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17話 中高大小
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Nakamitsu Taishi「高文展の締切が近いのでしばらく返事遅れます」
レモン「がんば👍🏼」
朝4時に送ったラインは3時間経っても既読にならなかった。
「てか、なんで毎日ラインするの?」
朝7時30分
機械科の教室にはレオと淳の2人だけ。レオは一番後ろの廊下側の自分の席に座り、淳は、彼の隣前にある窓を開けて腰掛けている。
淳は普通科だが、機械科の教室に遊びに来ている。淳はいつもはこんな早く学校に来ないが、用事があって今日はレオと一緒に家を出た。
「な~んか癖になるんだよなぁ、Taishiくん」
「何の話してるの?」
「すっごい、どーでもいいこと。昨日は架空の英単語でしりとりした」
エルビバス、スパインリス、スカインロイ、イーグルアウト…ありそうでない英単語を交互に送信する。お互い隙間時間を使って、1時間~3時間に1回ほどのやり取りだ。
淳は「一生終わんないじゃん」と笑い、レオは「あっちが無理やり、ンつけて終わらせちゃった」と言った。
淳は片腕を伸ばして、もう片手で口を押さえてあくびをした。
「あ~眠。こんな学校早く来たのはじめて」
「朝の教室で1人でボーとしたり、音楽聴いたり、動画編集すると、めちゃ捗るから好き。鳩田もやればいいのに」
「音楽って…。藤井風のやば。しか聴いてないんでしょ?」
「うん。もう2年はそれしか繰り返し聴いてない」
「何なんやろ、その性格…執念深い…?」
「違うやろ?好きなものに一途なんだよ俺」
あーもう限界、寝る、と言って、淳は椅子を並べて横になった。自分の教室で寝ろよ、とレオは言ったが、もうすでね彼は寝てしまった。
レオはスマホで今日撮影した写真を見返していた。
朝4時42分
校門の外で朝焼けを背景にした淳の後ろ姿。
2人並んで撮った横顔は、淳がカメラ目線で笑ってる。
ブレザーを脱いでくるくると頭の上で回す淳。ブレザーを投げてジャンプしてるレオ。
朝5時35分、青空が広がり空の端っこが少しオレンジ色になっている。校庭ではしゃいでる2人の写真。
まだ校門は開いてないのに、どうやって校庭に入ったのか。
グラウンドで寝転ぶ淳を、上から撮るレオの影。
朝7時10分
教室で黒板に、おはよ~☀と書く2人。
椅子に座って足を組んでるレオ。
窓から外を眺める淳の後ろ姿。
レオはスマホ画面を消し、机にうつ伏せになった。
(良い写真撮れた。高文展これでいいな。さすがに4時起きは眠い…。)
昨日、校庭で見た見た夕日があまりにも美しかったので、思いついて撮った朝焼けの朝の学校。
眠そうな淳を叩き起こしてシャワーを浴びてスキンケアをして髪を整えて。
短時間でいろんなタスクをこなした。
教室からは2人の寝息が聞こえた。
朝8時20分
「もしもし、作業服あったよ。教室まで?やだよ恥ずかし~!あれ、たーくんいる、寝坊?うん、わかった、たーくんに持っていかせる。またねー」
母はスマホを下ろし、淹れたばかりのコーヒーを持ってテーブルに向かった。
「何で起こしてくれなかったん??!」
ブレザーを羽織りながら大翔が階段をドタバタ降りてくる。
「今日、午後から仕事だから朝はパパに任せて、今まで寝てた~」
コーヒーをフーフーしながら飲み、テレビをつけて、スマホを触った。
「オカン時間あるなら車で送ってくれん?あと10分で授業始まるっっ」
「いいけど、車で20分はかかるし遅刻確定ねえ」
「高校では無遅刻にしたかったのに…もう間に合わないならゆっくり用意するかあ…」
大翔は高文展に向けて描き進めている張りキャンバスの絵を透明なゴミ袋に入れた。
「遅刻ついでに、千鶴が教室に作業服届けてって。玄関じゃ間に合わないから教室までだって。2限に使うって~」
母が顎をクイっとした先には、ソファーの上にベージュの巾着袋があった。
「えぇ?やだ!オカンが行ってよ!」
「私?もっと嫌に決まってるでしょ」
8時50分
大翔は機械科の廊下を恐る恐る歩いていた。授業している生徒が、先生が、こちらをチラッと見る視線が痛い。
彼は右手に巾着袋、左脇にはビニール袋に入った張りキャンバスをかかえ、背中にはリュックをしたまま、機械科の2年の教室を通り過ぎた。
F20号の張りキャンバスは大翔の上半身を隠せるほどの大きさで、気軽に持ち運びするサイズではない。
しかし彼は家でも学校の休み時間でも描かないと間に合わないほど高文展の締切に追われている。
本当は荷物を先に自分の教室に置きたいのだが、遅刻した上に「ちょっと機械科までいってきます」と先生に言う勇気はない。
休み時間に機械科まで行く時間もない。
職員室は先生がいなかった。
機械科の職員室はどこにあるか分からん。
(そして1年の教室が…ない…)
階段を上がってすぐの角を曲がって見つけた教室は、生徒と先生の後ろ姿が見えた。全開に開いた後ろのドアから、生徒が1人が顔をひょこっと出した。
白い板には3-A、と書かれている。
(あれ…これ、3年の教室…)
心臓は安定したリズムを忘れ、不定期に大きく膨らみ、小さく縮むんだ。背中全面にジワッと冷たい汗が少し出た。
廊下側の一番後ろに座っている、淡い茶髪の男子生徒が、椅子を後ろに傾けてこちらを見ている。
曇空色のジャケットのボタンを全部あけ、学校指定の淡い水色のシャツを一番上まで止める。ネクタイは首元までしっかり閉めている。
青晴高のネクタイとズボンは明るい水色のチェック柄。水色が蛍光色くらい明るすぎて、まるでコスプレの制服のようなチープな色だ。
大翔をはじめ、たいていの生徒は、スラックスの明るさがやたら目立って上手く着こなせない。しかし目が合った男は顔がいいからか、体型がダビデ像のように美しいからか。上手く着こなして、とても似合っていた。
彼のために作られた制服、と言ったほうが納得できるくらいだ。
黒いくるぶし丈の靴下に、青いサンダル。スラックスから見える細くて筋張った足首も白くて、水色の生地に負けないくらい輝いていた。
青サンダルにはLeoと小さく書かれている。
(八王子レオ!!)
初めてみた、制服をちゃんと着ている彼。見た目からは分からないなが、この腹黒い生き物め。
自分の手を汚さずに人を陥れる生き物と再び会うのは、一緒に小道を歩いた日以来だった。
ハトハチ界隈で自分を炎上させた張本人と、またこうして会ってしまうとは。
八王子レオは鳩田淳と協力して、まず軽く炎上ジャブ。
そしてショーコのブイブイブログと手を組んで、みぞおち深めの炎上パンチ。
大翔のメンタルを見事なまでに打ち砕いた。
しかし、今の大翔は違う。初めて絵が売れた、それも3枚も売れた、6万円もの売上を出せた。自信をつけるには大きすぎるくらいの金額だ。
そして八王子レオと距離が近くなると、体と心に激しい異変が起きる理由も分かった。
自分がハトハチを推しているからだ。
炎上させられめちゃくちゃにされたのに、2人のことを推してしまうとは不思議だが、勝手に体が心が脳が反応するのだから仕方ない。
(逃げる…逃げる…俺は逃げる…)
心の中でつぶやいて後退りした。
レオはニコッと笑い、軽やかに後ろのドアから出てきた。先生は何をやってるんだ、早くこいつを注意して教室に戻してくれ!
おじいちゃん先生は黒板にカリカリと数字を書いている。
角を曲がって階段まで追いやられてしまった。教室からもらどこからもここは見えないし、人の声も聞こえてこない。
レオは小声で大翔の耳に「何してんの?」と聞いた。
囁かれた耳がぞわぞわする。振動が鼓膜を震わせているだけなのに。大翔は眉をひそめ、顔からは冷や汗が出そうだった。
(今日もいい匂いする…)
そう思うとまたお腹から首元にかけて、キューッと絞られて、脳からホワホワした成分が滲み出る感覚になった。
「妹の忘れ物届けたいんですけど、1年の教室わかんなくて…」
「ここ機械科。普通科はないよ」
「や、千鶴は機械科です」
「え??機械科初の女って千鶴ちゃんなの???年下に興味ないからスルーしてた、まじか、びっくり」
(年下に興味ないんだ)
「1年の機械科は階段降りて右だよ」
(普通に教えてくれるんだ)
ありがとうございます、と一礼して、大翔は急いで階段に体を向けた。この空間に2人きりはまずい。
パシッ
巾着袋を持った方の手首を掴まれた。
「ちょ、まだ待ってよ」
「ま、…待ちます、待ちますから…手を…」
大翔の顔は青ざめていた。頼むから気軽に触らないでくれ、と切実に思った。
レオは手を離して「そのでっかいの何?絵?」と目配せをした。
(あぁ、これか…こんなでかいの気になるよね、普通に)
「高文展で出す絵で…」
「見たいなあ」
「はい」
早くこの半密室から逃げ出したかった大翔は素直に言うことを聞いた。
「わ。すげー。いっぱい小さいの端っこに描いてある。めっちゃリアルじゃん。レモンある、かわいい~」
(褒めてくれるんだ)
てっきり嫌なこと言われると思ったのに。心臓の周りに温かさが広がった。
「真ん中は何描くの?」
「決まってなくて…間に合わなかったらこのままですかね…」
「へぇ」
カシャ
レオはスマホで勝手に絵の撮影をした。
「がんばって、中光大翔くん」
「はい(中高大小って何?)」
大翔は一礼して階段を静かに降りた。レオは何食わぬ顔で教室に戻り授業を受けるのだった。
レモン「がんば👍🏼」
朝4時に送ったラインは3時間経っても既読にならなかった。
「てか、なんで毎日ラインするの?」
朝7時30分
機械科の教室にはレオと淳の2人だけ。レオは一番後ろの廊下側の自分の席に座り、淳は、彼の隣前にある窓を開けて腰掛けている。
淳は普通科だが、機械科の教室に遊びに来ている。淳はいつもはこんな早く学校に来ないが、用事があって今日はレオと一緒に家を出た。
「な~んか癖になるんだよなぁ、Taishiくん」
「何の話してるの?」
「すっごい、どーでもいいこと。昨日は架空の英単語でしりとりした」
エルビバス、スパインリス、スカインロイ、イーグルアウト…ありそうでない英単語を交互に送信する。お互い隙間時間を使って、1時間~3時間に1回ほどのやり取りだ。
淳は「一生終わんないじゃん」と笑い、レオは「あっちが無理やり、ンつけて終わらせちゃった」と言った。
淳は片腕を伸ばして、もう片手で口を押さえてあくびをした。
「あ~眠。こんな学校早く来たのはじめて」
「朝の教室で1人でボーとしたり、音楽聴いたり、動画編集すると、めちゃ捗るから好き。鳩田もやればいいのに」
「音楽って…。藤井風のやば。しか聴いてないんでしょ?」
「うん。もう2年はそれしか繰り返し聴いてない」
「何なんやろ、その性格…執念深い…?」
「違うやろ?好きなものに一途なんだよ俺」
あーもう限界、寝る、と言って、淳は椅子を並べて横になった。自分の教室で寝ろよ、とレオは言ったが、もうすでね彼は寝てしまった。
レオはスマホで今日撮影した写真を見返していた。
朝4時42分
校門の外で朝焼けを背景にした淳の後ろ姿。
2人並んで撮った横顔は、淳がカメラ目線で笑ってる。
ブレザーを脱いでくるくると頭の上で回す淳。ブレザーを投げてジャンプしてるレオ。
朝5時35分、青空が広がり空の端っこが少しオレンジ色になっている。校庭ではしゃいでる2人の写真。
まだ校門は開いてないのに、どうやって校庭に入ったのか。
グラウンドで寝転ぶ淳を、上から撮るレオの影。
朝7時10分
教室で黒板に、おはよ~☀と書く2人。
椅子に座って足を組んでるレオ。
窓から外を眺める淳の後ろ姿。
レオはスマホ画面を消し、机にうつ伏せになった。
(良い写真撮れた。高文展これでいいな。さすがに4時起きは眠い…。)
昨日、校庭で見た見た夕日があまりにも美しかったので、思いついて撮った朝焼けの朝の学校。
眠そうな淳を叩き起こしてシャワーを浴びてスキンケアをして髪を整えて。
短時間でいろんなタスクをこなした。
教室からは2人の寝息が聞こえた。
朝8時20分
「もしもし、作業服あったよ。教室まで?やだよ恥ずかし~!あれ、たーくんいる、寝坊?うん、わかった、たーくんに持っていかせる。またねー」
母はスマホを下ろし、淹れたばかりのコーヒーを持ってテーブルに向かった。
「何で起こしてくれなかったん??!」
ブレザーを羽織りながら大翔が階段をドタバタ降りてくる。
「今日、午後から仕事だから朝はパパに任せて、今まで寝てた~」
コーヒーをフーフーしながら飲み、テレビをつけて、スマホを触った。
「オカン時間あるなら車で送ってくれん?あと10分で授業始まるっっ」
「いいけど、車で20分はかかるし遅刻確定ねえ」
「高校では無遅刻にしたかったのに…もう間に合わないならゆっくり用意するかあ…」
大翔は高文展に向けて描き進めている張りキャンバスの絵を透明なゴミ袋に入れた。
「遅刻ついでに、千鶴が教室に作業服届けてって。玄関じゃ間に合わないから教室までだって。2限に使うって~」
母が顎をクイっとした先には、ソファーの上にベージュの巾着袋があった。
「えぇ?やだ!オカンが行ってよ!」
「私?もっと嫌に決まってるでしょ」
8時50分
大翔は機械科の廊下を恐る恐る歩いていた。授業している生徒が、先生が、こちらをチラッと見る視線が痛い。
彼は右手に巾着袋、左脇にはビニール袋に入った張りキャンバスをかかえ、背中にはリュックをしたまま、機械科の2年の教室を通り過ぎた。
F20号の張りキャンバスは大翔の上半身を隠せるほどの大きさで、気軽に持ち運びするサイズではない。
しかし彼は家でも学校の休み時間でも描かないと間に合わないほど高文展の締切に追われている。
本当は荷物を先に自分の教室に置きたいのだが、遅刻した上に「ちょっと機械科までいってきます」と先生に言う勇気はない。
休み時間に機械科まで行く時間もない。
職員室は先生がいなかった。
機械科の職員室はどこにあるか分からん。
(そして1年の教室が…ない…)
階段を上がってすぐの角を曲がって見つけた教室は、生徒と先生の後ろ姿が見えた。全開に開いた後ろのドアから、生徒が1人が顔をひょこっと出した。
白い板には3-A、と書かれている。
(あれ…これ、3年の教室…)
心臓は安定したリズムを忘れ、不定期に大きく膨らみ、小さく縮むんだ。背中全面にジワッと冷たい汗が少し出た。
廊下側の一番後ろに座っている、淡い茶髪の男子生徒が、椅子を後ろに傾けてこちらを見ている。
曇空色のジャケットのボタンを全部あけ、学校指定の淡い水色のシャツを一番上まで止める。ネクタイは首元までしっかり閉めている。
青晴高のネクタイとズボンは明るい水色のチェック柄。水色が蛍光色くらい明るすぎて、まるでコスプレの制服のようなチープな色だ。
大翔をはじめ、たいていの生徒は、スラックスの明るさがやたら目立って上手く着こなせない。しかし目が合った男は顔がいいからか、体型がダビデ像のように美しいからか。上手く着こなして、とても似合っていた。
彼のために作られた制服、と言ったほうが納得できるくらいだ。
黒いくるぶし丈の靴下に、青いサンダル。スラックスから見える細くて筋張った足首も白くて、水色の生地に負けないくらい輝いていた。
青サンダルにはLeoと小さく書かれている。
(八王子レオ!!)
初めてみた、制服をちゃんと着ている彼。見た目からは分からないなが、この腹黒い生き物め。
自分の手を汚さずに人を陥れる生き物と再び会うのは、一緒に小道を歩いた日以来だった。
ハトハチ界隈で自分を炎上させた張本人と、またこうして会ってしまうとは。
八王子レオは鳩田淳と協力して、まず軽く炎上ジャブ。
そしてショーコのブイブイブログと手を組んで、みぞおち深めの炎上パンチ。
大翔のメンタルを見事なまでに打ち砕いた。
しかし、今の大翔は違う。初めて絵が売れた、それも3枚も売れた、6万円もの売上を出せた。自信をつけるには大きすぎるくらいの金額だ。
そして八王子レオと距離が近くなると、体と心に激しい異変が起きる理由も分かった。
自分がハトハチを推しているからだ。
炎上させられめちゃくちゃにされたのに、2人のことを推してしまうとは不思議だが、勝手に体が心が脳が反応するのだから仕方ない。
(逃げる…逃げる…俺は逃げる…)
心の中でつぶやいて後退りした。
レオはニコッと笑い、軽やかに後ろのドアから出てきた。先生は何をやってるんだ、早くこいつを注意して教室に戻してくれ!
おじいちゃん先生は黒板にカリカリと数字を書いている。
角を曲がって階段まで追いやられてしまった。教室からもらどこからもここは見えないし、人の声も聞こえてこない。
レオは小声で大翔の耳に「何してんの?」と聞いた。
囁かれた耳がぞわぞわする。振動が鼓膜を震わせているだけなのに。大翔は眉をひそめ、顔からは冷や汗が出そうだった。
(今日もいい匂いする…)
そう思うとまたお腹から首元にかけて、キューッと絞られて、脳からホワホワした成分が滲み出る感覚になった。
「妹の忘れ物届けたいんですけど、1年の教室わかんなくて…」
「ここ機械科。普通科はないよ」
「や、千鶴は機械科です」
「え??機械科初の女って千鶴ちゃんなの???年下に興味ないからスルーしてた、まじか、びっくり」
(年下に興味ないんだ)
「1年の機械科は階段降りて右だよ」
(普通に教えてくれるんだ)
ありがとうございます、と一礼して、大翔は急いで階段に体を向けた。この空間に2人きりはまずい。
パシッ
巾着袋を持った方の手首を掴まれた。
「ちょ、まだ待ってよ」
「ま、…待ちます、待ちますから…手を…」
大翔の顔は青ざめていた。頼むから気軽に触らないでくれ、と切実に思った。
レオは手を離して「そのでっかいの何?絵?」と目配せをした。
(あぁ、これか…こんなでかいの気になるよね、普通に)
「高文展で出す絵で…」
「見たいなあ」
「はい」
早くこの半密室から逃げ出したかった大翔は素直に言うことを聞いた。
「わ。すげー。いっぱい小さいの端っこに描いてある。めっちゃリアルじゃん。レモンある、かわいい~」
(褒めてくれるんだ)
てっきり嫌なこと言われると思ったのに。心臓の周りに温かさが広がった。
「真ん中は何描くの?」
「決まってなくて…間に合わなかったらこのままですかね…」
「へぇ」
カシャ
レオはスマホで勝手に絵の撮影をした。
「がんばって、中光大翔くん」
「はい(中高大小って何?)」
大翔は一礼して階段を静かに降りた。レオは何食わぬ顔で教室に戻り授業を受けるのだった。
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