3 / 68
【幼馴染みは恋愛がヘタ!】
2
しおりを挟む生徒玄関に向かって再度、二人は歩き出す。
「もしかして、心配してくれたのっ? わたしが悩んでるって思って、だからわたしを隣の教室まで探しに来てくれたのっ?」
「あーっ、言うんじゃなかった。なんで目ん玉キラキラさせんだよ、ヤな性格だな」
丸くなっていた瞳が、今度はキラキラと輝く。完全に【喜】と言いたげな輝きだ。
玲の分かりづらい優しさに感動している姫毬から、玲はぷいっと顔を背ける。
「まっ、放課後になるまでの間で元気になったならいいわ。それならそれで、サッサと帰ろうぜ」
メッセージを受け取ってから今の今まで心配していたのが、実に馬鹿馬鹿しい。すっかりいつも通りに見える姫毬を半ば置いて行くような速度で、玲は歩き出す。
こちとら、帰宅部。好き好んで学校に長居するなんて、もってのほか。そうした心情のもとでスタスタと歩く玲を、姫毬は慌てて追いかけて……。
「──待って、れーくん!」
「──おわッ!」
追いつくと同時に姫毬は、玲の腕をガシッと両腕でホールドした。
グンと後ろに引かれた玲は、予想外の引力にバランスを崩しかける。玲は急いで姫毬を振り返り、眉を寄せた。
「オマエなぁ、いきなり腕を引っ張るなって。転ぶところだっただろうが」
しかしすぐに、玲の表情は【呆れ】から【驚き】に変わる。
「相談、あるの。わたし至上、四天王レベルの相談」
なんとも、深刻そうな規模。俯いた姫毬の頭部を見ながら、玲は再度、眉を寄せた。
「……ちなみに、残りのみっつは?」
「あっ、まだないよ。これから増える予定だから」
「信憑性のねぇ格付けだな」
やはり、姫毬は姫毬だ。玲は姫毬の頭から視線を外す。
「じゃあ、早く移動するぞ。歩きながら話せるならそれでもいいけど」
「いつもの公園で話したい、かな」
「あっそ。ならヤッパリ、サッサと移動に限るな」
玲の態度を受けて、だろうか。姫毬が、心なしかシュンとしている。
いつもの能天気で天然で、おバカ丸出しな言動も困ると言えば困るのだが。……こうして元気のない姫毬の方が、玲としては困りものだ。
「公園に行くなら、近くのコンビニでなにか買うか?」
「っ! うんっ! お菓子食べたいっ、チョコが食べたいっ!」
「あいよ。買ってやるから元気出せよ」
顔を上げた姫毬は、すっかり笑顔に戻っている。明るいその笑みを見て、つられたかのように玲はふっと小さく笑った。
……笑った、のだが。
「……ところで、姫毬さんや」
「なんでしょう、れーくんさんや」
「──腕、そろそろ放していただけませんかね」
強引に両腕でホールドしてきたものだから、当たっているのだ。なにが、というのは察してほしい。玲だって、年頃の男の子なのだから。
状況に気付いたのか、姫毬は玲の腕を慌ててパッと放した。
「あっ、ごめんねっ! そうだよね、歩きづらいもんね」
「や、そうじゃないけど。じゃあ、そういうことで──」
「──並んで歩くなら腕じゃなくて手を掴まないとねっ」
「──なんで引っ付く前提なんだよ放せッ!」
繋がれかけた手を、今度は玲がペイッと振り払う。姫毬は当然、ガガーンとショックを受けていた。なんとも間抜けな姫毬を見て、玲は堪らず思う。
……本当に【相談したい四天王レベルの悩み】なんてあるのだろうか、と。
20
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる