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ライラック王国~プラミタの魔術師と長耳族編~

黒幕を覗く青年

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 楽しいお茶会が終わってミナミたちは水辺の居住地に戻ってきた。



 ここ数日で屋根に板を置いてマルコムの土壁で固定したりと色々進化している。

 ただ、片付けが楽なようにという方針なのでそこまでがっちりとは作っていない。



「君は当たり障りなく動くね…」

 マルコムはミナミを見てため息をついていた。

 いつもの呆れた様子ではなく、感心した様子だった。



 褒められていると思ったのでミナミは笑顔で頷いた。



「で、シューラはどうだった?」



「ミナミが見事に全部の話題を避けたから情報はいまいちだよ。

 ただ、人となりや関係性は見えたよ。」

 シューラは困ったように言いながらも、ミナミのお茶会の行動に関しては悪い意見は持っていないようだ。



 むしろ感心している。





「私もわかったよ。

 えっとね、後ろにいたおじさんとお兄さんは付き人でも護衛でもなくて文官さんだと思うの。

 あと、シルビもエラさんもビエナ君もプラミタではお偉いさんなんだね」

 ミナミは手を挙げて報告するように言った。



「いいよ。続けて。」

 マルコムはミナミに続きを促すように言った。



 ミナミはお茶会の感想を述べていいと許可をもらったので思う存分話すことにした。



「エラさんはお嬢様。お茶の飲み方や好みの話からしてすごいわかりやすいから二人もわかったと思う。

 そして目上の人とのお茶会をこなしたことがありそうで、私が話題に触れないと察してくれたから政治関係とか強い家柄だと思うよ

 それに、会話を人に見られ慣れていたから苦労するお茶会とか経験してそうだったよ。」

 ミナミは思ったことをそのまま伝えた。



 マルコムとシューラは興味深そうにミナミを見た。



 ミナミだってお姫様だ。

 お茶会は経験がある。



 ただ、よいしょよいしょのものが多いし悪意のないものを父が厳選してくれていた。

 とはいえ、多少の目は養っている。



「ビエナ君は世間慣れしていないね。大人の女性もエラさんとしか話していないのかな?可愛かった

 あと…ビエナ君の目の色…どこかで見たことがある…」

 ミナミはお茶会を思い出し頷いた。



 ミナミはビエナの瞳の色が見覚えがあるのだ。



 特殊な虹彩の紫色の瞳。



 昔お城で見た宝石とそっくりだった。



 ただ、綺麗な瞳だったのでそんな宝石があってもおかしくない。

 しかし、何かひっかかる。



「あの瞳にそっくりな宝石を見たことがある…」



「は?」

 マルコムは想定外の事だったようで間抜けな声を上げた。



 ミナミは珍しく間抜けな声を上げているなと思ってマルコムを見たが、驚いたというよりは

 何かを危惧しているようなものがあった。



 脅えではないが、何か良くないことでも考えたのだろうか?



 しかし、ミナミの今の話はビエナのことであるし、そもそもマルコムはビエナの情報を今日得たもの以外知らないはずだ。



「…宝石と瞳…か」

 マルコムは小さく呟いていた。



 そういえば、最近宝石の話をどこかで聞いた気がしたが、あまり思い出せないのでミナミは深く考えなかった。







 晩御飯はガイオさんと一緒に摂ることになった。

 というのも、明日出発するのでその前に赤い実の木についての話などをするようだ。



 イトはミナミたちにお茶をくれたりしたが、今はどこにいるのかわからない。



「抜け目のない男だし、心配しなくていいよ」

 シューラはイトがいないか探すミナミを見て言った。



「心配はしていないよ。いないのが珍しいな…って思って」

 ミナミは全然イトの心配はしていない。



 ただ、ガイオがいるならイトもいておかしくないと思ったのだ。



 今日はお皿が人数分あるので、みんな一緒に食事ができる。



 今日は焼き魚がメインのようだ。

 どうやらお魚は丸ごと焼く料理があるらしい。

 知らなかった。



 お鍋に入れるだけではなかったようだ。



 興味津々で見るミナミにガイオは苦笑いをしている。



「お嬢様はまさか魚に馴染みが無いのですか?」

 ガイオはミナミの地位を知っているので、丁寧な言葉遣いになっている。



「お魚は知っているの。この前マルコム達に調理の様子を見せてもらったから大丈夫!それにここ数日はお魚のお鍋だったから!」

 ミナミは胸を張った。



 ミナミはもう生きているお魚に驚く世間知らずではない。

 ただ、丸焼きにするということを知らなかっただけだ。



「どうせ、丸焼きが物珍しかったんでしょ。

 この前まで魚の切り身しか知らなかったしね」

 マルコムはミナミが何に興味津々だったのかわかっているようだ。



 口に出していないのにすごい。





 ちょっと焦げ臭さと鉄の臭いがあるが、お魚は美味しかった。

 小さい骨が多くて唸っているとシューラが取り方を教えてくれた。



 今後役に立ちそうだ。



 デザートにはおなじみの赤い実を一人一つずつ食べて、ミナミはお腹いっぱいだ。

 今日は食後に薬草茶があるようだ。



 シューラが野宿に近いミナミのために、体を温める効能のある薬草で作ってくれた。

 そして、彼が出してくれるなら味は大丈夫だろう。



 食後、少し落ち着いたところでマルコムはガイオを見た。

 どうやらこれからいろいろな話を始めるという意を持った視線だろう。



 マルコムの視線を受けてガイオは頷いた。



 こういう風に察せて頷く様子はかっこいい。

 ミナミも何かの視線を受けてかっこよく頷いてみたいものだ。



「もう察しているだろうけど、アロウさんは亡くなった。」



 マルコムはそう言うと、どういう経緯でこの村に来たのか話、アロウが命を報酬にミナミをマルコム達に託した話もした。

 どうやらミナミたちの正体は教えていたが、詳しい経緯は話していなかったようだ。



 ガイオは納得した様子で話を聞いている。



「アロウは俺の恩人だ。その彼が命を懸けたお前らを売るようなことはしない。」



「別に自分の命を優先しても大丈夫だよ。



 ただ、それは帝国に対してだけだよ



 俺たちの情報はプラミタには渡さないで欲しい」

 マルコムはどうやら帝国に対しては口止めをするつもりはないらしい。

 ただ、プラミタに対しては口止めをするようだ。



「そして、帝国に伝えてほしい。

 プラミタに注意をしろ…と。もしかしたら共通の敵かもしれないからね。」

 マルコムは何か見えていることがあるみたいだ。



 ミナミにはさっぱりわからない。



「あと、この村に滞在しているプラミタの大人の男性二人には注意して。」

 マルコムはミナミたちに対して紹介が無かった二人の男性のことを言っているのだろう。



「不自然だと思う。どうしてイトがここを指定されたのか、プラミタが指定したのか

 どうしてプラミタの魔術師たちが襲われたのか…怪我が重いのは女子供で3人とも魔術師だ。

 男二人も怪我をしているけど、戦闘慣れしていないとはいえ基礎体力が3人よりも多い。」

 マルコムの言葉にガイオは何かを察したようだ。

 そしてシューラはそれがわかりきっているようだ。



「どうして盗賊はプラミタから来た魔術師だと気づいた?彼らが名乗っていないのに…俺たちだってイトからの話で気付いた。ガイオさんもだよね?」

 マルコムの言葉にガイオは徐々に顔色が悪くなっていく。



「あの二人が君の甥を唆した輩の一味だよ。」

 マルコムは確信を持っているようだ。



 その言葉で、ミナミはやっとマルコムが言いたいことがわかった。

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