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ライラック王国~ダウスト村編~
洞窟のお姫様
しおりを挟む目指す村は、川の近くと言えど目につくところではなく、切り立った崖の一部の岩が動き、その先に洞窟があった。
どうやらその先にあるようだ。
隠れ里のような村、まさにその通りだ。
厳つい容貌の男に先導され、ミナミたちは洞窟を歩いていた。
洞窟の中は勿論暗いが、明かりを灯されており、人が使っているのがよくわかる。それだけでなく、洞窟自体人の手にかかったもののようだ。
「すまないな。近頃物騒だから警戒しているんだ。連絡を受けていたとはいえ、あのような対応をさせてもらった。」
先頭の厳つい男はミナミとシューラに笑いかけた。
不思議とマルコムには笑いかけない。
「滞在していた俺もいたのに、ひどいな…」
イトは先頭の厳つい男を睨みながら言った。
「お前、三日前に行方不明になってそのままだったからてっきり死んだと思っていた。」
「死んでない!!荷物だって村に置きっぱなしだし」
厳つい男の言葉にイトは過剰に反応した。
「お前、三日前って…何やっていたんだ?」
マルコムはイトを横目で怪しむように見た。
「いや、この辺を散歩していたら道に迷って…」
イトは恥じらうように頬を染めて、ヘコヘコと笑った。
それを聞いてマルコムは目を見開き悪態をついた。
「モニエル、最後だけだったとしても、こいつに道案内任せたのは間違いだったかもしれない。」
シューラは前を歩くイトを少し憐れむような目で見た。
「冷たいなイシュちゃん。無事着いたからいいじゃない!!ねえ。ミナミちゃん。」
イトは大げさに笑うとミナミの方を急に見た。
「え!!…」
ミナミは急に話を振られて驚いた。そして、何を言っていいのか分からないので、少し考え込んだ。
「結果論だよ。それは。知っていたら君を使わない。」
マルコムはイトの頭を軽く殴った。
「いて!!」
イトは大げさに騒いだ。
「あまり騒がしくするなよ。洞窟内といえどもこの隠れ村を狙っている輩はどこにいるか分からないんだからな。」
厳つい男はあまりにイトがうるさいのか、イトを見て言った。
「ごめんなさいな。」
イトは両手を合わせて頭を下げた。
「…お前は村でもうるさかったからな…まあ、仕方ないが…」
その様子を見て厳つい男は呆れたようにため息をついてからゆっくりとマルコムやシューラ、ミナミたちの方を順に見た。
「その様子だと、俺の話は聞いていないようだな。」
「ええ。俺達はここに来るようにと…アロウさんに」
マルコムはシューラに同意を求めるように見ながら言った。シューラはマルコムを見て頷いた。
その様子を見て、ミナミは少し疎外感を覚えて寂しくなった。
「そうか。俺は“ダウスト村”で村長という立場を取っている“ガイオ”という。アロウの予要望通りの準備までは少し時間がかかる。」
「いや、助かります。準備をしてもらうだけでも…」
マルコムは素直に頭を下げた。
「ありがとうございます。」
ミナミもそれに倣って頭を下げた。
シューラはマルコムとミナミを見て少し考え込んだ。
ミナミはシューラの頭を掴み、一緒に頭を下げさせた。
「ははは。お嬢さんよりもそっちの白いのが子供みたいだな。」
ガイオはミナミとシューラの様子を見て笑った。
中々豪快に笑うが、印象よりも優しい表情をしているとミナミは思った。
「俺の声よりもガイオさんの笑い声の方が響いている気がする。」
イトがガイオを見て、口を尖らせていた。
「お…もうすぐ着くから、お前らには積もる話もある。」
ガイオはイトを無視して、洞窟の先を指した。
彼の言った通り、洞窟の先に明るい空間が見える。それは、洞窟内にある灯火とは違う解放感のあるものだ。
「この洞窟を出た先が、ダウスト村だ。」
ガイオは人懐こい笑みを浮かべて言った。
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