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【幼馴染みは恋愛がヘタ!】
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しおりを挟む※短編集 表紙イラストの二人です。
放課後。
ガラリと、森渕玲は教室の扉を開けた。
「姫毬いるか?」
「あっ、れーくん──ぴゃっ!」
お目当ての人物は、予想通りあっさりと発見。長いツインテールを揺らす幼馴染み──千嶋姫毬だ。
姫毬は玲を振り返るや否や、短い悲鳴を零す。名前を呼ばれて振り返ったと同時に、玲が頭にチョップを入れたからだ。
「『あっ、れーくん』じゃねぇよ。オマエが『今日は一緒に帰ろう』って言ってきたんだろうが」
「そうだった! ごめん、忘れ──てないっ! 忘れてないよっ、だからつむじをグリグリするのはやめてぇ~っ!」
「おうおう、偉くなったなぁ姫毬? 俺に指図するのか? んん~?」
「『指図』じゃなくて『お願い』だよぉ~っ!」
確かに今日の昼休み、姫毬は玲のスマホに『今日は一緒に帰りましょう!』とメッセージを入れていた。
しかし姫毬はそのことを忘れかけていたらしく、自分の教室ではなく友達の教室でお喋りをしていた……という顛末だ。涙目になりながら頭を押さえている今の姫毬は、玲からすると自業自得な状況である。
キャンキャンと言い争う二人を見て、姫毬の友人である女生徒が苦笑した。
「二人って幼稚園からの幼馴染みだっけ? ほんっと、仲良しだよねぇ?」
「うんっ、仲良しだよっ! ねっ、れーくんっ?」
「人との約束を忘れるような奴と『仲良し』って一括りにされるのは不服です」
「れーくんはツンデレくんだからなぁ──って、いたたっ、痛いっ! 髪の毛を引っ張らないでぇ~っ!」
「引っ張り易いこの二つ結びが悪い」
姫毬のツインテールから手を放し、玲は教室から持ってきた姫毬のスクールバッグを持ち主に手渡す。
受け取ると、姫毬は今までの仕打ちを忘れたかのように笑みを浮かべた。
「わざわざ持って来てくれたのっ? ありがとうっ、れーくんっ!」
「はいはい。いいから、サッサと帰るぞ。ちんたらしてると置いて行くからな、アホ姫毬」
「あっ! やだやだっ、待ってよぉ~っ。……それじゃあ、また明日っ」
「うん、ばいば~い」
教室からそそくさと退出する玲を追いかけるべく、姫毬は友達に手を振り、小走りで廊下に出た。
ずんずん進む玲になんとか並んだ姫毬は、難しい顔で前を向く玲を見上げる。
「ねぇ、れーくん。なんか今日、機嫌悪くない?」
「オマエそれ、本気で言ってる?」
「ふふんっ! このわたしが嘘を言うとでも?」
「言えねぇな、バカだから」
隣で姫毬が「ひどい!」と泣くも、そこはスルー。玲は階段を降り、生徒玄関を目指す。
「オマエさ、昼に自分で送ったメッセージ忘れたのかよ」
「『一緒に帰ろう』ってメッセージでしょ? モチロン憶えてるよっ!」
「そうだけど、そうじゃなくて」
階段の踊り場で一度、静止。続いて姫毬も、動きを止めた。
大きな瞳を不思議そうに丸めている姫毬を見て、玲はわざとらしくため息を吐く。
「──『大事な相談がある』って言ってただろうが、バカ姫毬」
どうして、玲がここまで姫毬を急かすのか。たかが『一緒に下校』という約束にしては強引すぎる、その理由。
告げられた言葉に、姫毬は困った様子で眉尻を下げて、苦笑した。
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