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六本の糸~研究ドーム編~
51.狂気
しおりを挟むコウヤ達に見送られてキース、リリー、モーガン、影、イジー、マックスは部屋の外に消えた。
部屋の中にはコウヤ、ディア、シンタロウ、カワカミ博士、そして負傷したソフィであった。
「コウヤは銃を持っているのか?」
シンタロウは事務的に訊いた。
「持っているけど、ほとんど使っていない。」
コウヤは自身の持つ銃を取り出した。
「コウは撃たなくていい。ほとんど私が撃っている。」
ディアはコウヤの取り出した銃を押し戻すようにコウヤに押し付けた。
「ディアさん。余計なお世話かもしれないけど、顔色悪いぞ。もしかして体調悪いのか?」
シンタロウは顔色の悪いディアが気になっていたらしい。
「ああ、少しだけ集中力が落ちている。疲れだろう。」
ディアは余裕を装って言ったが、顔色が青白くどう見ても大丈夫そうではなかった。
「・・・・ディアさん。あなたはプログラムを開いてますね。」
カワカミ博士はディアの様子を見て言った。
「・・・ああ。開いているが・・・・これと何か?」
ディアはカワカミ博士が何を言いたいのかわからないようだ。
「あなたが開いたのはアテナプログラムですね。」
「・・・・・そうだが、やはりわかるのか?」
「いえ、ヘルメスかアレスかアテナのどれかと思いましたが・・・・あなたの顔色から察しました。」
「顔色から?」
「ええ。実は現実世界ではディア様とニシハラ大尉は想い合い互いを大事に思う関係ですが・・・・アテナプログラムとポセイドンプログラムは相性が悪いのです。おそらくニシハラ大尉のポセイドンプログラムの権限を乗っ取っている状態であると思われるので無意識にアテナプログラムの該当者のあなたを攻撃しているのでしょう。」
ディアはカワカミ博士の説明をじっと聞いていた。
「では、ハクトを取り戻すと私の体調も戻るのだな。」
「はい。ニシハラ大尉の意志が働いていれば、あなたに害を与えることはないでしょう。」
カワカミ博士は当然のように言った。
「ハクトを取り戻す方法はやはりこの施設を乗っ取るしかないのか?」
ディアは確認するように訊いた。
「・・・・いえ、正直ラッシュ博士が持っているものが明確には何かわからないので、ニシハラ大尉の意識に語り掛けるしかないですね。」
カワカミ博士はディアを指差した。
「私だけではだめだ。」
ディアは一瞬嬉しそうな顔をしたが、直ぐに沈んだ表情をした。
「親友と愛する人。その他に誰が意識を・・・?」
「執事さん。親友たち・・・・だと思う。」
コウヤは記憶を戻すとき、両親よりまず先に親友たちを思い出したことを執事に言った。
「・・・・コウヤさんの場合は、記憶を失った時に接していた人物であることからそうなったことも・・・・」
「カワカミ博士。私もコウの意見に賛成だ。」
「ディア様がそう言われるのはやはり、あなた方6人は特別な絆を感じていらっしゃるんですね。」
カワカミ博士は予想していた何かと一致したのか頷いていた。
「私にとって、コウ達は幼少期を過ごした親友だけではない。何をするにしても忘れることのできない存在なんだ。共有した時間が・・・・すごく特別なんだ。」
ディアは珍しくうまく説明できないようで手を使って説明した。
「俺もそう思う。」
三人のやり取りを聞いていたシンタロウが口を開いた。
三人はシンタロウの方を振り向いた。
「俺はゼウス軍にいた時にレイラと行動していたが、レイラもコウヤ達のことは特別だと思っていたようだ。」
「レイラも・・・・」
コウヤはまだ顔を合わせていない親友が変わらず自分たちを思っていてくれていることをうれしく思った。
「シンタロウ様・・・そうですね。他の方々も捕まえてニシハラ大尉を助けに行きましょう。」
カワカミ博士は少し心配そうな顔をしていた。
「痛い・・・・う・・・・ううー・・・」
ソフィがうめき声をあげていた。
「少しばかり止血をしましょう。動けないのは確実ですから手当てしてもいいですか?」
カワカミ博士はなぜかシンタロウに訊いた。
「ああ。俺も手当てした方がいいと思っていた。これ・・・・使ってください。」
シンタロウはカバンからシーツを破り取ったのか、布を取り出した。
「ありがとうございます。」
カワカミ博士は布を受け取るとソフィに駆け寄っていき手当てを始めた。
「シンタロウ、お前はレイラと行動していたと言っていたが・・・・彼女はどうだった?」
ディアはまだ会えていない親友が気になるようだった。
「ああ、あいつ高飛車ですよね。やたら態度でかいですよ。」
シンタロウはレイラがよく皮肉を言っていたことを話した。
「皮肉を言えるまで賢くなったのか・・・性格の方は変わっていないようだな。」
ディアは安心していたようだ。
「俺はレイラの情緒が心配だけどな。父親を殺されたんだろ?」
コウヤはヘッセ総統が殺害されたこととその犯人を心配していた。
「ああ、それなら大丈夫だ。レイラは冷静になった。『天』に入る前には復讐なんて言ってなかった。最初はギラギラしていたけど、犯人のロッド中佐が『天』出身だと聞いてから変わった。あとは、俺の存在が大きかったんじゃないか?」
シンタロウは表情を変えずに淡々と言っていた。
「シンタロウ。今はスイッチ入れないで感情的になっていいよ。なんかこわい。」
コウヤはロボットのようなシンタロウを見て怖くなっていた。
「悪い。俺は最初レイラを探るように接していたけど、あいつが操られているのと、ギラギラしている表情が自分の鏡のようだった。それは本人に言ったしそれも大きいのかもしれないな。」
シンタロウはぎこちなく笑った。
「シンタロウは相当レイラと仲良くしていたようだな。かなり腹を割って話していたようだ。」
ディアは感心していた。
「ああ。レイラと俺は仲間・・・って言っていたからな。俺もレイラは仲間だった。だからゼウス共和国側で排除対象になったんだと思う。」
シンタロウは柔らかな表情から一転して片頬を吊り上げて冷ややかに笑った。
「歩きながらでもシンタロウに何があったのか聞きたいけど・・・聞いて大丈夫?」
コウヤはシンタロウの表情の変化に心配になっていた。
「大丈夫だぞ。先生にもイジーにも話しているし、それに、俺もコウヤの話聞きたいからな。」
シンタロウは再び以前の表情で微笑んだ。
「考えてみれば・・・・第6ドーム以来だもんな。ずいぶん前のことだ。」
コウヤはシンタロウと別れた時のことを思い出した。
「・・・・・次に会うときは戦友でありたい・・・・か」
シンタロウは恥ずかしそうに言った。
「第6ドーム・・・・ということは、私が暗殺されそうになったときか?」
ディアは少し驚いていた。
「そうだぞ。お前とハクトのいちゃこらで記憶は一杯だったけど、あの時に俺とシンタロウの別れもあったんだからな。」
コウヤは冷やかすようにディアに言った。
「シンタロウ君にしても、コウにしても一回死人になっているからな。この死人コンビいや、ゾンビコンビが。コウに関しては一回どころではないか。」
ディアは軽口を叩いた。
「そうだな。コウヤが死人扱いになっているのは俺も驚いた。実は『天』でお前の母さんに」
「聞いたよ。母さんからシンタロウが生きているって聞いた」
それを聞いてシンタロウは安心した表情をした。
「ミヤコさん・・・・すごく参っていたからよかった。」
「それは俺も思った。俺は復讐に走ってしまっていたから。」
コウヤは実の両親を殺された恨みで育ててくれた母親のことをないがしろにしていたことを再び実感した。
「復讐か・・・・いろいろ思い出したんだな。」
シンタロウはコウヤの表情と口調から何かを察したようだ。
「お待たせ致しました。」
カワカミ博士はソフィに肩を貸すように立ち上がった。
「カワカミ博士。私が彼女を背負います。あなたにはこの施設の乗っ取りをしてもらわないと困るのですから。」
ディアはそう言うと、顔色は悪いままだが力強くソフィを引っ張り自身の肩を貸した。
「・・・・・」
ソフィは気まずそうな表情でディアを見ていた。
「・・・・私はあなたに対していい感情を持っていない。」
ディアは淡々とソフィに言った。
ソフィは足が痛むのか少し顔を歪めていたが、微笑んだ。
「いいんですか?ディアさん。俺が背負った方が・・・」
シンタロウはソフィを背負うディアに駆け寄った。
「お前は戦力だ。先ほどの戦いは見事だった。その手を塞ぐわけにはいかない。」
ディアはシンタロウを突っぱねるように言った。
「ディアさん。」
シンタロウは褒めながらも少し冷たいディアの態度に多少なりとも戸惑っているようだ。
「・・・・それと、私の事はディアと呼んでくれ。お前はコウの親友であり、私たちの恩人でもある。」
とディアは一変して微笑んだ。
「・・・・なんだ。あんたそんな優しい顔をコウヤ達以外にも向けられるんだな。」
シンタロウは表情を崩し笑った。
二人が打ち解けているのを見てコウヤは不思議と胸が温まった。
「会話は歩きながらにしましょう・・・・行きましょう。」
カワカミ博士は急かすように言った。
三人はその言葉に大きく頷き進みだした。
カワカミ博士、コウヤ、シンタロウ、ディアと彼女に引きずられるソフィの5人は未だに血の匂いが漂う合流部屋を出て、ラッシュ博士とタナ・リードが向かった方向に進んだ。
「なあ、コウヤ。」
「どうした?シンタロウ?」
「この先の命の優先順位はお前たち6人とカワカミ博士が上になる。」
「どうした?」
「いや、それを前提で俺は動く。」
「シンタロウ?」
「・・・・お前命を粗末にするなよ。」
シンタロウは何かを言いかけてコウヤに軽口を叩いた。
「なんだよ。優先順位って・・・・」
「わかってるくせに。」
「わかりたくないよ。」
歩きながらの淡々としたやり取りをディアとカワカミ博士は無言で聞いていた。
「カワカミ博士・・・・影もそうだが、なぜこの施設に集中する必要があったんだ?」
ディアは無言で歩くカワカミ博士に訊いた。
「ドールプログラムが開かれたら・・・・とてつもなく大変なことが起きる気がするのです。それは、おそらくラッシュ博士たちも感知していないこと・・・」
曖昧だが確信を持った口調でカワカミ博士は応えた。
「ドールプログラムって・・・・結局はなんですか?」
「それは私も思っていた。開発者の一人であるあなたなら・・・・」
コウヤの問いにディアも頷いた。
「・・・・ドールプログラムのドールとは・・・操り人形のことです。」
「この施設に蔓延する洗脳電波とかが該当するのですね。」
ディアは影が意識を飛ばしかけていたことを思い出し、すこし表情を歪ませた。
「・・・・ドール操作での神経接続は見せかけです。本領では接続なしでも操作できるはずです。」
「それは、接続なしでの宇宙活動が可能ということですよね。やはり、人の発展のための・・・」
どうやらディアはムラサメ博士を尊敬していたようで、少し嬉しそうに呟いた。
「操作されるのは人です。人間を操作するプログラムですよ。」
ディアの呟きを遮るようにカワカミ博士は言った。
「ひ・・・人を・・・・?」
ディアは予想外の答えが出たようで少し声を上ずらせていた。
「あのリード氏が余裕だったのは、プログラムを開いてしまえば人を操作できると分かっているからだ。そんなことができるのならば、『天』での軍の反乱も脅威ではない。」
だが、それだけでは済まないと思う。と消えるような声でカワカミ博士は言った。
「でもこの施設内はその影響が受けにくいと考えている。根っこだからですね。そして、潜入の道連れに選んだメンバーは・・・確実な仲間ってわけですか。」
シンタロウは合点が言ったように呟いた。
「そうです。あなたは影さんに信頼されてですが、軍内部も信用できません。」
カワカミ博士はソフィを一瞥して言った。
「万一ドールプログラムが開かれても対処できる人間を施設に置く必要があった。だから全員参加なわけか・・・」
ディアも合点がいったようで頷いた。
「はい。『天』に仲間を残すよりこっちの方がいいです。それは影さんにもお話ししました。」
「執事さん・・・いや、カワカミ博士。キャメロンが持っているものってなんだ?」
コウヤは躊躇いながら訊いた。
「お好きな方でお呼びください。・・・・そうですね。キャメロンが持っていたもの。ドールプログラムの源かもしれないのですが・・・・」
「ドールプログラムの源・・って」
ディアは身を乗り出すように訊いた。
「いえ、そんなはずはないのです。ドールプログラムの源は、今も宇宙を漂い続けているはずなのですから・・・・」
「宇宙を・・・・?」
コウヤは何かが引っかかったようだ。
「はい。ドールプログラムの源は・・・・・一体のドールです。それにはドールプログラムの根源と言えるものがあります。該当者など押しのける最大級の権限。・・・・でも、キャメロンの手にあるとは思えないのです。」
「・・・・ラッシュ博士の持っているものは、人の頭よりやや大きい箱よ。大きなドールじゃないわ。」
ソフィが消え入りそうな声で言った。
その声に4人は反応した。
「・・・・では、キャメロンは何を・・・・」
カワカミ博士は分からなくなったようで頭を抱えた。
「・・・・・ドールプログラムの源・・・・・一体のドール・・・・」
コウヤは自分が地球で目を覚ました時のことを思い出していた。
近くを飛び去る飛行物体。
ドールに守られていた感覚。
宇宙を漂い続ける一体のドール。
記憶の中の何かが動いた気がした。
それはとても優しく、悲しくなるくらい重い記憶の蓋。
呆然とするコウヤにディアは目を向けた。
「コウ。ドールプログラムが開かれると何が起こると思う?カワカミ博士の言う人間をすべて操る以外に考慮しないといけないことがあるはずだ。」
ディアはコウヤを試すように訊いた。
「父さんは優しい人だった。だけど、俺の最近の思い出が、父さんが壊れたところなんだ。俺も悲しかったのは覚えている。」
ディアはコウヤの話を何も言わずに聞いていた。
「カワカミ博士の言うことを聞いてもあるんでけど・・・・あの父さんを見ると・・・・とてつもないことが起こるんじゃないかって・・・・思うんだ。」
「そうか・・・・記憶は戻っているんだな。」
ディアは少し悲しそうに頷いた。
「・・・・俺の母さんって・・・・ゼウス共和国に殺されたわけじゃないよな・・・・」
コウヤの問いにディアとカワカミ博士は目を丸くした。
『何のよう?』
『やけに辛らつだな。』
『君のことはいけ好かない奴だと認識しているから。』
『お前に言われたくない。』
『そうかな?優等生でドームの有力者と仲良しの可愛げのない奴の君以上にいけ好かないかな?』
『だってお前目立たないように全部手を抜いているだろ?』
『は?』
口が疲れる。
ああいえばこう言う。
言ったことがすべて跳ね返される。
お互い負けず嫌いなのか、いちいち考える嫌味を受け止められない。
疲れる。
「ハクト君は大人しいね。もっとたくさんお話できればいいんじゃないか?」
成績が優秀であれば何も言わないと思っていた教師が急に言った。
「お話って・・・」
「いや、コミュニケーションは最低限取っていると思うけど・・・もっと君とお話ししたいと言っている子もいるから。」
教師はちらりと教室の隅にいる女子生徒を見た。
ああ、なるほど。そういうことか、と思ったが取り合うのも面倒くさくなった。
「俺だって話しますよ。だってこの前別のクラスの」
「別のクラスの誰?」
教師の口調が冷たくなった。
「あの・・・・栗色の」
そう、栗色のくせ毛の
言いかけた時に教師の冷たい視線に気づいた。
大人しい奴。口を開くとものすごくしゃべる。
大人しくないうえにやたら喧嘩腰なやつ。
すごく耳障りで返す言葉もいなされる。
口が疲れる。
『図書室の本だって大体読んでいるだろ。』
『本を読んでいれば優秀だと思っているの?君って予想以上に頭悪そうなこと言うね。』
『可愛げないのはどっちだよ。』
『そうかな?僕ってかわいいと思うけどね。よく言われるから。』
『可愛くない。』
『はは。僕だって野郎に可愛いって言われていい気分はしないよ。』
『可愛くねー』
厳重な扉で廊下と断絶されたその部屋では、二人の男女がおり、更に奥には強化ガラスがあり、その先に拘束された軍服の少年と青年の間くらいの男がいた。
「ソフィが・・・・ソフィが・・・」
リード氏は娘を愛していたようで、残してきたソフィのことを気にかけてずっと呟いていた。
「あなたに殺された人々に子供もしくは親がいないとでも?今更そんな同情を誘うことを言うの?」
ラッシュ博士は辛らつに言うと冷たく微笑んだ。
「・・・・ドールプログラムを開けるのはいつだ?それさえ開いてしまえば・・・」
「ハクト君の意識を乗っ取れれば完璧よ・・・あと一時間もな・・・」
ラッシュ博士は何かに気付いたようだ。
「どうした?」
「・・・別の入り口から侵入してきている奴がいる・・・・」
ラッシュ博士は施設の図面を示すモニターを目にして、信じられないものを見るような表情をした。
「誰のパスを使ったの・・・・いや、あの出入口はパスワードじゃない。」
ラッシュ博士は急いで機械を触り、出入りした人物の履歴を調べていた。
「まさか、ソフィが使われたのでは・・・」
リード氏は顔を蒼白にしていた。
「・・・・時間が合わないわ。だいぶ前に血液を採られていたのなら別だけど・・・・」
ラッシュ博士は手を止めた。
「どうした?」
「どうして・・・レイラちゃんの血はだめなのよね・・・・でも、誰?」
「どうした?・・・・まさか、ロバートの子か?」
「・・・・・聞いてないわよ。あの狸じじい。」
ラッシュ博士は急いでモニターを監視カメラに切り替えた。
「・・・・だめね。監視カメラはだいたい撃ちぬかれているわ・・・・」
ラッシュ博士は諦めたように言った。だが、想定していないことだったのか得体の知れないものを前にしたように不気味そうな表情をしていた。
「警備の兵は?モルモット達がいただろ!?」
リード氏は思い出したように言った。
「だいたい殺されているか行動不能にされているわ。全く恐ろしい子だと思っていたけど、あんな子になるとは思わなかったわよ。レイラちゃんの部下の・・・ロウ君じゃなくて、シンタロウ君だっけ?」
「私もだ。噂には聞いていたが・・・ここまでとは・・・」
リード氏は表情を歪めていた。
「あら?一人健全状態がいるけど・・・・」
ラッシュ博士はモニター上ではぐれて光る点を見つけて言った。
「・・・・・なんだ?全く指示通りの行動をしていないうえに・・・・こっちに向かってきている・・・・」
リード氏も光を見つけたようだ。だが、指示通りに動いていないモルモットに対して少し不満を滲ませている。
「・・・・・どうやら自分の意志で背いているようね。ここまでの意志なら動かせないわ。そこの扉を閉め切っていれば時間は稼げるのよ。」
ラッシュ博士は部屋に置いてある道具を探っていた。
「だが・・・・」
リード氏はソフィが気になるようで扉の向こう側を見るように眺めていた。
「頭のねじの外れた娘さんが気になるの?」
ラッシュ博士はリード氏に近付いた。
「お前に言われたくない!!」
「世界・・・・宇宙が手に入るのに?」
「頭のねじが外れているのはどっち・・・・・!?」
リード氏は首を抑えてよろめいた。
「・・・・頭のねじが外れた人って思っているなら・・・接近も許しちゃいけないわよ。」
ラッシュ博士は針の先から液体を滴らせた注射器を握っていた。
「・・・・なにを・・・・」
リード氏は黒目をよろよろとふらつかせながら瞬きをした。
「だから・・・・媒体が必要なのよ。」
「媒体・・・・?」
「あの人が生き返る・・・・いえ、現世に戻ってくるためにね。」
ラッシュ博士は微笑んで倒れるリード氏を見つめていた。その表情は少女の、まるで恋する乙女のような可憐さを滲ませていた。
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