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手を取り合う

17.似ている人

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 リランとアランは二人で精鋭一人分の強さとよく言われるが、すばしっこい二人は戦いにくさから騎士団内では「赤蠅あかばえ」と呼ばれている。



 ライガが詰め所に行くと、騎士だったような者達がリランとアランにあらかた倒されていた。



「詰め所の牢に本物の騎士がいるわ。」

 ミヤビはその様子を見ても驚くことは無く、偉そうにふんぞり返っているリランとアランの方に寄った。



「流石「赤蠅」だ。」

 ライガは思わず感嘆の声を上げた。



 が、このあだ名は、二人は気に入っていない。というよりも気に入るはずがない。



「「そう呼ぶな!!」」

 二人は声を合わせてライガを睨んだ。



「その人たちを中の安全な部屋に早く。」

 ミヤビはライガか連れてきたお宝様の一族の人たちを指して、奥の部屋に向かった。



「ああ。」

 ライガはミヤビを追って一族の者たちをつれて奥の部屋に向かった。



 部屋に着くと、本当の騎士たちがいた。



「お疲れ様です。申し訳ない。こんな失態を…」

 騎士たちはライガたちに頭を下げた。



「今はとにかく状況の把握と、対策だ。騎士たちに被害は?」

 ライガは騎士たちを見た。



「死人はいません。ですが、全員動けなかったので…」



「おい。ライガ。」

 部屋にアレックスとサンズが入ってきた。

 その後ろにはマルコムもいる。



「すまん。逃がした。」

 アレックスは少し苦そうな顔をしていた。



「あいつ等素早い。」

 サンズも同じような顔をしている。



「アランとリランが倒したやつらがいるから、そいつらから聞こう。」

 マルコムは廊下の外にいるらしい、アランとリランの方を見ていた。



「すみません。彼等をお願いします。」

 ライガはお宝様一族の者たちを騎士たちに任せた。



「おい、蠅二人。どうだ?」

 サンズはアランとリランを呼んだ。



「取り逃がしたやつが偉そうに言うな。」

「ゴリゴリサンズめ。」

 アランとリランはサンズを睨んで威嚇するような顔をした。



「落ち着けって。とりあえず俺が隊長だから俺の言うこと聞けよ。」

 アレックスはあわてて三人の間に入った。





 アランとリランが倒したやつを縛って、ライガたちは囲んで話を聞く体制を作った。



「おい。皇国のやつら。何が目的だ?」

 アレックスは一番年長のような外見の者に威圧するように訊いた。



「言うかよ。…帝国の犬どもめ。」

 訊かれた皇国の者はアレックスを睨むと不敵に笑った。



「儀式ってなんだ?」

 ライガはアシが言っていた儀式が気になっていた。



「…くたばれ。」

 皇国の者たちはいっせいに笑った。



「!?やめさせ…」

 サンズは何かに気付いたように慌てて皇国の者たちに駆け寄った。



 だが、時遅く彼らは力なくその場に倒れた。



「え?」

 ミヤビは顔を青くしていた。



「…これって、噂に聞く仕込み毒?」

 アランとリランも顔を顰めていた。



「そうだ。」

 アレックスは何かを考え込むように倒れた皇国の者達を見た。



「アレックスさん。皇国は薬の技術に秀でた国です。こいつらは念のために牢に入れておきましょう。」

 マルコムは警戒するような視線を、死体のようになった皇国の者たちに向けていた。



「そうだな。」

 アレックスはマルコムに同意をした。



「…次の仕事に向かいましょう。」

 ミヤビは奥の部屋にいるお宝様たちを指した。



 ライガたちはお宝様一族の者たちの元に向かった。







 

 部屋には姿勢を正した騎士たちがいた。



「お疲れ様です!!」

 部屋に入るライガたちを花道を作るように出迎えてくれた。



「わるいけど、早馬を用意してくれるか?あと、向こうに倒れている死体らしき人達は牢屋に入れておいてくれ。」

 アレックスは騎士たちに何やら指示をし始めた。



「わかりました。」

 騎士たちは威勢よく返事をすると、足並みをそろえて部屋から出て行った。



「…さて、と。」

 アレックスは部屋で椅子にすわる三人の男達を見た。



 彼等の目は、お宝様と同じ鑑目だった。



「話を聞かせてくれますか?」

 アレックスは三人に向かい合う位置に座った。



「…団長さんは?」

 三人の中のリーダーらしきものがライガたちを見渡した。



「上から出るなと言われて代理で俺らが来ました。」

 アレックスは男たちの顎を見て話した。



「は、お前慣れていないな。」

 アレックスの話し方を見てリーダーの男は笑った。



「アレックスさん。俺が話しますよ。」

 ライガは彼らの目を見ないようにと過剰に俯いているみんなを見て挙手した。



「…わるいな。」

 アレックスは申し訳なさそうに席を立ってライガに譲った。



 ライガは男と向き合った。

「ほう…お前さんは慣れているな。」

 男は感心したようにライガを見た。



「でも、聞かれたことには答えてしまうので、こちらから一方的に質問します。」

 ライガは一瞬だけ目を伏せて言った。



「ああ。」

 男はライガの態度に安心したのか、少し姿勢を崩した。



「…なぜ、ここに?」



「我々の住んでいる場所の近くに異国の者が出始めた。それを帝都に訴えたかったことだ。」

 どうやら先ほどの皇国の者たちは、お宝様の一族の住処を探っていたようだ。



「なるほど。それで先ほどのようなことが…」



「…あとは、今回のお宝様で我々は王族に娘を差し出すのを止めたい。これは願望でなく脅しだ。」

 男は真っすぐライガを見た。



 今回のお宝様で



 ということはミラは差し出すのか



 そんなことを一瞬考えたが、とっさに男から目を逸らして頭追い出した。



「それは、俺たちに言われても…」



「我々の力を使いたければ正面から願えばいい。血縁を結ぶことで繋がりを持とうとするのはお互いよくない。悲劇もいくつか生まれている。」

 男はライガたちを見渡した。



 確かに無理やり嫁がされたお宝様の悲劇はよく聞く。



「彼の言う通り、それは俺たちがどうにかできる者じゃないです。」

 アレックスは対応に困っているライガの後ろに立って言った。



「わかっている。だが、伝えることはできるだろう。」

 男はアレックスを見た。

 アレックスは目を逸らした。もちろんこれは当然のことだ。



「…?」

 男はライガの方を見て何かに気付いたようだ。

 そしてライガに向ける表情が柔らかくなった。



「何か?」

 ライガは彼の表情は変わったことに気付いた。



「君…団長さんに似ているね。」

 男は目を細めて笑っていた。





「あ、えっと、父が前の団長でした。」

 ライガは父のことを思い出した。確かに父はお宝様一族に対して非常に親身になっていたはずだ。





「父?ああ…そうか。鼻や口元に面影がある。そうかそうか。」

 男は納得したように少し寂しそうに笑った。

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