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ライラック王国~プラミタの魔術師と長耳族編~
王子様とお姫様
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用心棒の二人と親友の娘へ
この手紙を読んでいるということは、私はこの世にいないのでしょう。
今から記す内容を伝えることができてから死ねたのかわからないので、情報が重複してもご容赦ください。
まず、お城に戻らないでください。
もう今までの生活は送れません。
なるべく早くこの諸島群を出るのです。
そして事情通の海の巨獣“カプラ”と接触してください。
彼は世界の情報に精通しています。
カプラは海のどこかを漂っているので正確な位置はわかりませんが、一番目撃情報がある巨獣です。
きっとあなたたちなら接触できます。
姫様、
あなたのお姉様はとある目的のためにお嫁に行きました。
彼女は強かで賢いです。しかし、目的にために手段は選びません。
彼女の助けてとなってください。
諸島群を出るのはそれからでも遅くないです。
詳細を記せないことをお許しください。
最後に
私には一人の血の繋がりのないクリスティーヌという娘がいます。
彼女はロートス王国で私の親友のもう一人の娘の傍にいます。つまり、姫様のお姉様の傍です。
何かあったら頼ってください。
無責任で自己満足な男より
*****************
手紙の内容は短かったが、ミナミは愕然とした。
アロウに娘がいたことや、自分が諸島群を離れないといけないこと、元の生活に戻れないことに対してではない。
戻れないことミナミだって漠然とわかっていた。
愕然としたのは、姉であるアズミのことだ。
アズミは他国に嫁いで幸せに暮らしていると思っていたからだ。
しかし、彼女は目的があって嫁いだ。
ミナミはそれがいいことではないように思えたのだ。
何故なら、手段を選ばないとあったからだ。
いいことならアロウは手紙にそんなことを書かないはずだ。
「お姉さま…何のために?」
ミナミはわからなかった。
彼女はホクトの事を潔癖で不安定と言っていた。
ホクトが父を殺したことに驚いていなかった。
つまり、彼女はホクトが父を殺すかもしれないと分かっていたのだ。
そんな彼女が兄たちを置いてまで嫁いだのがわからないのだ。
何がアズミをそこまで駆り立てたのかだ。
もちろん彼女はオリオンの短所も知っている。
アズミがいれば、ホクトは父を殺さなかったのでは…
ミナミはふとそんなことが過った。
だが、すぐにその考えを振り払った。
殺した方が悪いのだ。
更に言うなら、唆した大臣が悪いのだ。
ミナミはアズミに責任を押し付けるような考えに至った自分に嫌悪した。
近くにいて、悲劇を止められなかった自分がそんな考えを持ってはいけない。
父の死でミナミは嫌というほどわかっているのだ。
自分の無知さと無力さを。
「姫様って、オリオン王子に似ているね」
ポツリとマルコムが呟いた。
「え?」
「髪とか目の色じゃない。
オリオン王子は君と同じ表情をしていた。」
マルコムは目を細めて言った。
まるで眩しいものを見るようだ。
ミナミは何故マルコムがそんな表情をするのかわからなかった。
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