──。
「──彼女に応援されて負けるようなダッサイ男がいるかっつの」
──微笑む玲を見て、堪らず頬を赤らめてしまった。
「……れーくんって、時々すっごくキザだよね」
「おぉ? なんだって? 今『デコピンがもう一発欲しいです』って言ったのか?」
「えぇっ、どんな聞き間違いっ? 言ってないよぉ~っ!」
デコピンの装填を始めた玲は、姫毬の顔が赤くなっていると当然ながら気付いている。
それでも気付いていないフリをしたのは、実にシンプルな理由。……指摘したらどうせ、照れくさい空気になるからだ。
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